過大評価された3大ロシア映画:大ヒットしたスポーツ物から戦争ドラマまで

Andrey Zvyagintsev/Non-Stop Production, 2014
これらの映画は、ほぼ良い評価を受け、ロシア映画界で賞賛されたが、根本的には失敗作だった。その理由を見てみよう。

1.『上へ行け』(2017年)

 『上へ行け』は、ロシアで史上最高の収益をあげた映画だ…。2017年12月に封切られて以降30億ルーブル以上(一般的なレートで約5400万ドル)の収益を上げ、ジェームス・キャメロン監督の『アバター』が持っていた記録を塗り替えた。1200万人以上のロシア人がこの映画を見た。

 このスポーツドラマは、1972年のオリンピックの際に、試合のラスト3秒でアメリカに勝利したソ連の素晴らしいバスケットチームについての物語で、興行収入だけでなく、政治レベルでも最高の賞賛を受けた。ウラジーミル・プーチン大統領が、この映画で主役を演じた俳優に公式の場で感謝を示した

 同時に、実話をもとにしたことを堂々と述べているこの映画は、事実と一致していないことを厳しく批判された。試合に参加した数人のバスケットボール選手の未亡人たちが、私生活に介入したことやいくつかの出来事を捏造したとして脚本家を訴えた。ヘッドコーチ(映画ではプーチン大統領が賞賛した俳優が演じている)の未亡人は、登場人物の名前を架空のものにすることを求め、制作者側によるエピソードの確認を拒否した。

 批判された点のひとつは、このチームのキャプテンの描かれ方だった。映画の中で彼は反ソ的な思想をもつ凶暴なリトアニア人ナショナリストになっている。後になって判明したのだが、それはまったくの偽りだった。確かに、1970年代初頭のソ連チームの指導者に、筋金入りの反ソ的ナショナリストがいるなんて想像しがたい。反ソ的なメッセージも多いにもかかわらず、この映画は、ソ連がスポーツで勝利したときのノスタルジーを利用しているとして、激しく非難された。流行し出したのは、『伝説の№17』、あるいは『パイオニアたちの時代』(または『スペースウォーカーズ』というタイトルで知られている)からだ。

2.『リヴァイアサン』(邦題『裁かれるは善人のみ』)(2014年)

 『リヴァイアサン』は、いくつもの賞を受賞しているアンドレイ・ズヴャギンツェフが監督したもので、無慈悲な国家に対する一人の男の無力な闘いと、現代ロシアの麻痺した生活について描いている。ロシア国内で多くの賞を受賞し、オスカーにもノミネートされた。望まれた金の像は手にできなかった。

 この映画は、信頼できる登場人物が少なすぎるとして激しく非難された。ほとんどすべての役が、「雑なテレビのシリーズ物のようなセリフを悲しそうに話す俳優たち」によって演じられ…「『リヴァイアサン』にはコンセプトはあるが、心がない…監督は俳優に息をさせていない」うえに、「この映画は単純だ」と、ある映画評論家は言っている

 映画の登場人物たちの単純さと、「ロシアには良いものが何もない」という核となるメッセージが、多くのレビューの主要な指摘だ。「アンドレイ・ズヴャギンツェフがやっているように、観客をしつこくなじることもできる。そして、彼が明白なことを口にする単純さのせいで、かなり早いうちに飽きてしまうだろう」。

3.『第9中隊』(邦題『アフガン』)(2005年)

 1980年代のソ連のアフガニスタン紛争を舞台とする『第9中隊』は、ソ連軍のある戦闘部隊が、高地を守備するという無意味な指令を命じられ、司令官たちが彼らを見棄てると、ムジャヒディンの戦士たちの攻撃によってほぼ完全に全滅されたという出来事に基づいている。この映画は、ほぼ肯定的に受け取られ、興行的にも成功だった。2006年にはロシアの2大映画賞を受賞した。

 この映画の弱点を強調しているわずかな批評家は、オリジナリティーの欠如と、ハリウッドの『シン・レッド・ライン』と『フルメタル・ジャケット』への敬意を表するという目論見が明白すぎることを指摘している。監督のフョードル・ボンダルチュク(オスカーを受賞したソ連の映画監督セルゲイ・ボンダルチュクの息子)は、ミュージックビデオの監督としての経験を反映した映画制作のスタイルも非難された。

 多くの観客やメディアは、この映画の最大の問題と思われる点を指摘した――ベースになっていると言っている事実との関連が明らかに不足している。映画の封切り後、1988年にアフガニスタンで実際に起きたことについて情報収集を始めた人たちがいた。『第9中隊の真実』というドキュメンタリーと、同名のコンピュータゲームがリリースされた。

 実際の話は、いくらか違っていたどころか、映画に描かれているものとはまったく逆だったことが分かった。他の場所で強調されているように、この映画ではたった一人の兵士しか生き残っていないが、実際には亡くなったのは6名だけだった。映画では中隊は指揮官に置き去りにされたが、実際には連隊長は数マイル離れたところから状況を観察し援軍を送り込んでいる。さらに、この高地は戦略的に重要だったため、戦闘は無意味ではなかった。多くの点が、「難しい現実」に根ざしたと思われる映画にしては、あまりにも大きく食い違いすぎた。

 

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