カザン:ワールドカップの日帰り旅行3選

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 タタルスタンは美しい自然があるとともに流血の戦いが行われた地でもあり、東西共存のためのかつての紛争の傷痕を遺している。カザンでサッカーの試合が開催されるこの機会に、ユニークな千年の歴史を見てみよう。

 この夏、カザンは2018年W杯6試合の開催地となる予定だ。6月16日のフランス対オーストラリア戦、6月20日のイラン対スペイン戦、6月24日のポーランド対コロンビア戦、6月27日の韓国対ドイツ戦、そして、6月30日の決勝トーナメント1回戦と7月6日の準々決勝だ。

 一方で、この街は、ロシアでいちばんおもしろい場所であるとともに、タタルスタンの言語と文化の中心地でもある。次の試合を待つ間の1,2日、時間を潰したいというのなら、カザンの町の外にも見るべきものはかなりたくさんある。

1. ブルガール(カザンから130km

 ヴォルガ川沿いにカザンの南に位置するブルガールは、水辺に建つ見事な白壁のモスクの町で、タージ・マハールと互角に勝負できる。

 「北のメッカ」と呼ばれるブルガールの壁の歴史は13世紀に遡る。ここは、チンギス・ハンによる支配前と支配中の栄えていたヴォルガ・ブルガールとして知られる富裕なイスラムの大都市だった。この都市は、東の帝国、カザン・ハン国の前身だった。この帝国は、1552年にイワン雷帝がカザンを征服するまでは、皇帝にとって最大の敵であり、つまずきの石となっていた。イワン雷帝は、ウラルとシベリア支配の道を切り拓いたのである。

 息を呑むような中世の壮麗さをもつこの寺院はまた、翡翠、銀、金で覆われた世界最大のコーランを所有している。ブルガールは、ロシアが今日の巨大な多民族国家になっていく様子を垣間見ることができる文化変容の具現であり、また、タタールの文化といにしえの時を実感するのに最適の場所だ。

 ブルガールに行くには、フェリーでのアクセスがいちばん便利。フェリーだと、カザンから1時間弱で、限りなく広がる森や紺碧の空を眺めながらの旅ができる。フェリーは、毎朝8時に、カザンの河港駅から出発しており、一人600ルーブル(約1070円)。あるいは、車で2時間半ほどで行くこともできる。
 

2. スヴィヤシュスク島(カザンから60km

 ユネスコの世界遺産に登録されたこの村は、実は、島というより、ソ連時代に冠水して細い道一本で大陸と繋がることになった半島だ。切り立った断崖のおかげで水没を免れたスヴィヤシュスク島は、ロシアでもっとも好奇心をかきたてられる、絵のように美しい観光スポットのひとつで、ヴォルガの昔のままの穏やかな景色を何キロにもわたって見渡せる展望台にもなっている。

 現在、人口258人の緑あふれる平和な村スヴィヤシュスクは、興味深い歴史と建築物が豊かだ。木造の三位一体教会は、1551年にこの半島がイワン雷帝の要塞となったときから(わずか4週間で建設された)今日まで残っている唯一のものだ。またその他にも7つの教会と修道院が島のあちこちに点在している。町の住人の多くは、巨大な共同住宅に住んでおり、この建物は遠くからでも目につく。

 歩いてまわることができる神秘的で牧歌的な平和に満ちたスヴィヤシュスク島は、なんといっても、人里離れた場所での静かな一日を提供してくれる。この村から『サルタン王ものがたり』に登場する神秘的な妖精の島ブヤンのインスピレーションを得たプーシキンの言葉を信じよう。

 スヴィヤシュスク島へのアクセスは簡単。いちばん眺めが良いのはヴォルガ川を行くルートで、ボートはカザンの河港駅から出ている。料金は200ルーブル(約360円)、所要時間は2時間ほど。でも、「エレクトリーチカ(郊外列車)」に乗って1時間弱でも行ける。さらに、バスも出ており、料金は170ルーブル(約300円)から。

3. ライファ修道院(カザンから30km

 ヴォルガ・カマ自然保護区の真ん中にある、タタルスタン最大の修道院は、正教建築とエコツーリズムを合わせた静謐のオアシスだ。

 カザンのちょうど西に位置し、壮大な金色の頂きを持つ大聖堂や教会(どれも石造か木造)へとつながっているこの敷地内の細い道を歩くことは、宗教的な体験だ。大聖堂はどれも、過度に金を使った壮観な内装で、サンクトペテルブルクの冬宮にも見劣りしない。

 この修道院の姿は、きらめくライファ湖の水面に映っている。ライファ湖は、周囲の木々や空を、その水面に澄みきった鏡のように映し出すことで名高い。まだ磨かれていないクリーンで穏やかなこの湖畔の宝石は、タタールの夏の湿気を逃れるには最適の避暑だ。

 ライファとカザンをつなぐ列車はないので、唯一の方法はバスか自動車だ。所要時間は約1時間。いちばん便利なバスは552番と554番。どちらもカザン北駅(セーヴェルヌィ・ヴォクザール、地下鉄で行ける)からライファまで毎日6便が出ている。料金は70ルーブル(約130円)。

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