生演奏、そして走る“ウサギたち”:エレクトリチカでしか見られない5つの光景

Kommersant
 ロシアの近郊列車はロシアの人々と触れ合うのに絶好の場だ。特に外国人にとっては!

 何百万ものロシア人が毎日とても長い距離を通勤している。最も安くて最も頼れる交通手段の一つが、小さな町や村と、より大きな街や大都市とをつなぐ近郊列車、エレクトリチカだ。そしてロシアの真のエレクトリチカ専門家が、皆さんの次の旅のためにアドバイスをくれる!

 ロシアの典型的な近郊列車であるエレクトリチカの利用者数だけでも、毎日およそ200万人もの人々が仕事でロシアの首都までやって来る。地方の駅における主なラッシュアワーは午前8時から9時の間で、この時間帯にはモスクワ州や近隣の地域のあらゆる方向から、家で待つ家族を養うために働き手たちが巨大都市になだれ込む。エレクトリチカは、市電や地下鉄と同じような電車だが、諸地方と収入をもたらす大きな諸都市とを結ぶのが特徴だ。長距離列車とは異なり、切符を買うのに書類は何もいらない。だから、かつてはこれが役人たちから身を隠しながら国内を移動する唯一の手段でもあった。

 

乗り降り

 エレクトリチカに乗る正式な方法は、駅にある“プリゴロドヌィエ・ポエズダ”(пригородные поезда;近郊列車)の発着場所を見つけることだ。そこへ行けば、券売機の端末で切符を買える。示された道に従ってホームに向かうと、長い改札機の列が現れる。切符が有効なら、改札を通って目的のエレクトリチカに乗ることができる。

 でも時々、電車に乗る直前や、電車に乗り込む時まで切符を点検されることがある。

 どうして? それは、多くの人が毎日の通勤にお金を払いたがらないからだ。切符の値段は距離に応じて変わり、70〜500ルーブル(1〜8ドル)だが、毎日モスクワへ来る200万人のうち、およそ30万人がお金を払っていない。 

 改札を避けるため、人々は壁の隙間を通ったり、駅の周囲に張られたフェンスを越えたりしてホームに入ってくる。比較的小さな駅で、車窓からよく目にする光景だ。

 皆さんは切符を買ったから、堂々と電車に乗ることができる。目的地まで切符を保管しておくよう、気をつけてください。切符がないと駅を出られない。もう一度改札を通らないといけないからだ。

 

席を見つけて椅子取りゲーム

「オディンツォヴォ」駅

 窓を自分で開けることのできる古いタイプのエレクトリチカでは、空いた窓から小さな荷物が座席へ投げ込まれるのを時々目にする。不思議がる必要はない。これは単なる席取りなのだ。そこには座らないようにして、他の空いた席を探そう。典型的なエレクトリチカには左右3列ずつシートがあり、対面式になっている。それぞれの対面シートに6人座れるということだ。それより多いこともあれば、少ないこともある。

 

商人とミュージシャン 

 「乗客の皆様」は運転士からの案内の冒頭部分とは限らない。紙、鉛筆、ライター、かばん、靴下、布巾、その他諸々を扱う、信じられないほど多様な販売者がこう言って回る。本当に必要なものの場合もあるが、そうでなくても買わされることがある。こういった商人は、大きなかばんとマイクを持っているので分かる。車内へ入って来ると、彼らは品物を見せ、そのクロスワード・マガジンやあらゆる問題に対処できる万能ナイフがないと、この先生きていくことはできない、ということを説得し始める。

 商人がいない場合でも、きっとエレクトリチカ・ミュージシャンには出会うことだろう。学生や年金生活者、無職の人が、伝統的あるいは宗教的なロシアの曲を歌ったり、ギターを手に古典的なロックをカバーしたりして、生活に必要な幾ばくのお金を得ようとする。もし気に入ったら、数ルーブルくらいあげてもいいかもしれないね。

 

 

 実のところ、電車内で物品販売をしたり歌ったりすることは許されていないのだが、しばしば規則は無視される。覚えておいてください。交通機関は、安価であればあるほど、自由度が高くなるのだ。

 

走るウサギたち

 遠く離れたどこかで、1号車の多くの人々が立ち上がって移動を始める。すると4人の車掌と2人の保安官が切符を点検するため入って来る。それにしても、たった今出て行った人々は何だったのだろう?  次の駅で窓の外を見てください。いろいろな人の混ざった集団が列車の反対側めがけてホームを走って行くのが見えるはずだ。

 なぜって?  これらの人々は“ザイツィ”(“ウサギたち”)と呼ばれる。切符を持たない人たちだ。エレクトリチカの全乗客のおよそ15%が“ウサギたち”だ。彼らは車掌から隠れる。何よりおかしいのは、彼らがしばしば全く貧しそうには見えないということだ。ハイヒールを履いた女性、パソコンやiPhoneを持ったビジネスマン、おしゃれな格好をした学生たち。何か理由があって彼らはお金を出したくないのだ。交通機関は無料であるべきと考える人もいる。購読料すら払いたくないという人もいるのだ。

 

オストロージノ、外国人の皆さん!自分らしく!

 ロシア人はふつう家から職場への行き帰りのためだけにエレクトリチカを使うのだが、モスクワを拠点にしているジャーナリストで旅行家のアレクサンドル・ルフキンさんは、極東のウラジオストクからモスクワへ戻るロシア横断の全行程をエレクトリチカで制覇してしまった

 「ロシアでは、私たちは外国人に対して特別な関係を持っている。これは歴史の長いことだ」とルフキンさんは言う。「ロシア人は同国人よりも外国人に対してとんでもない礼儀と敬意を見せる。同時に私たちは外国人を、私たちの本当の生活を知らない人々として見てもいる。旅行者にとっては、これは都合のいいことだ。ここでは好奇心旺盛な子供のようになれて、皆がそれを許してくれるからだ。」ルフキンさんによれば、時々彼自身も、ロシアを旅するさい外国人を演じるようにしていると言う。「そのほうが、人々は進んで何かを薦めてくれたり、助けてくれたりするよ。」

 エレクトリチカでは、長距離の寝台列車と同様に、いたってふつうの典型的な地元の人々に会うことができる。「ここでは“偶然出会った旅の仲間効果”が働く。」これはルフキンさんの造語。「偶然出会い、恐らく旅の後で二度と会わないということは分かっている。だから、新しい旅の仲間は自分のこれまでの人生のことや、時にはおかしな秘密についても話してくれる。相手が外国人と分かれば、この効果は、それはもう大きなものとなるだろう!」

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