何度のとき、ロシア人は寒いと思うのか?

Aleksandr Avilov/Moskva Agency
 外の気温がマイナス50℃のとき、人生を楽しむことはできるのだろうか?もちろん!今まではマイナス60℃だったのだから!

 ロシアは伝統的に雪と酷寒の国というイメージがある。そしてロシア人は厳しい冬でも外でアイスクリームを食べるほど寒さに強い人と考えられている。ロシア人が寒さをものともしないというのは本当なのだろうか?ロシアの様々な地域の人々に、どのような状況のときに寒いと思うのか尋ねてみた。

もっとも厳しいシベリアの酷寒

大雪で遊ぶ子ども、ノリリスク

 ロシアでもっとも寒い都市、オイミャコン、ヴェルホヤンスク、ヴォルクタ、ノリリスクなどは、すべてシベリアか極東に位置している。マイナス40℃になることはしょっちゅうで、冬の寒さは10月に訪れ、それは5月まで続く。夏になっても雪が溶けないことも多い。さらに、それぞれの地域の天候にそれぞれの特徴がある。たとえば、ノリリスクの冬は気温が低いだけでなく、まさに足をすくうような激しい風によって厳しさを増す。

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 ノリリスク出身のカメラマン、ヤーナ・レウシェワさんは言う。「ノリリスクでは比較的乾燥した気候で、マイナス30〜35℃になると(風がなければ)、寒いと感じ、マイナス45℃だと酷寒です。しかも霧に包まれています。風があるとさらにマイナス60℃まで気温が下がります。マイナス25℃でも、北風があると凍えてしまいます。遮熱下着と暖かいつなぎを着て、できるだけ外に出ないようにしています」。ヤーナさんは、マイナス45℃以下になると1年生から8年生は休校となりますが、それより上の学年は普通通りだと教えてくれた。

ヤクーツクの気温はマイナス50度

 一方、地球上で人の住む地域でもっとも寒い場所であるヤクート・サハ共和国のオイミャコン出身のブロガー、イルゲン・アルグィスタホフさんは、「こちらでは、マイナス50℃まで気温が上がれば、皆、ちょっと暖かくなったねと言います。寒いというのはマイナス60℃以下のときのことです」と話す。

 1933年、他でもないここで、マイナス67.7℃という記録が打ち立てられた。イルゲンさんは、「冬は寒いですが、暖かい日が多い年もありました。マイナス40℃まで上がったこともあります。しかし、毎年だいたい平均的にはマイナス60℃を下回ります。確か、マイナス56℃になると、学校は休校になるはずです。でも大人はどんな天候のときも働いています。ただ、凍えないように正しい服装をするよう心がけています。 

 一方、シベリア南部はかなり暖かい。もちろん、北部に較べて、という意味である。ケメロヴォ出身のマリーナ・クルィロワさんは言う。「冬は普通、マイナス20℃からマイナス40℃くらいです。ここ数年は、日中はマイナス20℃くらいです。雪が多く、いつもどんよりしていて、乾燥していて、風があります。マイナス30℃になると、寒いと感じます。マイナス30℃でも、皆学校に行きます。仕事はいつでも通常通りです。暖かめのセーターを着て、家を出ます」。

 

黒海では雪がなくても寒い 

ソチのビーチで雪達磨を撮影している女性

 実際、ロシアの気候は非常に多様である。南部の都市に住む人々は滅多に雪を見ることがなく、雪が降るとニュースになるほどである。たとえば、1月、ソチで5年ぶりに雪が降り、ソーシャルネットワークには、凍ったヤシの木やビーチに作られた雪だるまの写真が溢れた。しかし、ソチの人々には別の悩みがある。それは避けることができない海からの冷たい風である。

 ソチ出身のアレクサンドラ・マトヴィーチェンコさんは、こう話す。「マイナス3〜5℃でも少し不快で、6℃になると寒いと感じます。風があるときは特にそうです。しかし、ここは天気が変わりやすいのです。今日マイナス3℃で、毛皮のコートを着ていますが、1週間前はプラス14℃で、Tシャツを着てスポーツしていました」。アレクサンドラさんは、冬は秋用のジャンパーを着ることが多いと話す。と言うのもソチの冬は穏やかでとても気持ちがいいからだ。「どれほどソチの冬が好きかが分かりました。今週は、今年初めてマイナスになる雪が降りました。以前、いつソチで雪が降ったのか覚えていないほどです」。

洗礼祭のとき黒海で泳ぐ女性、セヴァストーポリ。

 今年、クリミアにも本物の冬が訪れた。セヴァストーポリのリマ・ザイツェワさんは、「今年は雪が多く、3日間、雪が積もりました。とても珍しいことです。普通は雪が降っても、2時間ほどするとすぐに融けます。気温もマイナスになることはほとんどありません」と話す。またザイツェワさんは、一番嫌なのは風だと話す。「最近マイナス4℃の風の日があったのですが、風のおかげでマイナス14℃くらいに感じられました。一番強い風が吹くのは1月と2月で、その時期は海も荒れます」。リマさんは、ウラル地方に長いこと住んでいたが、ウラルに比べればセヴァストーポリの酷寒はまったく怖くないと話している。それでも彼女は、クリミアでも人々が毛皮やダウンコートを着ているのを見かけるし、子どもたちも厚着していると指摘している。

 

問題は湿度 

サンクトペテルブルクのペトロパヴロフスク要塞のビーチで散歩している女性

 多くのロシア人が言うのは、乾燥していて太陽が多い冬は、湿度の多い冬よりも過ごしやすいというものである。雨がちな天候でよく知られるサンクトペテルブルクのワレンチナ・パホモワさんは、「マイナスの気温で風があるときは最悪です。気温がマイナス5℃でもマイナス100℃くらいに感じます」と話す。冬、サンクトペテルブルクは大量の湿った雪に覆われる。

サハリン島の吹雪

 「わたしはサハリンで生まれましたが、寒いのは好きではありません。わたしはマイナス10℃以下になると寒いと感じます」と話すのは、ユジノサハリンスク生まれのエヴゲーニー・キリエンコさん。サハリンの天候は非常に差があり、南部では冬は通常マイナス15℃くらいで、湿度が高いが、強い風が吹くことはなく、南部から300〜400キロ離れたサハリン北部では、マイナス40℃くらいまで下がることはあるという。「ウラジオストクに1週間滞在しましたが、ウラジオストクはマイナス12℃で、陽は射すものの風が強く、サハリンの2倍、寒いと感じました。ハバロフスクはというと、風のせいで、ウラジオストクの2倍寒いと感じました」。

 一方、モスクワでは冬でもマイナス20℃以下になることはなく、街の中心部は郊外よりも暖かい。しかし、それでも雪が多く、風も強く、吹雪くこともあり、また湿った風が吹き抜ける。モスクワのダリア・ソコロワさんは、「マイナス15℃を下回ると本格的な寒さを感じますが、わたしはどんな天気のときでも外に散歩に出かけます」と話す。

洗礼祭でモスクワ川に飛び込む「モスクワのセイウチ」の参加者

 冬に凍えることなく、寒さに喜びを感じるため、ロシア人の中には冷水摩擦を行なっているという人もいる。モスクワ郊外にあるグループ「パヴロポサードのセイウチ」のメンバー、イリヤ・ポタポフさんは、「以前はマイナス20℃以下の寒さには耐えられませんでしたが、2012年から洗礼祭で冷水に入るようになり、2016年からは定期的な冷水摩擦を始めました。1年後には水に入るのも苦ではなくなり、寒さにも耐えられるようになりました」と話し、「今ではどんな水温も、どんな気温も平気になりました」と付け加えている。

 「もう寒いと感じることはありません。今、外はマイナス12℃ですが、わたしは夏用の靴を履いています。ただ洋服は冬物を着ています。頭と足は暖かくした方がいいのでね」。

 

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