マイナス50℃のロシアにおける正しい服装(写真特集)

Bolot Bochkarev/Sputnik
 マトリョーシカはシベリアと極東の住民たちの冬の装いをヒントに考案されたのではないかという気がする。シベリアや極東では気温がマイナス30℃以下にならなければ、酷寒とは呼ばない。本格的に寒い季節が来ると、地元の人々は、重ね着というものは多すぎることなどないと言う。しかし美しく装うことを忘れてはいけない。

オシャレな若者たちは耳を青くして

 クラスノヤルスク(ノリリスクより1,500キロ南ではあるが同じくシベリア)からノリリスクに引っ越してきた地理の教師であるクリスティーナ・コベレワさんは、酷寒は北方の方が快適だと話す。理由は、通常、冬の気温はマイナス30~35℃と同じくらいだが、湿度がそれほど高くないからだ。

 「ノリリスクではマイナス40℃になっても、凍えるのは覆われていないところだけ。顔、手袋をしていない手、それから長いこと外に立っているときは足も。また風が強くなければ、寒さもあまり感じません。しかしクラスノヤルスクではマイナス10℃でも体じゅう、骨まで凍えます」。一方で、ノリリスクでマイナス40℃で風速が秒速20~25メートルのときには風を通さないような服装をしなければならない。

クリスティーナ・コベレワさん

 「つまり皆、毛皮のコートか、ロング丈のダウンコートを着ています。わたしのコートは、くるぶしまで丈がある人工羽毛入りの厚手のダウンコートで、その下に暖かいインナーかフリース素材のトレーナーを着ています。普段はワンピースを着ているので、下はタイツと暖かい素材のレギンスを履いています」。手には必ず手袋をする。「わたしの手袋はミンクの毛皮でできています。かなり暖かいです」。そして足には革、裏革、毛などで出来た厚底のブーツを履く。

 クリスティーナさんが言うには、基本的に冬はいつも厚手のレギンスを履いてはいるが、それほど暖かくない。ノリリスクの寒さだとそれも当然である。クリスティーナさんは、「でも、オシャレな人たちはマイナス35℃でも、スニーカーを履いて、パンツの裾を折りあげて、帽子も被らずに歩いています。でも耳が青くなっていますが」と話す。

毛皮のコートは贅沢品ではなく、移動するための必需品 

マルガリータ・マカロワさん

 ヤクーチア(サハ共和国)はロシアでもっとも寒い地域とされている。ここにはもっとも低い気温を記録した2つの町がある。オイミャコンとヴェルホヤンスクである。この2つの町ではマイナス70℃という気温を記録した。サハ共和国の首都ヤクーツクの平均気温はマイナス40~45℃である。 

 テレビ局「サハ」の司会者を務めるマルガリータ・マカロワさんは「毛皮のコートが贅沢品だという場所もあるでしょうが、この地域では必需品です。ただ最近は、Bask(ロシアのコートのブランドで、ダウンコートが30,000ルーブル=およそ55,000円で売っている)のような非常に暖かいコートが作られるようになり、それも毛皮よりは安く買えるので人気があります」と話す。しかし依然、多くの人は毛皮の帽子をかぶり(毛皮の帽子では冬を乗り切れない)、トナカイの皮でできたウンティというブーツを履いている。

 「ヤクートの美しい女性たちの装いを見ていたら、最近は色々なモデルやデザインのものがあります。男性もウンティを履いていますが、男性ものは少し地味なものが多いですね」。

マルガリータ・マカロワさん

 地元の人々は、帽子だけでなく、顔も覆う。そうしなければ、まつ毛に氷がくっつく“ヤクート風メイク”になるからだ。まつ毛は10分も外にいれば凍ってしまう。

マルガリータ・マカロワさん

 毛皮のコートとブーツの下にも何枚も服を着なければならない。またレギンス、ウールのレッグウォーマーは欠かせない。なぜならもっとも冷えるのが膝だからだ。それから今はやりの綿入りのパンツ。女性らしさを保てないのが難ではあるが。マルガリータさんは言う。「こちらの冬の装いは非常にお金がかかります。でも、そうしないと本当に寒いのです」。

風を通さないマスクとワーレンキ

 チュコトカ半島にあるぺヴェクはロシア最北の町である。長くて寒い冬、ここには地球上で最も強い風であるユジャクが吹く。そこで地元の人々は何よりも顔を保護しようとする。

エヴゲニアさん

 「寒い日にはマフラーとスヌードを必ずつけます。でないと、顔が凍ってしまうので」とエヴゲニアは言う。彼女は数年前にウラジオストクからぺヴェクに引っ越してきた。「目以外は全部顔を覆います」。風が強く、非常に寒いにもかかわらず、若い女の子たちは美しくあろうとメイクをする。「もちろんすべてが凍ります。涙が出たら、最悪です。でも仕方がないので、目的地についたらまたメイク直しをします」とエヴゲニアは打ち明けている。

 チュコトカでは冬にモデル風ブーツは役に立たない。「でも、ワーレンキを履けば、どんな寒さも怖くありません」とある女性は話す。「わたしのワーレンキは踵が高くて、白い生地に刺繍が施されていて、おしゃれでかっこよく、北方にぴったりです」。もちろん、普通の冬用のブーツを履くこともできるが、15分しか持たず、職場まで走っていかなければならないという。しかしいずれにしても底が高く、多層構造になっているものでないといけない。

 チュコトカの住民たちも自然素材の衣服を身につけることを好む。綿のタートル、ウールのシャツ、毛皮の帽子に、フードがついたロング丈の毛皮のコート。女性は言う。「しかしこれは本当に寒いときのスタイルです。マイナス30℃くらいのときには、スキーウェアを着て歩くこともできます。ただし、学校に通う子どもたちはあまり寒さを感じないようです。帽子もかぶらず、くるぶしを見せて、歩いていますよ」。

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