ロシアのプリャーニクのすべて

Varvara Gertye; A.Liberman/Sputnik
 香り豊かな香辛料が入ったお菓子はルーシ時代からあるもっとも歴史ある焼き菓子とされている。しかも、それぞれの地域にこのお菓子の独自のレシピと伝統がある。

 プリャーニクはロシアにおけるもっとも主要な食べ物の一つである。プリャーニクにはすでに1000年以上の歴史がある。最初はライ麦粉に蜂蜜とベリーの果汁を加えて作られており、プリャーニクの前の形は蜂蜜パンのようなものであった。12世紀になって、インドや中東の香辛料が持ち込まれるようになったため、それがプリャーニクに加えられるようになった。当時、香辛料は非常に高価だったため、贅沢なお菓子だと考えられていた。コヴリシカと呼ばれるもっともシンプルなものも、皇帝のお祝いの席に出されていた。18世紀になり、ショウガやナツメグ、チョウジなどが一般の人々でも手に入れられるようになると、プリャーニクはもっとも人気の焼き菓子になったばかりでなく、人々による芸術品となった。ロシアの古代都市、トゥーラ、ヴォログダ、アルハンゲリスクなどには、ロシア中でよく知られる地元のプリャーニクを一度食べてみようといまでも多くの観光客がやってくる。

模様入りのプリャーニク

 おそらくロシアでもっとも一般的なプリャーニクといえば、模様が浮き出たものである。模様を入れるためには、木製の型が必要で、そこに鏡映しになるよう左右を反転させて模様を彫る。たとえば、これは、おとぎ話の鳥と魚が描かれたゴロデツのプリャニキである。

 この木型に生地を流し込み、フルーツのピュレやヴァレニエ(ジャム)などを挟み、上からもう一度生地を流し入れる。焼きあがったら、表面にシュガーシロップを塗る。

 ポクロフでは模様のついたプリャニキをチョコレートとアイシングで飾る。

 トゥーラのプリャニキはロシア内外でもっとも知られている。伝統的な四角い形と表面に施された模様ですぐに見分けがつく。トゥーラのプリャーニクはトゥーラだけでなく、モスクワやサンクトペテルブルクでも販売され、また祝賀の際などの贈り物にも使われた。サンクトペテルブルクが創建75周年を祝ったとき、トゥーラの菓子職人たちは30キロものプリャーニクを焼き、エカテリーナ2世に贈った。そのときに使われた模様が彫られた木型はトゥーラのプリャーニク博物館に保管されている。

色々な形のプリャーニク 

 一方、ロシア北方では、動物や鳥に象ったプリャーニクが焼かれている。アルハンゲリスク州では、クリスマスに特別な「コズリ」と呼ばれるプリャーニクが作られる。このプリャーニクの形は、ヤギ、ヒツジ、牛など、キリストの周りに立っていた動物たちを象徴したものである。現在はクリスマスツリーやニワトリの形をしたコズリもある。ロシア北方の先住民であるポモル人の言葉で、「コズリ」とは「渦巻き」を意味する。飾り物にもなりそうなお菓子は、子供たちに贈られることが多い。悪い精から身を守ってくれると考えられている。最近では、このお菓子をクリスマスツリーに飾る家庭もある。もちろん、飾った後は食べることができる。

 シベリアやウラルでは「コロフキ」と呼ばれる似たようなプリャーニクが焼かれている。こちらもクリスマスや新年の前に作られるものである。動物の形のプリャーニクは、収入を呼ぶとされている。「コロフキ」はスヴャートキと呼ばれるクリスマス週間(1月7日のクリスマスと1月19日の洗礼祭の間の1週間に、歌を歌い、祈りを捧げながら家々をまわる若者たちに配られた。

 ひばりのプリャーニクは春を迎えるために焼かれた。ポクロフ、ウラジーミル、ヴャジマなど多くの都市では今も同じようにひばりのプリャーニクで春を愛でる。

彫りが施されたプリャーニク

 木製あるいは金属製の型板を使って、鳥や植物、動物の形を作る。作り方はとても簡単で、生地を型板の形に切り、砂糖のアイシングで飾るだけである。このプリャーニクは中に何も入れないで作ることが多いが、食べることができる食紅を使って、豪華な絵が施される。

コヴリシカ 

 蜂蜜、レーズン、ナッツなどを加えた生地を焼いただけの一番シンプルなプリャーニク。2枚焼いて重ね、その間にジャムを挟むことが多い(レシピはこちら)。生地は長いことカビないため、旅に持っていく人が多かった。

 モスクワ州にあるトロイツェ・セルギエフ大修道院は蜂蜜のコヴリシカで有名だ。ここでは今でも、昔ながらの製法でコヴリシカが作られている。一方、ウラジーミル州のポクロフ市では、カカオを加えた生地を使って、より近代的なコヴリシカが作られている。上からアイシングをしたり、ウサギやクマの絵を描いたものもある。

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