1. ペリメニ
おそらく、ロシア料理の中でもっともよく知られている一品で、どこのロシア料理店でも見つけることができ、また家庭料理としても非常に一般的なものである。他のダンプリング料理と比べたペリメニの特徴は大きさと形にある。ペリメニはとても小さく、半分に折ったあと、写真にあるように両端を真ん中で合わせる形がもっとも一般的である。
ペリメニの生地は普通、小麦粉、水、塩で作られ、中には牛肉と豚肉の挽き肉の具を入れる。最近では別の種類の鶏肉や魚を入れたものも作られており、レストランではヘラジカやイノシシの肉を入れたものがメニューに並んでいることもある。
ペリメニは元々、ウラル地方にルーツを持つと考えられているが、ロシアの各地域にそれぞれ独自のペリメニがある。(レシピはこちらからどうぞ)。
またペリメニは独身男性や学生に人気の料理とされている。というのも、とにかく簡単に作れるからである。冷凍ペリメニ(どの食料品店にも売っている)なら、沸騰したお湯に入れ、4〜5分茹でるだけである。しかしながら、ロシアの家庭では、キッチンに皆で集まってペリメニを作る(ロシア語で「лепить(リェピーチ)」、つまり大きな生地をこねて塑像する)習慣がある。子どもももちろん参加し、手伝う。
2. ワレニキ
ワレニキはポーランドのダンプリング、ピエロギの一種とされている。形成するときには、半分に折って、詰めた具が外に出てこないよう、指かフォークで留める。生地はペリメニと同じようにも作れるが、イーストを加えたり、ケフィールを加えたりすることもある。そしてワレニキの具は文字通り、なんでもいい。肉、ジャガイモ、キノコ、キャベツ、その他の野菜、カッテージチーズ・・・。さらにベリーやフルーツ、ヌテラ、ジャムなど甘いものでも作られる。一般的にはサワークリームを添えて出される。
この「ワレニキ」という名前は、動詞の「варить(ワリーチ)」、つまり茹でるという意味からきている。というわけで、どのように調理するのかはこの名の示す通りである。
ワレニキのルーツはウクライナ料理にあり、ウクライナがロシア帝国の一部であった18世紀から知られており、そこからロシア料理の一部になったのである。
ウクライナ出身のロシアの作家、ニコライ・ゴーゴリは、ディカーニカ近郊夜話の「降誕祭前夜」という素晴らしい作品の中で、ワレニキを登場させている。登場人物の一人が2つのボウルの前に座っている。1つはワレニキがたくさん入ったもの、もう1つはサワークリーム 。登場人物が持つ驚くべき魔法の力で、ワレニキは1つずつサワークリームの入ったボウルに飛び込み、フォークも手も使わずに、登場人物の口の中に入っていくのである。これは、このおいしい料理を食べたことがある者すべての夢である。
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3. ヒンカリ
カフカスのダンプリング。無発酵の生地(水と小麦粉だけ)に挽き肉(牛肉、豚肉、または羊肉)が入ったクラシカルなヒンカリには、黒コショウとカフカスの伝統的なスパイス(コリアンダー、クミンなど)が使われている。
形成の観点から言えば、ヒンカリはもっとも作るのが難しいダンプリングである。大きさはペリメニやワレニキより大きく、18本のひだと“尻尾”を持つ。この形を作ることができるのは、経験豊富なシェフだけである。ヒンカリは普通、お皿ではなく、トレイの上に乗せて出される。
ヒンカリを食べるときの重要なルールは、手で食べるということである。ゴーゴリの小説に出てくる登場人物のような超能力がない人は、“尻尾”の部分を手で持って一口かじり、中の肉汁をそのまま(あるいはスプーンに注いで)飲み、それから手を使って、残った部分を食べる。カフカスに行くことがあり、ヒンカリをフォークとナイフで食べようとしたなら、周囲の人はきっと不可解な顔をすることだろう。
カフカス料理はロシアのすべての大都市で非常に人気がある。レストランでは異なるタイプのヒンカリが出されている。肉入りだけでなく、チーズ、魚、キノコなど、具もさまざまで、作り方も、茹でたものだけでなく、揚げたものもある。ちなみにこの揚げたものもとてもおいしい。
4. マンティ
トルコにルーツがあるこの料理は中央アジアとカフカスで広く食されている。カラチャイ、バルカルに住むロシア人の伝統料理にもマンティがある。同時に、マンティはキルギス、カザフ、ウズベク、タジクなどの国でも広く作られていることから、ロシアを含む旧ソ連圏で人気がある。
マンティについて知っておくべきことは、蒸して作るということである。いくつかの層になっているマンティ調理器というものもある。
マンティの具は挽き肉と玉ねぎを混ぜたものが一般的だが、なんでも作ることができる。少し甘みをつけるためにカボチャを入れることも多い。マンティの形はいくつかあるが、いずれも形成は簡単ではない。
5. ボーズ(ロシア語でポーズィあるいはブーズィ)
シベリア鉄道で旅行したことがある、あるいはバイカル湖に行ったことがある人なら、おそらくポーズィを食べたに違いない。ロシアのブリャート共和国の伝統料理で、イルクーツク州(バイカル湖がある)でも非常に人気がある。ちなみにポーズィはモンゴルの伝統料理でもある。
ポーズィはマンティに似た料理で、こちらも蒸して作る。具は挽き肉と玉ねぎが一般的である。形はヒンカリに似ており、こちらも手で食べ、まず中の肉汁を吸ってから、残りを食べる。ただし、ヒンカリは18本のひだを作るが、ポーズィはなんと33本のひだが必要である。ポーズィにも上部に穴が空いている。
ブリャートのボーズ(レシピ)>>
6. クンデュムィ
この料理はあまり作られておらず、知名度も低く、古いものとされている。典型的な具はキノコに挽き割りを加えたものである。たとえばロシアではそばの実(グレーチカ)などである。この料理はベジタリアンフードとされているため、肉は一切使わない。
クンデュムィは普通、エンパナーダに似た三角形で、オーブンで焼いた後、キノコのブロスと一緒に時間をかけて蒸す。変わっているが、とても良い製法である。もっと詳しく知りたい方は、この料理にインスピレーションを受けたアメリカ人作家のレシピはこちらから。