シーズン2・第14話
「セルマの結婚願望」(Principal Charming)でアルバムをめくるセルマが、モスクワでレーニンの棺の隣でパティと映る写真を目にしている。
シーズン2・第8話
「命知らずのバート 」(Bart the Daredevil)というエピソードは、バートとリサがTVでレスリングの試合を見ているシーンから始まる。そこに登場するレスラーは「ラスプーチン:フレンドリーなロシア人」という異名を持つが、かつては「ラスプーチン:マッドなロシア人」という二つ名だった。ラスプーチンは残念ながら、この試合を落としてしまう。
シーズン4・第22話
かつてマット・グレイニングはインタビューでエピソード「クラスティー絶対絶命!」(Krusty Gets Kancelled)に触れ、作中に登場するアニメ「労働者と寄生虫」(Worker and Parasite)はシリーズでも屈指の出来だったと語っていた。
このエピソードでは、コメディアンのクラスティ―の番組中に登場するアニメ「イッチー&スクラッチー」がライバルに奪われてしまい、クラスティ―は代わりに「ネコとネズミが登場する東欧のアニメ」を放映する。それが「労働者と寄生虫」である。冒頭に登場する鎌と槌から察するに、これはソ連ナイズされた「トムとジェリー」のパロディ。内容は支離滅裂で、色彩に乏しく、作画も拙い。 造形に難のあるネコとネズミが意味不明な言語で喋り、行列に並ぼうとする場面でアニメは突如終了する。この出来にはクラスティ―も「なんだこりゃ?」と憤慨。しかもこの後、クラスティ―の番組は打ち切られてしまう。
シーズン7・第13話
ミハイル・ゴルバチョフが登場するエピソードは「ブッシュ VSシンプソンズ」(Two Bad Neighbors)。作中、パパ・ブッシュの方のジョージ・ブッシュがシンプソンズの隣に越してくるが、関係は最初からこじれる。ブッシュがシンプソン家の芝生をダメにして、さらにバートを叩いたため、ホーマーがキレた。
ブッシュとホーマーの喧嘩の真っただ中、ゴルバチョフが登場する。ソ連大統領ゴルバチョフはコーヒーメーカーを手土産に、ブッシュの新築祝いに訪れたのだ。ゴルバチョフを出迎えるためにブッシュが喧嘩を止めると、ホーマーは嫌味たっぷりに「汚い喧嘩を手伝ってもらうためにアカの仲間を呼んだな?」と言うのである。
ホーマーに対し謝るように夫人はブッシュを諭すと、ブッシュは「ロシア人の前で弱味は見せたくない」と言って拒否する。
シーズン8・第10話
「スプリングフィールド・Xファイル」(The Springfield Files)は、ボリス・エリツィンの唯一の登場回だが…なんと酩酊レベルの指標として登場する。モーの店でビール10杯を呑んでから車で帰宅しようとするホーマーだったが、心配したモーがアルコール検知器を勧める。ホーマーが息を吹き込むと、メーターは最高値である「Boris Yeltsin」レベルを示した。これにはホーマーも「しょうがない、歩いて帰るよ」と納得。
シーズン9・第1話
「ホーマーのニューヨーク物語」(The City of New York vs. Homer Simpson)で、ホーマーはスプリングフィールドからニューヨークに向かうが、ホーマーはまだ見ぬニューヨークをけなす。これに対しリサが、「行ったこともない土地を悪く言うもんじゃないよ」と諭し、バートが「そういうことをするのはロシアの人々だよ」と付け加える。
シーズン9・第19話
「キャプテン・シンプソン」(Simpson Tide)は、おそらく最もロシア要素の濃い回だろう。この回は、ソ連をテーマにした2つの有名アメリカ映画、「レッド・オクトーバーを追え!」と「クリムゾン・タイド」のパロディである。
ひょんなことから、ホーマーはアメリカの原子力潜水艦をロシアの領海内に差し向けてしまう(パロディ元の「レッド・オクトーバーを追え!」では、ショーン・コネリー演じる主人公が原潜でアメリカに亡命を企てる)。ホーマーはスパイ罪に問われ、そのニュースは毛皮の帽子を被ってウォッカ片手に赤の広場でコサック・ダンスを踊るホーマーの写真付きで報じられる。
ホーマーの「やらかし」で、事態は思わぬ方向に進んでいく。国連総会でロシア代表は「ソ連はアメリカに潜水艦を返還する」と発言する。ソ連は1991年に崩壊したじゃないか、という指摘に対し、代表は「そう思わせただけだ」と回答。
そこから続くシーンは、インターネット・ミームとなって久しい。ロシア代表が「ロシア連邦」と書いてあるプレートをひっくり返すと、裏側には「ソビエト連邦」の文字が。モスクワの赤の広場で行われていたカーニバルの山車からは突如戦車が出現。挙句、レーニン廟ではレーニンがよみがえり、資本主義打倒を叫ぶ。
シーズン9・第24話
「リサの一人ぼっちバス体験」(Lost Our Lisa)は、ニューヨークのロシア人街であるブライトン・ビーチのパロディ回。博物館に行くはずだったリサは、バスを間違えて、「スプリングフィールドのロシア人街」に辿り着く。マンハッタンのチャイナタウンやリトル・イタリーにちなみ、「リトル・モスクワ」と呼ばれる地域という設定。
当然、あらゆるロシア要素は誇張されたパロディまみれだ。街角でお菓子を売るクマや、コソヴォロートカを着てソ連の老人とチェスに興じる男など。リサが博物館への道を尋ねると、彼らは怖ろしい叫び声をあげる。しかし字幕を見ると、実はちゃんと道を教えているのであるが、伝え方が怖ろしいのである。なお、お互いも同じように喋る。
シーズン10・第2話
「発明は反省のパパ」(The Wizard of Evergreen Terrace)で、ホーマーは自分が人生で何も成していないことをひどく気にする。宇宙にだって行ったじゃないか、と、リサは父をなだめ、宇宙飛行をした時のビデオテープも見つけてくる。しかし、ホーマーは意に介しない。曰く、「宇宙トマトを栽培して、ミール宇宙ステーションに悪さしただけだ」。事実、ビデオにはアメリカのスペース・シャトルが何度も宇宙ステーションにぶつかり、ステーションの中のソ連宇宙飛行士たちが何やら怒鳴っている様子が映っていた。
シーズン10・第20話
「救え!老人たちと海」(The Old Man and the 'C' Student)では、オリンピック委員会の会合にロシア代表が登場する(もちろん、毛皮の帽子を被っている)。五輪開催地としてモスクワをアピールしつつ、ロシア代表は「1ドルは7ルーブルです」と言うが…ポケベルが鳴り、次々とメッセージが。1ドル12ルーブル、1ドル60ルーブル…「ではこのへんで」と言い残して、ロシア代表は逃げ出す。この回で彼は再登場し、早くも呑み過ぎたとバートに話し、最後にはスプリングフィールド名物のタイヤの山に放火する。
シーズン12・第7話
ミール宇宙ステーションのネタは、「おかしな詐欺師にご用心」(The Great Money Caper)でも登場。シンプソン家の車に、英語圏では「ロシアの魚」として知られるオオチョウザメが落ちてくる。オオチョウザメは、ミール宇宙ステーションから落ちてきたのだ。ステーションでは2人のロシア人飛行士が言い争っている。「晩飯が台無しだ!」、「ドアを開けっぱなしにするからだ!」。そこから先は、ロシア語の「罵倒語」が続く。最も、残念ながらロシア語にはあまり似ていない。
シーズン13・第3話
モー・シズラックがお洒落なバーを開店すると、やがてロシア人女性たちがやってくるようになる。「本当に私が魅力的に思えるのですか?」とモーが訊くと、彼女たちは明らかに残念そうに、そうだと答える。 当然ながら、ここで描かれているのは、アメリカでシュガーダディを探し求め、妥協に妥協を重ねた貧しいロシア女性の姿である。
ただし、ここに登場するロシア女性は一筋縄ではいかない。後に一人は、チェルノブイリ事故の後に「男性の部分」が脱落して女性になってしまったと告白した。
シーズン14・第5話
「リアリティショーは笑えない」(Helter Shelter)では、シンプソン一家はスプリングフィールドのホッケーチーム「アイソトープス」の試合を観戦している。リサはリンクの近くまで降りていくと、ゴールを狙う選手に「コズロフ、足元を狙え!隙間は赤の広場サイズだ!」と助言する。コズロフは助言通り、キーパーの足元を狙うと見事得点を決める。コズロフは感謝の印に、槌と鎌のマークと自身の名前が入ったスティックをリサにプレゼントする。ホーマーはこのスティックをリサの部屋の壁に打ち付けるが、夜中、スティックからシロアリが這い出し、家中を喰い荒らしてしまう。
興味深いことに、コズロフという名のロシア人選手はNHLに2人もいた。1人はヴィクトル・ニコラエヴィチ・コズロフ(1975年生)、もう1人はヴェチャスラフ・アナトリエヴィチ・コズロフ(1972年生)。後者の方がはるかに有名で、NHLで1000試合出場を果たした7人のロシア人選手の1人である。恐らく「シンプソンズ」に登場したのも、ヴェチャスラフ・コズロフの方であろう。
シーズン19・第3話
「真夜中の牽引ボーイ」(Midnight Towboy)では、レニー・レオナードの先祖はロシアか、ロシア帝国出身だということが明かされる。レニーがカールに話したところによれば、「スターリンのせいで祖母はラーゲリに20年も放り込まれた」らしい。 レニーはホーマーとともにスプリングフィールドの原子力発電所に務めており、核物理学者でもある。当然これは、頭脳明晰なレニーがソ連からのユダヤ系移民であることが示唆されている。
シーズン21・第12話
「愛のカーリングデート」 (Boy Meets Curl)では、ホーマーとマージがカーリング選手になる。一方リサは様々な年代の五輪マスコットのバッジ収集に熱中する。しかし熱中は度を越してしまい、ほとんど依存症状態に。レアなバッジを入手すべく、リサは自分の真珠のネックレスを売り払ってしまう。これではマズイと気付いたリサは、バートに助けを求める。
バッジ売りからネックレスを取り戻すべく、バートは来たるべき2014年のソチ冬季五輪のマスコット「Fatov」(ロシア語ではジルノフ)を捏造する。バートはホーマーの免許証からアゴの部分を切り抜き、目を描き足してFatovバッジを自作する。バートはバッジ売りを、これはFatovの最初にして唯一のバッジだと言ってやりこめる。「こいつの名はFatov。ロシアの怠惰とアル中精神の象徴なんだ」。バッジ売りはこれを信じ、バートにリサのネックレスを返す。Fatovはバッジ売りの奇妙な妄想に登場するが、これはアメリカ映画「ドクトル・ジバゴ」へのオマージュであろう。妄想のシーンで同作のテーマ曲が流れるからだ。
Fatovは「シンプソンズ」にもう一度登場する。リサはどうやらこの奇妙なFatovバッジを大事に保管していたらしい。シーズン30の第9話で、リサの手箱の中の大事な品の数々の中にFatovバッジが登場する。
シーズン22・第17話
ホーマーがバートにした悪戯が、ロシア艦隊による米国領海への侵入を引き起こす事態に。冒頭、シンプソン一家はサッカーの試合観戦に行く。観戦中、ホーマーはバートをくすぐるが、その時、スタジアムのカメラが2人を捉える。そして、くすぐり過ぎた結果失禁したバートが映ってしまう。しかも夜のニュースによれば、(バートのズボンを太陽に当てて乾かすために)スタジアムの天井が開いた結果、ロシアの人工衛星が濡れたズボンを確認。その映像をアメリカ人の臆病さを示すものと判断した結果、ロシア大統領のドミトリー・メドベジェフ(2011年の放送回である)はアメリカ侵攻を宣言。ロシア艦隊はニューヨーク沖にまで迫るのである。
シーズン23・第3話
「ハロウィーン・スペシャルXXII」(Treehouse of Horror)で、ホーマーはクロゴケグモに刺されて「閉じ込め症候群」、すなわち、視力・聴力・思考力のみを維持した全身マヒ状態に陥る。リサは父のために「カラマーゾフの兄弟」を朗読する。ホーマーはすぐにでも朗読を止めて欲しいが、その意思をどう伝えれば良いのか?唯一彼に可能なのは、放屁であった。こうして、ドストエフスキーのおかげで、マヒ状態のホーマーは家族との意思疎通手段を発見するのである。
シーズン23・第8話
「クラスティの再挑戦」(The Ten-Per-Cent Solution)は殆どロシア要素の無い回だが、作中、動画投稿サイト上に「バートがプーチンをからかう」と題された動画が出てくる。動画では、バートが赤の広場をスケボーで疾走し、それに酷く苛立ったプーチン大統領が聖ワシリ大聖堂からロケットランチャーを発射。バートは「アイ・カランバ!」と叫ぶのが精一杯だった。
シーズン24・第14話
「復活したプロレスラー」(Gorgeous Grampa)では、ロシアネタは1つだけだが、実に濃い。バーンズ社長は、恨まれる事のすばらしさ、というテーマの歌を歌う。その歌詞では、自らを様々な伝説的悪人と比較している。その中にはスターリンの名もあるが、どういうわけか、「チャッキー、スターリン、メガトロン、エリック・カートマン、ドンキーコング」という、実に奇妙な並びであった。
そもそも、モンゴメリー・バーンズはスターリンのファンらしい。シーズン25の第3話では、バーンズが一生懸命に描いたスターリンの肖像画まで登場する。「スターリンこそ、お前に目にモノを言わせてくれる人物なのに!」と、バーンズは実に残念そうに言うのだ。
シーズン24・第20話
「秘められた才能」(The Fabulous Faker Boy)に登場するロシア人キャラは、重要な役回りだ。若いロシア人女性のジェーニャは、バートにピアノを教えることになる。交換条件として、マージはジェーニャの父・スラ―ヴァに車の運転を教える。
スラ―ヴァは、ロシア人のステレオタイプの集合体とも言えよう。金のネックレスを身に着け、強いロシア訛りで、ウォッカを呑み、警察官には賄賂のつもりでジーンズをやり、プーチンを批判する。いきなり車をバックさせると、「プーチンの経済みたいに、後ろ向きに走りたいんだ」とのたまう。ついにはマージも、プーチン関連の冗談を少し控えるように懇願する始末。
なお、スラ―ヴァは運転をマスターしたようで、シーズン26の14話では、タクシー運転手のストライキに登場している。
さてバートはと言えば、もちろん、ジェーニャに魅了され、彼女と一緒にロシアの「最もロシアらしい」場所を旅する様を夢想する。すなわち、赤の広場、ボリショイ劇場、そしてレーニン廟だ。
シーズン28・第9話
「バーンズの落とし穴」(The Last Traction)では、バーンズ社長はスミサーズと口論した挙句、こんな発言が飛び出す。いわく、必要な書類に署名するようにスミサーズがホーマーを説得しない場合、スミサーズを「チェルノブイリ原発の再稼働に派遣してやる」と脅すのである。チェルノブイリ原発がバーンズの所有であると聞いて驚くスミサーズだが、バーンズはこの秘密を「ここだけの話にしてくれ」と念を押す。
シーズン28・第16話
ロシアの大統領は導入部で登場する。上半身裸のプーチンが«The Simpsons»という文字列の横を有翼の馬に乗って飛んでいく(2009年にトゥヴァで撮影されたプーチンの写真のパロディ)。シーズン27の第5話でも、プーチンは同様の姿でカメオ出演している。
シーズン30・第6話
「モーの結婚」(From Russia Without Love)は英語のオリジナルタイトル通りなら、全編通してロシアがテーマだと思われるかもしれない。バートはモー・シズラックの恋愛を手助けするべく、郵便で妻を発注しようとする。バートは、ロシア人が武器などの密売をしているダークネットにアクセスし、そこで然るべき「商品」を注文する。やってきた女性の名は、アナスタシア・アレコワ。彼女はたちまちモーの店を整頓し、くつろげる空間に仕上げてみせる。やがて結婚の話が持ち上がり、正教の司祭が式を執り行う。
ところが、アナスタシアはロシア人などではなく、オハイオ出身の詐欺師で、正教の司祭は実際はブルックリン出身のペテン師だと判明する。二人は結婚詐欺の常習で、結婚時に夫の財産が丸ごと妻のものになるような契約を結んでは、荒稼ぎしていた。従ってこの回は反ロシア感情を煽るものではなく、むしろ逆に、「ロシア人」らしき人物の多くは自称かもしれない、と視聴者に警告しているのである。
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