ぜったい見逃せないサンクトペテルブルクを舞台にした映画5選

Kirill Serebrennikov/Sony Pictures Home Entertainment, 2018
 これら雰囲気たっぷりの映画は、あたかもこのロシアの文化の首都にいるような気分にさせてくれる。

1/ 白夜の調べ(1976年)

 ソ連と日本が共作したドラマ映画。ロケは、この街で最高の時季として知られる白夜の季節に行われた。1人の日本人ピアニストが初めてソ連を訪問し、当時の外国人女性なら誰でも夢見るような歓待を受ける。イリヤという名のハンサムな作曲家と出会い、彼とともにエルミタージュ美術館を訪れ、車のないレニングラード中をドライブし、5月のライラックの花束を受け取る。2人はこのロマンスは白夜のただの幻想であると思っていたが、時間とともにそれが間違いだと知る。

 涙腺の弱い人は注意すること地元作曲家、イザーク・シュワルツが作曲した胸を打つようなサウンドトラックが、水都レニングラードの息をのむような光景とともに流れると涙なしでは見られない。 

2/ 秋のマラソン、1979

 言語学者アンドレイ・ブズィキンを主人公とした「悲喜劇」。彼は、毎朝デンマーク人の同僚とジョギングをするのだが、これは、妻から「逃げて」、愛人のとこに通うためでもあった。映画のほとんどは、ワシリエフスキー島で撮影された。この学者はここにある大学で教え、コラブレストロイチェレイ通りに住んでいるのである。

 有能で、頭脳明晰だが優柔不断であるブズィキンは、同僚に対しても「ノー」と言えない。そして2人の女性のどちらかを選ぶことも出来ず、いつも嘘をついていた。だから、ある時、ネヴァ河の跳ね上げ橋が上がって本当に家に戻れなくなったときでも、妻にも信じてもらえない。1970年代後半にはこのようなことは実際にあった。橋が上がるまでに向こう側に渡れなければ、翌朝5時まで待たされた(今では有料道路が作られ、いつでもワシリエフスキー島に行き来できるようになった)。

 興味深い事実: 主人公のデンマーク人大学教授役は、ドイツ人のアマチュア俳優、ノルベルト・クチンケによって演じられた。彼は、実際にドイツのデア・シュピーゲル誌とシュテルン誌の最初のソ連特派員であった。

3/ Piter FM2006

 ラジオのDJマーシャと建築家マクシムが主役のラブコメディーで、サンクトペテルブルクの街の美しい屋上からの眺め、華麗な川岸、みすぼらしい中庭を生き生きと描き出している。そしてホームレスの耽美主義者や、マッチョなアルコール中毒者などサンクトペテルブルクのステレオタイプ的な短いエピソードが面白おかしく挿入されている。

  マーシャは携帯電話を失くしてしまうが、マクシムがそれを見つける。2人は会う約束をしたが、いつも色々な事情で会うことが出来ない。そうこうしているうちに、この2人はそれぞれ、人生にかかわる決断をする。マーシャは偽善的な恋人との結婚を断り、マクシムはベルリン事務所での勤務を拒否したのだ。「建物は人と同じだ。親戚であり、親しい友人なのだ」。映画の中でマクシムはこう語る。彼はマーシャに電話して、お気に入りの家を見せると約束する。そして彼女と恋人同士になるには時間の問題だと思われた・・・。

 オススメポイント:マーシャの家(フォンタンカ河岸24番地)からマクシムのインスピレーション(フォンタンカ河岸159番地)までをゆったりと歩く。

4/ Kokoko2012

 2人の女性が列車の中で出会う。一人はリーザという物静かな美術館の職員で、もう一人はエカテリンブルグからサンクトペテルブルクまで遊びに行く途中の粗野なヴィーカ。その朝、隣り合わせに乗車していた2人は盗難にあったことに気づく。突然こんなことで知り合いになったヴィーカを可哀そうに思ったリサは彼女を家に招く。芸術品で溢れ、知識階級がやってきてパーティーが開かれる古いマンションの部屋は、仕事ばかりしているヴィーカにとっては目新しいものであった。リーザの仕事を手伝おうと思い、新しい友人のヴィーカは熱心に家で勉強を始める。しかし、そんなにうまくいくものではない。しょっちゅうお酒を飲んで手あたり次第人を部屋に連れてくる厚かましい田舎者にかかっては、「ロココ」スタイルも「コココ」になってしまうのだ。 しかしコメディーはいつしかシリアスなドラマに変わる。主人公の1人が犯罪に手を染めようとし・・・。

 興味深い事実: リーザはクンストカメラ博物館で働いている。ここは、ピョートル大帝によって蒐集された、醜悪物、保存された「奇形」、変形した動物などで有名である。しかし、この博物館職員にとってはヴィーカがほんとの「奇形」であり、ある種の異国の「けだもの」なのだ。

5/  Leto(レト)、2018

 このミュージカル映画は、観る者たちを1981年のレニングラードの夏に連れて行ってくれる。そこには、アングラ文化、ロックコンサートと大量のアルコールが溢れている。ヴィクトル・ツォイという若いミュージシャン(後のバンド「キノー」リーダー)、成功したロックスター、マイク・ナウメンコと彼の妻ナタリアとの三角関係がこの物語の基本的背景だ。映画には街の風景は少ししか出てこない。主な出来事は、レニングラードの「コムナルカ」(共同住宅)の中で起こるのである。ツォイ役の韓国人俳優ユ・テオは撮影が始まる前にロシア語を学び、キノーの音楽を聴き、実際に共同住宅での生活を経験した。

 サウンドトラックに関する事実: 「Leto」はカンヌ映画祭でサウンドトラック賞をとった。ソ連のロックバンドの曲とともに、トーキング・ヘッズの「サイコ・キラー」、イギー・ポップの「ザ・パッセンジャー」、ルー・リードの「パーフェクト・デイ」、それにデヴィッド・ボウイの「すべての若き野郎ども」などが、現代のロシアのアーティストによってカバーされている。

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