代理戦場と映りつつあるシリア

ロイター通信
 専門家らは、ロシアとアメリカの首脳がシリア問題をめぐって接触しながらも互いを警戒し続ける、との悲観的な露米関係を予想した。

 シリア紛争をめぐり、ロシアとアメリカの互いへの不信感は高まる一方で、当面は払拭されそうにない。モスクワで30日に行われた国際討論会「ヴァルダイ」のロシアと西側の関係をテーマとした公開討論会で、参加者がこのような結論をだした。

 公開討論会に参加した、デズモンド・ブラウン元イギリス国防相(2006~2008年)、ロデリック・ライン元駐ロシア・イギリス大使(2000~2004年)、コロンビア大学の名誉教授で著名なアメリカ人ロシア専門家のロバート・レグボルド氏は、ロシアとアメリカの関係がなぜ最近ここまで悪化しているのかについて、意見を交わした。

 アメリカ社会の目には、シリア紛争がロシアとアメリカの代理戦争に変わりつつあるように映っている、とレグボルド氏。

 この討論会から1週間も経過していない10月3日、参加者の悲観的な見通しを確定させるかのごとく、アメリカ国務省は、ロシアとのシリア問題に関する対話を終了すると発表した。ロシアはこれを受けて、シリア問題でロシアと協力を続けていく上で重要となってくる条件を、オバマ政権が満たせなかったか、あるいは満たしたくなかっただけだと反論した。

 「シリアで起こったこととは、不信感が信頼構築のチャンスをつぶしたということであり、シリアは今や、前に進むことを後押しするような影響ではなく、冷戦の深刻化の一因となりつつある」とレグボルド氏。

 

信用の問題

 ロシアとアメリカがシリアの紛争当事者に完全に影響をおよぼせないことに加えて、ロシアとアメリカの間に十分な信頼関係がないということが、長引く紛争の解決につながり得る理解の妨げとなっている。

 オバマ政権の上級職員が2015年までに出した結論によれば、ロシアはアメリカを各国で政権交代戦略を積極的に推進する国と見なしているという。したがって、ロシアとアメリカは互いの意図について、はなから不信感を抱いてきたのだ。それが特に顕著に表れたのはウクライナとシリアである。

 専門家によれば、シリアとウクライナの紛争とは、ロシアとアメリカが慎重な対応に失敗した場合に、ロシアとアメリカを大っぴらな紛争へと追いやるホットスポットなのだという。「集団的にまず行うべきこととは、状況を悪化させるような行動を避けること。ウクライナとシリアは特にホットスポット。東と西の指導者がもっと良好な関係を望むなら、これらの地域において一定の自制をもってふるまうようにしなければならない」とライン元駐ロシア・イギリス大使。

 ロシア・グルジア戦争が勃発した時にイギリスの国防相を務めていたブラウン氏によると、この戦争が「集団への警鐘」だったが、ロシアも欧米も無視したがったため、将来の紛争の基礎要素になったのだという。

 「この信用と自信の問題に対処しない限り、何らかの対話形式をつくらない限り、少なくとも我々が関与する危険の共通認識を形成しない限り、別のことが起こりそうだと思えた」とブラウン元イギリス国防相。

 

打開するには

 専門家はロシアとアメリカの現在の関係についてかなり悲観的であったものの、両国が共有する共通の課題に集中しながら軌道修正していく余地はあるとの意見だった。

 「共通の利益のある問題をたくさん割り出すことができる」とライン元駐ロシア・イギリス大使は話し、北朝鮮の核問題をあげた。

 「我々がそうであるのと同じように、イラン問題で一緒に活動できるし、北朝鮮問題で一緒に活動する必要がある。その後で、我々を切り離している問題への対処を始める必要がある。こちらは利益だけでなく、価値観の問題でもあるため、ゆっくりとしか進まないであろうが」とライン元駐ロシア・イギリス大使。

 専門家によれば、ロシアとアメリカの首脳が今ある冷戦時代のような不信感をこれ以上悪化させなければ、以前の絆を取り戻すことも可能だという。だが、ロシアとのシリア問題に関する対話を終了するとアメリカ国務省が決めた今、大きな期待は持てない。