アレッポ、9月27日=
APロシアのラヴロフ外相と米国のケリー国務長官が9月10日に結んだシリア和平合意は発効わずか一週間で破綻してしまった。デイル・エズゾル市近郊での米軍によるアサド軍に対する空爆(9月17日)や、国連の人道支援車列への爆撃(9月19日。欧米はこれをシリア政府によるものと見て非難)を受け、内戦はさらに激しさを増して再燃した。
政府軍と反体制派部隊が再びアレッポをめぐり戦火を交えており、同市は「人道的大惨事」に陥る恐れがある。そんな中、ロシアと米国は、和平を台無しにしているのは相手方の行動であると見なし、互いを激しい口調で非難している。他の西側諸国も米国の主張を支持している。
米国のケリー国務長官は9月29日、ロシアとのシリア和平交渉について、「議論は宙吊りになりかかっている」と述べた。アレッポで戦闘が再開し、米露両国間に不信感が存在する中で、和平への道のりを議論することが無意味になりつつある、と長官。
ワシントンからはこれよりもっと強硬な声明も届いている。先に国務省のカービー報道官は、シリア内戦が続いていることの責任はアサドを軍事支援するロシアにこそある、とした上で、「テロリストらはロシアの都市を攻撃するだろう。ロシアは兵士を死体袋で持ち帰り続けるだろう」とモスクワにとっての帰結を悲観的に描いてみせた。
これにロシア外務省および国防省も激しい表現で応じた。外務省のセルゲイ・リャプコフ次官はカービー発言を「露骨かつシニカルな脅迫」であると規定し、国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は、カービー氏は米国が支援する反体制派は「国際テロ・インターナショナル」に他ならないという認識を語るに落ちている、と述べた。のちカービー報道官は、自身の発言にはいかなる脅迫も込められていない、と強調した。
ロシアNOWは国立人文大学現代東洋学部教授でアラブ専門家のグリゴーリイ・コサチ氏に話を聞いた。ロシアと欧米の相互的非難は激しさを増しており、これが和平プロセスを袋小路に追いやっている。「ロシア側でも欧米側でも、相手との和解を望まず、シリアにおける政治プロセスの再開について話をすることを望まぬ「戦争党」が優勢を占めている」と同氏。
コサチ氏によれば、和平交渉再開の展望は明るくない。シリア反体制派の最高交渉担当委員会の代表者らは「交渉再開は不可能である」と言明している。つまり、蜂起勢力は戦いを続ける構えにある、ということだ。
一方で、コサチ氏によれば、シリアのアサド大統領もそれに劣らず闘争心にあふれている。そして、現在の状況では、モスクワ―ダマスカスのタンデムにおいて主導的な役割を果たすのはアサド大統領の方だ。「シリア政権との関係においては、ロシアは多くの点で潮流に沿って泳いでいる状態」であり、これは極めて不利な状況だ、とコサチ氏。
露経済紙「コメルサント」の国際評論員マクシム・ユシン氏も同様の立場だ。氏はコメルサントFMの放送で、「ダマスカス内の強硬派は『戦争に勝つ』という実現し得ない目標を強情に唱え続けている」と述べた。状況は袋小路に陥っており、アサド側にも反体制派にも軍事的な勝利のためのリソースはない、と同氏。和平以外に道はないのだが、現時点ではどちらにも明らかにその用意がないのである。
米大統領府のアーネスト報道官は9月27日、ロシアの「非生産的な」立場について話した中で、米国とそのパートナー諸国はロシアに対し追加的な経済制裁をかける可能性がある、と述べた。のち英国のジョンソン外相も、スカイ・ニュースの取材に対し、そうした可能性があることを示唆した。
一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、制裁への言及はシリア紛争調停の実情を知る者に「深い困惑」を喚起するものであるとし、制裁という政策にとりつかれても何もいいことはない、と牽制した。
ロシア国立高等経済学院世界政治学部長セルゲイ・カラガノフ氏はロシアNOWの取材に次のように語った。「そうは言っても、欧米が新たな制裁をかけることはないだろう。しかし、せっかく築かれていたロシアとの関係は悪化している」。これまでロシアと欧米のシリアに関する協力は他の領域における協力にも展望を開いてきた。経済制裁の撤回の可能性さえ開きかかっていた。しかし、和平の失敗や相互不信の高まりによって、折角の展望は忘れるべきものとなった。ロシア・ビヨンドのニュースレター
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