プーチン大統領は会議の最終日に、シリア情勢、ロシアの統一地方選、今後の大統領選への出馬の可能性などについて語った=ロシア通信撮影
プーチン大統領と専門家らの対話を完全公開
ロシア、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国などの専門家やジャーナリスト約200人が、会議に出席。プーチン大統領の登場は会議の目玉となっ た。バルダイ会議10年目にして初めて、報道関係者に完全に公開しながら、専門家と対話した。
プーチン大統領の挨拶の大部分は、ロシア国民のアイデンティティー(自己同一性)に関するものだった。「『我々は何者なのか』、『何になりたいのか』という疑問がロシア社会でどんどんふくらんでいる。ソ連のイデオロギーから離れて、今や宗教、文化、民族的なアイデンティティーを自ら規定することなしに前に進めないことは明らかだ。これらがなければ国内外からの挑発に対抗することはできないし、世界的な競争のなかで成功することもできない」。
プーチン大統領はまた、価値観と家族、および同性愛の同一視を否定した。「人間社会の危機はまず、その生殖能力の損失がある時に叫ばれる」。
2018年以後について「あり得る」
今後の大統領職については、2018年以降の継続についても意欲をのぞかせた。対談に参加したフランスのフランソワ・フィヨン元首相の質問に対し、「あ り得る」と回答。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は会議後、修辞疑問に対してしかるべき回答をしたにすぎないと述べた。
しかしながら政治学者は、 2018年大統領選挙に出馬する可能性は現実的だと考えている。「この案が検討されていると思う。冗談とは受けとめていない」と社会学者のエヴゲニー・ミ ンチェンコ氏は話す。国家戦略研究所のミハイル・レミゾフ所長も同じ意見だ。
バルダイ会議に出席していた反政権派は、昨年5月にモスクワでデモがあった後に逮捕、立件された参加者の今後について、プーチン大統領に質問を行った。プーチン大統領はこれらの人々に、恩赦もあり得るとした。ただし、すべての裁判と捜査が終わってからだという。
9月8日に行われた統一地方選については、一部地域で違反があったものの、モスクワの投票は正しく行われたと話した。
シリア:「反体制派が使用していた場合はどうなる?」
バルダイ会議の出席者は、注目のシリア問題についても質問。それに対してプーチン大統領は、シリアが化学兵器を廃棄する可能性に触れながら、「シリアは 提案に同意し、ほぼ完成している計画にそって活動をする用意があるように見える」と答えた。「シリアはすでに化学兵器禁止条約に加盟したと考えている。達 成できるかはわからないが、この動きを見ると確信が持てる」。
ロシアと西側諸国が、シリア問題で意見対立を続けていることについてはこう述べた。「アサド政権が化学兵器を使用していた場合の責任について、ロシアは同じことを言い続けている。だが反体制派が使用していた場合はどうだろう。これについて誰も話さないが、反体制派にはどう対応すれば良いのか。これはあり 得ない話ではない。反体制派の挑発行為であると推測可能な根拠がある」。
フョードル・ルキヤノフ氏:「力だけでは国際問題は解決できない」
会議の会場の外でも、多くの重要な問題が話し合われた。市民団体「市民イニシアチブ委員会」の委員長を務めるアレクセイ・クドリン元財務相は、ロシアで経済危機が発生した場合、政治システムが変わる可能性があると話した。「経済危機が起これば、政治に影響が及ぶ」。経済危機を防ぐために、ロシアで正常な投資環境を整える必要があるという。「投資を守らなければならない。まずは国内からの投資を」。
セルゲイ・ショイグ国防省は、新型潜水艦発射弾道ミサイル「ブラヴァ」の事故原因について、不明であることをバルダイ会議で話した。また、2年後に年金生活に入るつもりであること、またシベリアで水力発電所を発展させる考えであることなどを述べた。
専門家らは会議の閉幕にあたり、世界におけるロシアの役割が高まっていることを改めて感じたようだ。シリア情勢を見てもそれは明らかだ。モスクワおよび中央連邦管区のイスラム教の法典解説者で、中央ムスリム宗務局のアリビル・クルガノフ氏も、そのように感じた一人。
外交・防衛政策会議のフョードル・ルキヤノフ幹部会議長は、次のように述べた。「戦争と世界などの重要な国際問題における、大外交時代が戻りつつある。力や圧力で解決することは不可能だ。依然として世界最強国家であるアメリカの経験は、力があっても国際的な危機を解決できないということを示している。それが一部国家の危機ならなおさらだ」。
*ロシア通信、Newsru.com、ヴズグリャド、ガゼータ・ル、コメルサントの記事を引用。
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