巨大な谷が泥沼のように通行人を跡形もなく呑み込むだろう。スラム街を思わせる広大な地域が何千もの小屋で埋め尽くされている。安い自動車整備場や二流のカフェ、無名バンドのリハーサル用スタジオ、バイカー・クラブが立ち並び、無数の車庫が主人の永住の地として利用されている。
上海スラムは首都で有数の大学であるモスクワ大学に隣接しているが、地元の人も外国人も、詐欺が横行し暴力的な襲撃事件(ロシア語)が起きる魔の巣窟には近付かないよう勧告を受けている。当局はこの場所の建物を強制撤去(ロシア語)する決議を出したが、根が深いのか、作業は何年経っても終わらない。
モスクワ南西部の広大な森は、連続殺人犯がここで野蛮な狩りを始めたことで悪評を得ることになってしまった。ビツァ公園の猟奇殺人者(またはチェス盤の殺人鬼)アレクサンドル・ピチュシキンは、鼻歌を歌いながら49人を次々と殺害し、公園内で逮捕された。彼は被害者をウォッカで誘い、公園の茂みの奥へと連れ込んでいた。
警察は2006年に連続殺人犯を逮捕したが、公園から魔のイメージが消えることはなかった。人の姿が見られるのは公園を突き抜ける一本の狭い道だけで、森の中では鬱蒼と茂る草木のために容易に道に迷ってしまう。
木々があまりに鬱蒼としているため、サタニズムのカルト信者ら(ロシア語)が公園の奥に安全な楽園を見出している。地元の住民ですら恐怖を感じる場所に、観光客は近付かないよう勧告が出されている。
コムソモリスカヤ広場の周囲にある3つの駅の一つで下車すると、何も知らない旅行者はありとあらゆる種類の人間の不気味な渦に巻き込まれてしまう可能性がある。ここは警官が少ないこともあり、移民労働者やぶらぶらとうろつく怪しげな男女が集まっている。行き先も分かりづらく、一瞬立ち寄るだけでも人間の渦に吸い込まれてしまう危険がある。ここでは売春婦が白昼堂々通行人に声を掛け、物乞いは競うように注意を引いてくる。交通量も多い。モスクワ旅行でヤロスラフ駅、カザン駅、レニングラード駅で下車する機会があれば、一刻も早くこの広場から離れよう。
ツァリツィノ公園は『ゲーム・オブ・スローンズ』のエピソードを1編撮影できたかもしれないほど美しい。だが地元住民でない限り、公園の宮殿の裏の茂みには絶対に近付かないほうが良い。公園の広大な(安全な)芝生から森に向かう道が伸びるが、森の中は叫び声や騒音に満ちている。鬱蒼とした森の中のいたるところで男たちがバレーボールやバーベキューをしたり、ぶらついていたりする。目的もなくここを彷徨えば、森の“定住者”に遭遇してしまう危険性がある。
街の中心から程近いところに、モスクワの樹木園がある。樹木園の北側には湖かと見紛う巨大な池がある。この池は大庭園池と呼ばれている。
一日のほとんどの時間は至って健全な場所だと言われるが、例外がある。「晩になると酔っ払いたちが池のそばのベンチを占領します。彼らは暴力的でも攻撃的でもありませんが、あまりに泥酔してよく失禁しています。このせいでここの景観は陰鬱になり、元通りになるには朝まで待たなければなりません」と池の近くに勤めるモスクワ在住のオリガ・グリゴリャンさんは話す。
モスクワ旅行でこの池を訪れるなら、日中に限ろう。さもなくばこの場所は拭い去れない悪い印象をあなたに与えかねない。
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