スラヴ民族の間ではバンをたくさん合わせた形のパイが作られ、地方によっていろいろな名前でよばれていた。ウラル地方ではラズボールニクと呼ばれることが多く、これはロシア語で「切り分けることができる」という意味だ。このパン菓子は、カモミール及びユナイテッド・ファミリー (家族の絆)パイとしても知られており、これらの呼び方もいくつかのバンはつなぎ合わせられている形状から来ている。
このパン菓子はとてもロシアっぽいものだと思われているが、どちらかと言えばよりヨーロッパ的なものである。ボヘミアやオーストリアの伝統的なロールパンであるブフテルンにとても似ている。おそらくこのラズボールニクはヴォルガ・ドイツ人が作り出し、エカテリーナ2世の時代に彼らがロシアに呼び入れられたときに持ち込んだのだろう。
純粋なブフテルンはとてもラズボールニクと形が似ているが、中にはプラムジャムが入っていて、クリーミーなバニラソースで食べる。しかし、ロシアでは、このパイには、甘いものだけでなく、魚、挽肉、卵入りの分葱なども使う。甘いフィリングでロシアでもっとも人気のあるのはなんとキャンディである。チョコレート、キャラメル、ファッジなどどんな種類のキャンディをそれぞれのバンに詰めて焼けば良い。オーブンで焼くうちに詰めたキャンディが溶けて滑らかで美味しいフィリングになる。
もちろんジャムや茹でた練乳(ロシア風ドゥルセ・デ・レチェ)、ポピーの種のペーストを使うことも多いが、ラズボールニクに使うフィリングの唯一の決まりは、漏れ出さないだけの粘り気があればいいということ。さらにいろいろなフィリングをこのパイに使えば、素晴らしくサプライズ的なものになる。それぞれのバンに違ったフィリングを入れるとどんな味のバンなのか分からず楽しい。
ここではもっとも伝統的な作り方を紹介しよう。濃厚なアプリコットジャムを使った、ふわふわのバンと甘酸っぱいフルーティーなフィリングの組み合わせはこの上なく美味しい。
1. イーストを使った生地を作る。ボウルに室温に戻した牛乳、塩、砂糖を入れる。卵を泡だて、2/3を牛乳の入ったボウルに加える。残りは焼く前に生地に塗るので置いておく。
2. 別の大きめのボウルに小麦粉とイーストをふるい入れ、細かくしたバターを入れる。粉っぽい状態になるまで手でこね、真ん中にくぼみを作る。
3. 中に牛乳を注ぎ、牛乳と生地をゆっくりと合わせる。しっかりした生地になったら、打ち粉をした作業台の上に移し、手またはミキサーで7分から10分こねる。必要に応じて、大さじ1程度の小麦粉を加えてもよい。
4. 生地を丸くまとめ、薄く油を塗ったボウルに入れ、ラップで覆い、温かい場所に1時間置いておく。
5. 生地が倍か3倍程度に膨らんだら、そっと押して空気を抜き、パイの形にする。
6. 生地は15〜17個に等分し、それぞれを丸い球状にしたら、ラップをして10分ほど休ませる。
7. 次に丸めた生地を一つずつ、手で上から少し押さえ、真ん中にスプーン山盛り1杯のフィリングを置く。端をしっかりと止め、継ぎ目がないようにする。繰り返す。
8. 天板に乗せる前に、香りのない植物油を限りなく薄く塗る。バンからパイをはずしやすくなる。
9. パイをラップで覆い、さらに15分膨らませたら、残った卵を表面に塗り、160℃のオーブンで30分から40分焼く。
10. 表面がきつね色になり、中まで火が通っていたら出来上がり。粗熱をとり、アイシングシュガーをふりかけ、サーブする。
プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)
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