ロシアの乳製品のすべて

ロシア料理
アンナ・ソロキナ
 リャジェンカとスネジョークの違いは何? どうしてロシア人はケフィールにイノンドを入れるの? このガイドを読めば、もうロシアのスーパーマーケットの乳製品コーナーで迷うこともなくなる。

 ロシアはすべての乳製品ファンにとって楽園だ。ここでは数えきれないほどの乳製品が見つかるが、その多くは皆さんを驚かせるかもしれない。

1. 牛乳

 ロシアの牛乳はいかがだろう。ここでは、地元の小さな店でも日持ちのするパック入りの牛乳や、2、3日しか持たない新鮮なホールミルクを買うことができる。ロシアの牛乳は大抵0.1~6パーセントの乳脂肪分を含んでいる。またこの国では、人気の無乳糖牛乳、豆乳、ココナッツミルク、アーモンドミルク、ライスミルクも見つけることができる。店舗で販売されている牛乳はすべて低温殺菌されているが、生乳が見つかる市場もある。

 牛乳のほか、ロシアの農家によっては山羊の乳も生産しているところもある。さらに、コストロマ州ではヘラジカの乳を試せる。

2. ベイクドミルク

 ベイクドミルク、あるいはトプリョノエ・ミルクはスラヴの伝統的な飲料で、他の国々ではほぼ知られていない。ベイクドミルクはベージュ色をしていて、味は滑らかで、通常の牛乳より長持ちする。牛乳を沸騰させずに長時間加熱することで作られる。かつては粘土製の壺の中に入れたオーブンで丸一日かけて作られた。

3. コンデンスミルク

 甘いコンデンスミルク(ズグシチョンカ)の生産は19世紀に遡る。第二次世界大戦中は主に兵士用に缶詰のズグシチョンカが生産されたが、1950年代に一般市民向けの大量生産が始まった。以来、缶詰の甘いコンデンスミルクは、ロシアの食糧備蓄に常に保たれている。ズグシチョンカはたくさんのデザートに用いられる。また、煮沸されたタイプもある。 

4. サワークリーム

 サワークリーム(スメタナ)はロシア料理の重要な具材の一つだ。スメタナはふつう乳脂肪分10〜58パーセントの栄養価の高い食品である。脂肪分の多いクリームから作られるこの調味料は、この国では(マヨネーズと並んで)大変人気がある。ここではスープからデザートまで、ほとんどすべての料理がスメタナとともに提供される。

5. スリフキ

 牛乳と同じく、ロシアのクリーム(スリフキ)はパック入りか、より消費期限の短い透明の瓶入りの生クリームとして手に入る。ロシアのクリームはふつう乳脂肪分が10〜35パーセントだ。スリフキの成分は本来牛乳だけだが、ソース用の特別なクリーム(粘性を高めるため生産者が澱粉を入れることがある)を買うこともできる。

6. トヴォログ

 トヴォログに似た外国製の品を見つけようにも、やはり砂糖や塩を使わずに作られたざらざらしたトヴォログを売っているロシアの店舗でしか見つからない。通常カッテージチーズと訳されるこの製品の外見は、ロシアの「ホームメイド・チーズ」のようでもある。ホームメイドのチーズは塩の風味の利いた脆くざらざらした固体だ。

 クリームやジャムが加えられた、無塩タイプもある。このソフト・トヴォログは、クワルクやカードに似ている。レーズンと砂糖を加えれば、チョコレートのかかった一口サイズのトヴォログの基となるカードの固体ができる。ロシア料理には、例えば手軽なヴァレニキから、トヴォロージニクまで、トヴォログを使ったレシピがたくさんある。

7. ケフィール

 ケフィールは善玉菌とイーストとを配合した粒子を含む発行乳飲料だ。幼稚園や病院の食事で出され、減量を目指す人々(方法はこちら)が、イノンドやパセリなどの野菜をたくさん入れて飲む。ロシア人はこの飲料を、シャシルィクをマリネにしたり、ブリヌィや冷製スープのオクローシカを作ったりするのにも用いる。ビフィズス菌を増強したケフィールはビフィドークと呼ばれ、ロシアの食卓でしばしば出される。 

8. リャジェンカ

 リャジェンカはベイクドミルクを弱火で数時間煮ることで作られる。家庭で作るロシア人も多く、サワークリームとと混ぜて一晩寝かせる。他の発酵乳製品同様、体重のコントロールを目指す人々にぴったりの健康飲料だ。 

9. ヨーグルト

 ロシアではブルガリアヨーグルトが大変人気で、さまざまな種類のものが売られている。ここでは、乳脂肪分、濃度、サーモスタットのタイプなどが異なるいろいろな飲むヨーグルトを見つけることができる。ところで、ロシアのヨーグルトは牛乳からだけでなく、山羊の乳からも作られる。「自然の」味のほか、ロシアには砂糖やベリー入りの甘いヨーグルトもたくさんある。

10. マツン

 このコーカサスのヨーグルト料理は、ロシア南部やジョージア、アルメニアで人気があるが、「長寿の蜜」として知られている。マツンはコレステロール値を下げ、消化を助け、血圧を下げ、老化を防ぐと考えられている。

11. カトィク

 バシキール料理の興味深い例をもう一つ。カトィクは牛か山羊、羊のベイクドミルクを善玉菌のブルガリクスとともにサーモスタットで発酵させたものだ。この乳製品はかなり濃厚で、スプーンで食べることができる。ロシアでカトィクが広く普及しているのは、タタールスタンとバシコルトスタンだ。

12. クムィス

 これは雌馬の乳で作る伝統的な発酵飲料で、バシコルトスタン共和国、カルムイク共和国、遊牧民の間で人気がある。クムィスはほろ苦い味で、アルコールを少量(3パーセント以下)含んでいる。クワスの味に似ていると考える人もいる。この健康飲料は、本物のスーパーフードと考えられている。新陳代謝を高め、エネルギーをくれる。

13. スネジョーク

 スネジョーク(雪玉)と呼ばれるこの甘い乳飲料はソビエト時代に生まれた。飲むヨーグルトのような味で、しばしばシロップやベリーと混ぜられる。

14. プロストクワーシャ

 煮沸した牛乳にサワードウ(ふつうはサワークリームかケフィール、あるいは黒パンのくずも)を加えて冷ますことで作られる発酵飲料だ。プロストクワーシャ(サワーミルク)には他の発酵食品ほどの酸味はない。1日しか持たないので、早めにお召し上がりを。

15. ヴァレネツ

 シベリアに古来伝わるこの発酵ベイクドミルクは、リャジェンカの兄と言える。製法は似ているが、ヴァレネツを作るにはより脂肪の多いミルクと、酵素としてより多くのサワークリームを必要とする。このためヴェレネツはより濃厚で栄養価も高い。かつてロシア人はティータイムによくこれを出した。

16. パフタ(バターミルク)

 この飲料はバターミルクに似ている。バターを攪拌して脂肪を取り除いたクリームだ。パフタはそのまま食べるほかに、健康的な低脂肪チーズやその他の発酵食品を作るのにも利用される。

17. アツィドフィリン

 ソビエトの技術者らが開発した発酵乳飲料だ。これを作るために、彼らはラクトバチルス・アシドフィルスという、胃酸でも死なない極めて抵抗力の高い善玉菌を用いる。一旦人間の腸内に入ると、この細菌は悪玉菌に取って代わる。ケフィールとヨーグルトを混ぜたような味がする。同じ善玉菌が、ビオラクトと呼ばれる小児用発酵食品にも用いられている。

18. アイラン

 牛か山羊のミルクから作る塩味の飲料で、ロシア南部の諸地方で人気がある。

19. タン(ドゥーグ)

 これはコーカサス地方特有の、香辛料の利いた炭酸牛乳だ。胡椒とミントで味付けしているため、味はかなりきつい。試す価値あり!

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