東方経済フォーラムで聞かれたさまざまな発言のなかで最も目立ったものの一つが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の提案だ。大統領は、年末までに前提条件を付けずに平和条約を締結しようと提案した。
「我々は70年にわたって交渉してきた。晋三はアプローチを変えよう、と提案した。よろしい、変えよう。平和条約を今すぐではないにせよ、年末までに結ぼう。何ら前提条件を付けずにだ」。プーチン大統領はこう述べた。
「その後で、平和条約にもとづいて、我々は友人として、争点になっているすべての問題の解決を続けよう。そうすれば、我々があらゆる問題を解決するのが容易になるだろう」。大統領はこう付け加えた。
これに対して日本の安倍晋三首相はこう述べた。南クリル諸島(北方四島)での共同経済活動が、相互の信頼醸成と平和条約締結の解決につながる、と。
サハリン州のオレグ・コジェミャコ知事は、タス通信のインタビューでこう説明した。
サハリン州における国からの支援は、経済特区「先行発展領域(TOR)南クリル」を含め、日本その他の投資に対し――――最大限快適な環境を生み出すことを可能にしていると。そのうえで知事は、現在、南クリル諸島第3回ビジネスミッションの準備が進められていることに言及し、日本のビジネスが同諸島に進出するかどうかは、日本の経済界の決断次第であると強調した。
「これは日本の経済界の決断による面が大きい。我々ロシア側は、同地にあらゆる条件を既に設けている」。コジェミャコ知事はこう述べた。
サハリンと北海道を結ぶ橋を建設するプロジェクトは、黒字になり、十分に元が取れるだろう。今のところサハリンでは、一連の製品の価格は、大陸のロシア本土より数倍も高いが、橋ができれば、それらの価格が下がるから――。ユーリー・トルトネフ極東連邦管区大統領全権代表兼副首相は記者会見でこう述べた。
「橋をかけても元手が回収できないし、そもそもここは交通の便が悪い、距離が長いという人がいる。正直言って、私はまったく別の意見だ。サハリン州では、例えば、建築資材の価格は、本土のそれの2〜3倍もする。州の予算だけとっても、さまざまな施設の建設のために年間で約900億ルーブル(約1510億円)相当もの建築資材を購入している。だから、我々の試算では、サハリンでは少なくとも400億ルーブル(約670億円)以上節約できる」。トルトネフ副首相はこう語った。
サハリン州のオレグ・コジェミャコ知事の考えでは、橋の建設費用は20年で回収できる。知事はこう述べた。
このプロジェクトは、ロシアのビジネスだけでなく、日本企業にとっても、貨物の輸送費を節約でき、有益である。サハリン州は、投資家の呼び込みを手助けする用意がある――。こう知事は強調した。
一方、潜在的な投資家であるロシア鉄道の代表者はこう述べた。「橋建造プロジェクトの経済効率を試算してみると――極東・シベリアの発展プロジェクトと関連付けての計算だが――、ロシア鉄道が投資した場合、26年間で資金が回収されるとみられる」
これに先立ち、9月12日にプーチン大統領は、やはり東方経済フォーラムで、橋を経由しての輸送量、交通量を推算する必要があると述べた。
サハリンと大陸をつなぐプロジェクトは、橋とトンネルの2つの選択肢が検討されているが、今のところ、ネヴェリスコイ海峡を通す鉄道橋が有力だ。鉄道の総延長は580kmとなる見込み。付加価値税を除いたプロジェクト全体の費用は5403億ルーブル(約9100億円)で、そのうち橋自体は2528億ルーブル(約4250億円)。
日本のプロジェクトによる、ヴォロネジの「地上を走る地下鉄」プロジェクトへの投資額見積は、約300億ルーブル(約500億円)だ。東方経済フォーラムでのタス通信のインタビューで、建設・住宅・ユーティリティ省のアンドレイ・チビス次官が述べた。
「現在、露日双方が協力している重要なプロジェクトは、ライトレール(輸送力が軽量級である都市旅客鉄道)の公共輸送システム。ヴォロネジの人口は100万人強だから、輸送システムの発展が必須だ」と次官は強調した。
中量軌道輸送システムのプロジェクトは、移動の便利さの原則に基づいて地域の再開発を行う。この原則は、乗客が「継ぎ目のない」移動、乗り換えを行い、車両からすぐに公共スペースに出られるようにするもの。
「このプロジェクトが官民パートナーシップの枠組みの中で実施されることは間違いない。すべて順調にいけば、ロシアの他の都市でも行える、反復可能な解決策になるだろう」。チビス次官はこう締めくくった。
極東の沿海地方政府は、日本の三井物産との協力に関する覚書に調印。その枠内でポポフ島に合計600キロワットの風力発電所を設置する計画だ。この島は、ウラジオストクから20㎞の地点に位置。日本海のピョートル大帝湾内のイェフゲニー諸島のなかにある。
プロジェクトが成功裏に実施された場合、投資家は、沿海地方の電力供給源から遠い他の地域で同様の施設を建設する可能性について分析する。
さらに、複数の日本企業がサハ共和国北部に別の風力発電所を建設することに関心をもっていることも分かった。フォーラム最終日に、サハ共和国と日本の三井物産(株)、駒井ハルテックとの間で覚書が調印された。
その枠内で日本のパートナーは、ニジネコルイムスキー地区のチェルスキー村に、最大300キロワットの風力発電装置3基(寒冷地仕様)を設置する可能性を検討する。
株式会社「科学とイノベーション」(ロシアの国営原子力企業「ロスアトム」の科学部門)と、日本原子力研究開発機構(JAEA)とは、放射性廃棄物の処理と管理の解決に役立つ情報交換に関する協定を結んだ。
マイナーアクチニドの核変換技術は、廃棄物の体積と放射性毒性を大幅に低減させ得ると指摘されている。
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