アメリカが課した新たな経済制裁

クリミア半島を結ぶケルチ海峡の橋の建設=

クリミア半島を結ぶケルチ海峡の橋の建設=

ヴィターリー・ティムキフ撮影/タス通信
 アメリカは1日、新たな対ロシア経済制裁を発動した。対象になったのは、クリミアまでの橋を建設する会社、ロシア政府に批判的なラジオ局、五輪プールなど。

 新たに制裁対象に加えられたのは、ロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」の子会社や、ロシア本土とクリミア半島を結ぶケルチ海峡の橋の建設業者、複数の大手造船会社など。

 アメリカ財務省のウェブサイトで公開された情報によれば、新たな対象となったのは、あわせて個人17人、法人100社強。

 「制裁プロセスの論理は、アングロサクソンの定義において、制裁圧力を徐々に強めることである。この文脈から、新たな制裁は十分論理的に見える」と、ロシアの証券会社「オトクルィチエ・ブロケル」最高経営責任者マクロ経済顧問のセルゲイ・ヘスタノフ氏は話す。

 1日の発表の後、クリミアの橋の建設下請業者「モストトレスト」は、100億ルーブル(約150億円)の募債を延期した。モストトレストは延期理由を説明していない。

 

制裁対象者は

 制裁対象の法人の中でも数で目立っているのは、ガスプロムの子会社。この中には、ガス生産会社「ガスプロム・ドブィチャ・ウレンゴイ」なども含まれている。また、分野の異なるメディア・ホールディング「ガスプロム・メディア」も対象になっている。このホールディングの傘下に、政府に批判的なラジオ局「エコー・モスクワ」があることは興味深い。アメリカの企業はこれらの企業に、返済期間60日以上の融資を行うことができなくなった。

 ガスプロム自体も、ガスプロムの海外にある商社も、制裁の対象にはならなかった。ロシアの経済紙「コメルサント」がこれを伝えている。ガスプロムについては、大陸棚のガス採掘設備をアメリカ企業からロシアに納入することを禁じる、分野的な制裁が先に行われているのみである。一方で、石油子会社「ガスプロムネフチ」は制裁対象になっている。アメリカ企業は長期融資を行うことができない。

 いわゆる「SDNリスト(アメリカ財務省特定国籍業者リスト)」に加えられた企業への制裁は、はるかに厳しくなる。このリストに掲載されている企業と、アメリカの法人や個人は取り引きできず、またアメリカ国内のその企業の資産は凍結される。

 今回SDNリストに追加されたのは、クリミアまでの橋の建設に関わる会社。今年3月に総額969億ルーブル(約1454億円)の契約を請け負ったモストトレストや、橋の設計業者であるサンクトペテルブルクの「ギプロストロイモスト」研究所がここに含まれる。アメリカ企業はまた、ロシア北部アルハンゲリスク州にある船舶修理所「ズヴョズドチカ」や、クリミアの造船所「モレ」および「ザリフ」といった、一部の造船会社との取り引きを禁じられた。

 

市場の反応は

 新たな制裁はガスプロムの活動には影響しないと、ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長は2日、第2回「東方経済フォーラム(EEF)」(9月2~3日、ウラジオストク市)で話した。ガスプロムはこれまで通り活動し続けるだけだと、ロシア「タス通信」に伝えた。ミレル社長は先に、海外で調達する設備が全体の5%にすぎないことを明らかにしていた。「ロシアの主要な株式市場の指標であるRTS指数は、アメリカから新たな制裁があったにもかかわらず、プラスになっている」と、ロシアの商業銀行「ロコ・バンク」のアンドレイ・リュシン副総裁は話す。シリア問題でアメリカと近々合意するかもしれないというウラジーミル・プーチン大統領の主要20ヶ国・地域(G20)首脳会議(9月4~5日、中国杭州)でのを受けて、投資家はロシアと欧米の早期和睦に期待しているという。

 ヘスタノフ氏によると、新たな制裁自体は深刻な結果をもたらすものではないが、アメリカの政治プロセスの論理にしっかり収まっているという。

 1980年モスクワ夏季五輪の会場となった屋外プール「チャイカ」が、今回の制裁の対象になったことは興味深い。アメリカ財務省によれば、プールは国営銀行「VTB」の傘下にある。「制裁がプールの営業にどんな影響をおよぼすのかわからない。入場券をドルで販売することが禁じられる模様」と、VTBのアンドレイ・コスチン総裁はEEFで話した。