欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長=
ロイター通信近く、フランスの元老院(上院)は、対露制裁の段階的縮小に関する決議を審議する。先に、ハンガリーとイタリアの代表は、考えられる制裁緩和について発言した。また、2016年6月には、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長とイタリアのマッテオ・レンツィ首相が、ロシアの主要な経済的出来事とみなされるペテルブルグ国際経済フォーラムに出席するが、ロシアの新聞「コメルサント」は、両氏の訪問のテーマの一つは考えられる制裁緩和であるとしている。
本紙は、西側諸国との相互制裁の撤廃もしくは部分的緩和がロシア経済にとって如何なる結果をもたらすかについて、専門家らの意見を聞いた。
2014年末、外交的緊張の圧力の下、ロシアの中央銀行は、国内通貨ルーブルの為替レートの自由化を決定した。それまで、ルーブルのレートは、中央銀行が毎日設定する変動幅によって定められていた。
中央銀行の説明によれば、クリミアのロシアへの編入後、投資家らは、ロシアから資産を引き揚げはじめ、その結果、ルーブルは、先例のない圧力に晒された。ルーブルに対する圧力のもう一つの原因は、油価の下落である。その結果、ロシアの通貨は、米ドルおよびユーロに対して、およそ60%価値を失った。会社グループ「フィナム」の金融アナリスト、チムール・ニグマトゥリン氏は、「制裁の撤廃もしくは大幅な緩和は、地政学的リスクの軽減によりルーブル高をもたらす」と語る。
一方、ルーブルの下落は、輸入製品の値上がりをもたらし、欧米からの食料品の輸入に対するロシアの制限は、消費財の値上がりを招いた。2015年、ロシア国内のインフレ率は、12,9%と数年ぶりに二桁台を記録した。多くの点で、その原因は、EU諸国、米国、豪州からの食料品の輸入を禁じたロシアの対抗的制裁にある。
チムール・ニグマトゥリン氏によれば、輸入品の回帰によって値上がりに歯止めがかかり、ひいては、ロシア市場への外国投資が増加する。
ロシアのタス通信は、ロシア統計局のデータによれば、今のところ、ロシア国内のインフレ率は、5月には0,4%、年初からは2,9%、年率では7,3%である、と伝えている。
外国のメーカーが回帰する場合、ロシアの農業市場における競争は、にわかに激化する。
分析機関ThetaTradingのドミトリー・エデルマン代表は、「市場および経済に対する効果は、それらの画期的決定がいつ採択されるかに左右される。遅ければ遅いほど、通貨や市場にとっての好い効果は薄れ、輸入代替生産にとっての悪い効果も弱まる」
長いこと、ロシアのビジネスは、まず第一に西側の会社に依存してきた。最大の石油会社である国営企業「ロスネフチ」の主なパートナーは、アメリカのエクソンモービルであり、両社は、大陸棚での石油採掘プロジェクトを共に推進してきた。
制裁導入の結果、協力の規模は、急激に縮小し、一部のプロジェクトは、打ち切られた。たとえば、クリミアがロシアへ編入された2014年の上半期、ロシアの石油・ガス企業は、一年前を82%下回る35億ドル(約3740億円)しか西側の銀行で借りていない。EUおよび米国との相互制裁の後、中国が、西側のパートナーの代わりとなるはずであった。しかし、中国の銀行と関係を築くことは、そう簡単ではない。ロシアの大手企業のうち、「ノリリスク・ニッケル」のみが、48億人民元(約780億円)のシンジケート・ローンを誘致した。
西側の市場が開放された場合、ロシアの会社は、かなりすみやかに西側資本の市場へ復帰し、欧米のパートナーとの協力を軌道に乗せる。
2016年5月にロシア財務省がユーロ債の発行に踏み切り、発行が一日延長されたものの主にアジアではなくイギリスのバイヤーが債権の購入者となったことは、注目に値する。
ロシア通信がスカイスキャナー社の予約状況のデータを引用して伝えるところでは、地政学的な制裁およびルーブルの下落により、ロシア国民の大半(52%)は、ロシアの保養地で休暇を過ごす計画であり、そのうちの15%は、クリミアを休暇先に選んだ。
ちなみに、イタリア、ブルガリア、モンテネグロといった最も人気のある外国でさえ、ロシアからそこを訪れる予定の人は、全体の4%にすぎない。スカイスキャナー社は、制裁撤廃およびルーブル高の場合には、ロシア人が、また欧州の保養地を目指すものと予想している。
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