シャラポワ薬物問題、責任は誰に

マリア・シャラポワ選手=

マリア・シャラポワ選手=

AP撮影
 2016年以降使用が禁止されていた薬物で、ロシアの複数の人気スポーツ選手が資格停止に追い込まれそうだ。

 メルドニウムという薬物がある。1975年、ラトビアのイワル・カルヴィニシ博士の開発した薬品「ミルドロネート」の主成分だ。世界反ドーピング機関(WADA)により、2016年1月1日以降の使用が禁止された。にも関わらず、多くのロシア人スター選手が、使用を続けた。

 先日、女子テニスのマリア・シャラポワ選手(28)が「検査で陽性反応が出た」と発表し、世界的なセンセーションとなっているが、他の選手にも禁止薬物は見つかっている。五輪王者のエカテリーナ・ボブロワ(25、女子フィギュア・アイスダンス)やセミョーン・エリストラトフ(25、ショートトラックスピードスケート)、世界王者のパヴェル・クリジュニコフ(21、スピードスケート)、欧州王者のエカテリーナ・コンスタンチノワ(20、ショートトラックスピードスケート)、ユニバーシアード2冠のアレクサンドル・マルキン(25、ボブスレー)など、様々な種目で違反者が見つかっている。資格停止期間は最短4ヶ月、最長で4年だ。

 

医師の怠慢?

 ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、又しても巻き起こったドーピング・スキャンダルについて、「責任は医師とコーチにある」としている。「我々は半年も前に全員に説明を行なった。連盟、コーチ、医師らは、もっと責任感を持たねばならない」。Rスポーツ紙が伝えた。

 大臣はまた、禁止薬物リストが更新されたことに、専属の医師らが気が付かなかった可能性がある、との考えを示している。人員の交代が激しく、WADAの新基準をフォローし切れない、というのである。

 この見解に同意するのはロシア国立体育・スポーツ、青年・観光大学(SCOLIPE)付属スポーツ医学研究所のアンドレイ・スモレンスキー所長だ。ソ連・ロシアを通じて十指にあまる五輪チャンピオンを育てた同氏は、ロシアNOWの取材に応じ、次のように述べた。

 「メルドニウムの一件は、スポーツ連盟付属医師らの良心の問題だ。彼らは時に、自らの責務に対し、おろそかな態度をとる。WADAの厳しい規則には、絶対的に従わなければならない。メルドニウムは最大3ヶ月にわたり血中にとどまる。ということは、選手たちは10月には使用を止めていなければならなかった。ロシアの医師らは、それをきちんと管理していなかったのだ」

 

役人の監督不行き届き?

 スポーツ当局もドーピング・スキャンダルの報いを受ける可能性がある。ロシア連邦下院議員で元柔道選手(2004年アテネ五輪で銅)のドミトリー・ノソフ氏はロシアNOWの取材に答えた中で、役人たちの有責性を次のように指摘している。「プロのスポーツ選手の誰一人たりとも、主治医なしにいかなる薬品も使用しはしない。そして、医師らの活動については、連盟指導部が監督責任を負うのだ」。ドーピングに関わった連盟指導部が更迭されて初めて、すべての人がドーピングという問題を真剣に考えるようになる、とノソフ氏は語る。

 国際「法イニシアチブ」基金副総裁で著名な法律家であるアリシェル・アミノフ氏は、ムトコ・スポーツ相自身が辞任するべきだ、との考えだ。氏はロシアNOWの取材に応じ、次のように述べた。

 「医師らを束ね、大臣より指令を受け取る、統一センターというものがあり、その勧告に基づいて、各選手に禁止薬物が配られたのである。ムトコ大臣こそメダルと勝利に最も関心を持つ当事者だ。ロシアのスポーツ界の恥をそそぐ最良の方法は、国際機関の参加のもと、独立した、公開調査を行なうことだ。調査終了までムトコは任を解かれていなければならない」

 当のムトコ大臣も、11日、「自分にも責任の一半はある」と述べている。大臣は、危機に対し組織的アプローチを取るよう訴える。「どこがきちんと機能しなかったのか理解し、トップ選手を保護するシステムを構築する必要がある」。インターファクスが伝えた。

 

そもそも、メルドニウムの禁止は妥当だったか?

 一方、ロシア国内では論争が収まらない。メルドニウムを禁止したWADAの決定は果たして妥当だったのか。かつて五輪ロシア代表チーム付きの医師を務めたズラブ・オルジョニキッゼ氏は、メルドニウムの使用は断じてドーピングには当たらない、と言う。

 「メルドニウムに刺激作用はない。あれは単なるカーディオプロテクター(心臓保護剤)だ。WADAがミルドロネートを禁止薬物リストに入れるなら、同じ理屈で、単なる水が禁止される可能性もあるわけだ。水だってある意味で心臓保護剤なのだから」とオルジョニキッゼ氏。

 これと反対の立場を示すのは、スポーツドクターのアレクサンドル・ヤルドシヴィリ氏。サッカーのロシア代表や、CSKAモスクワ、FCロコモティフ・モスクワで勤務経験を持つ同氏は、オンライン紙「ガゼータ・ルー」の取材に応じ、メルドニウムの持つ効果を次のように説明した。「メルドニウムはクレアチンの数を減らし、脂肪酸を合成する。結果、酸素が放出され、それが不足部位に活発に供給される。加えて、マグネシウムを体内で生成し、そのマグネシウムが骨や間接、腱、筋肉、つまり骨格・運動器全体の活動機能を強化するという作用もある」

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