禁止薬物メルドニウムとは

 世界で最もリッチなスポーツウーマンを暫定的な資格停止処分に追い込んだメルドニウムとはどんな薬物なのだろうか?
sharapova
 ロイター通信

 3月7日、女子テニスのマリア・シャラポワ選手(28)は、全豪オープン開催中の1月26日にドーピング検査を受け、陽性反応が出たとのセンセーショナルな発表を行った。シャラポワ選手は、その席で「ミルドロネート」なる薬品に言及したが、その主成分がメルドニウムだ。この薬物は、2016年1月1日から世界反ドーピング機関(WADA)により禁止リストに追加されていた。シャラポワ選手は、「10年前から主治医に『ミルドロネート』を処方されていた」と述べた。

 同じく3月7日には、もう一人のロシアのスポーツ選手、女子フィギュアスケートのエカテリーナ・ボブロワ選手にも、この不幸な薬品に対する陽性反応が出ている。その結果、ボブロワ選手は、アイスダンスのパートナー、ドミトリー・ソロビエフ(ソロヴィヨフ)選手とともに、3月28~4月3日に米ボストンで開催される世界選手権に不参加となった。さる2月には、ロシアの自転車ロードレース・チーム「カチューシャ」のメンバー、エドゥアルド・ヴォルガノフ選手についても、この薬物の使用が明らかにされている。

 ロシアのヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、さっそくメルドニウムについて言及し、「何の役にも立たない」「何の効果もない」などと述べた。

 WADAは、この薬物をカテゴリー「S4」つまり「ホルモン調節薬および代謝調節薬」に分類している。メルドニウム使用に対する資格停止期間は、最大で4年だ。

 

強力な副作用をもつ心血管薬として

 メルドニウムは、ロシアのスポーツ選手の間に極めて広く用いられてきた薬剤で、1970年代半ばにソ連・ラトビア社会主義共和国(現ラトビア共和国)科学アカデミー有機合成研究所で開発されている。医学の現場で使われ出したのは1984年。以来、ソ連のスポーツ選手にとっては、この薬物の服用が事実上必須となった。

 メルドニウムはもともと、心血管疾患の治療用の薬として開発された。その主な作用は、心筋損傷で死滅した細胞の領域の膨張を遅らせることと関連している。また、虚血が生じた箇所の血液循環を改善し、狭心症発作の頻度を減らすことが可能だ。

 だが、この薬物がスポーツ界でもてはやされるようになったのは、別の理由による。メルドニウムは、細胞内代謝を増加させ、ハードなトレーニングおよび心身に大きな負荷がかかる競技において、身体の持久力を高めることもできるからだ。この理由により、WADAはこの薬物を禁止リストに含めた。

 

安価な偽薬?

 とはいえ、現代の医学者たちは、メルドニウムの効果については懐疑的だ。「この薬物はたしかにしばしば服用された。とくに、競走などの、一定の運動が循環してくり返されるタイプの種目では――もっとも、ゲーム的な種目でも使われることはあったが。効果については評価が難しい。単独で使われて効果が追跡できるようなケースが、滅多になかったから。私自身は、とくに意味がないと思うので、使ったことがない。その理論上の効果は、正常な睡眠と良い食事で容易に得られるのだから」。こう語るのは、サッカーのロシア代表チームの医師、エドゥアルド・ベズグロフ氏だ。

 90年代には、メルドニウムの人気はその安価さで説明されてきた。この時期、経済危機の下で選手達が入手できるほとんど唯一の薬物がこれだったからだ。

 「私達は、それを最もハードな循環的運動で用いていたが、私自身は効果は感じた。トレーニングの負荷に耐えるのが容易になり、持久力が高まった」。こう「championat.com」のインタビューに語るのは、ロシアの水泳のガリーナ・シポヴァロワ選手だ。

 

「許しがたい怠慢」

 シャラポワ選手は、禁止薬物の服用をやめなかったのは、不注意でうっかり禁止薬物のリスト更新を見逃したからだとしている。しかし、こうした「怠慢」は、専門家の間では怪訝の念を呼び起こしている。例えば、サッカーの「FСスパルタク・モスクワ」のミハイル・ヴァルタペトフ医療部長は、WADAからの情報には然るべき注意を払わねばならないと言う。「なぜ我々のチームは昨秋から、この薬品『ミルドロネート』が禁止されるだろうことを承知していたのか?別に我々が一番賢いわけではなく、単にWADAのニュースをフォローしていたからだ」。ヴァルタペトフ氏はツィッターにこう記している。

 今回の事件と、4大大会に5回優勝した、元世界ランキング1位のスターに対し、かなり厳しい評価を下しているのは、エフゲニー・カフェルニコフ氏だ(氏は1996年の全仏オープンで優勝している)。「これはとくにシャラポワへの打撃になる。追加の薬物服用でライバルを出し抜こうとした。そういう人間への烙印だ。自業自得だから、自分で解決すればいい」。Rスポーツ紙はカフェルニコフ氏の言葉を引用している。

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