キリスト教は1054年に、東方教会(正教会)と西方教会(カトリック教会)に分裂した。いわゆる「大シスマ」だ。
モスクワ総主教キリル1世(左)とローマ教皇フランシスコ (右)
L'Osservatore Romano/AFPこの事件は、キリスト教の東西の神学的および政治的な差異が頂点に達し、噴き出したもので、差異はそれまで何世紀にもわたって広がっていた。
以来、ローマ・カトリック教会の中心はローマにあり、教皇がその指導者だ。正教会は、現イスタンブール(旧コンスタンティノープル)に精神的中心がある。
東西分裂後最初のコンスタンティノープル総主教は、ミハイル1世キルラリオスだ。コンスタンティノープル総主教は、正教会では、「対等な者のうちの第一の者」とされる。
しかし、正教会とカトリック教会は互いに平和を保っている。
修道士になるための儀式、サロフのセラフィム修道院、ヴォロネジ州
Andrey Archipov/Sputnikカトリックと正教の儀式には多くの違いがある。
最も明白なのは十字の切り方だ。カトリックでは左肩から右肩に、正教会ではその逆に切る。洗礼、クリスマス、復活祭(イースター)の祝い方もかなり違う。また、カトリックと正教は、それぞれ異なる暦で日々を送る。
プスコフクレムリンの至聖三者大聖堂の内装
Komsomolskaya Pravda/Global Look Press正教では、イコン(聖像)は「神の世界への窓」として認識され、そういうものとして崇敬されねばならない。これが、正教のイコン画家が神、聖母マリア、イエス・キリスト、聖人を「リアルな」比率で描かない理由だ。
正教会のドームには3つの形がある。
モスクワのクレムリンにある生神女福音大聖堂のドーム
Uwe Kazmaier/Global Look Pressまず、丸いもの(半球型)は、永遠の神の王国を象徴している。兜の形をしたものは、神のために戦う覚悟をシンボライズ。そして、蝋燭と炎を思わせるものは、祈りと神の国での永遠の命を象徴する。
蝋燭型(ネギ坊主型)のドームは、ロシアに特に適している。この種のドームは、冬に除雪する必要がない。雪はこの形のドームには付着しないからだ。だから、蝋燭型のドームが最も一般的だ。
黄金色のドームは、その聖堂がイエス・キリストまたは正教の重要な祭日に捧げられていることを意味する。青いドームは、聖堂が聖母に捧げられているということ。緑のドームは、聖霊を意味し、通常は聖三位一体または聖人に捧げられた聖堂のいただきにある。銀のドームは、その聖堂に正教の聖人の名が冠せられていることを示す。
聖堂が修道院に属している場合、ドームはふつう黒色だ。黒は修道院における服従を象徴する。モスクワの名高い聖ワシリイ大聖堂のように、一つの聖堂に様々な色のドームがあるのが最も珍しいタイプだ。これは、喜びに満ちた神の国「新エルサレム」を象徴。
正教会には1~33個のドームがある。しかし、単一の教会が4つまたは6つのドームを持つことはない。
聖ワシリイ大聖堂
Legion Media1つのドームは神を象徴している。2つのドームは、イエス・キリストにおける人性と神性の一致を意味する。3つのドームは聖三位一体。5つのドームは4人の福音記者とイエス。7つのドームは7つの秘跡(機密)。9つのドームは天使の9階層。13はイエスとその使徒を表し、33はイエスが人間の世界で過ごした年数だ。
多くの宗教や教会では、聖堂へ行くときは控えめな服を着ることが義務付けられている。いったん聖堂の中に入れば、何ものによっても、敬虔な思念からそらされてはならないからだ。これが女性が正教会の聖堂に入るときに頭を覆う理由だ。
昔、ロシアでは、髪は身体の非常にセクシャルな部分とみなされていたので、既婚女性の髪は常に覆われていた。もっと知りたい方は、これに関する記事をご覧いただきたい。
ロシア正教会の勤行に際し人々が立っていなければならないという厳格なルールはない。教会内には、高齢者、病人、障害者が座るためのベンチがある。にもかかわらず、ロシア正教徒はおおむね勤行中に立つ。それは、時には耐え難いほど長く、2~4時間におよぶ。ただし、ギリシャ正教会では、カトリック教会のように、すべての人が座れるようにベンチと椅子が用意されている。
これはもっぱら伝統によるもので、いくつかの説明がある、まず、ロシア正教会は、すべての信者が精神上のいさおしを行わねばならないという点に、大きな重点を置いている。したがって、教会で祈っている間、信者は休息すべきではない。信者は神を礼拝しているのだから。
また、初期のロシア正教の教会は非常に小さく(主に、冬季に暖気を保つことがとても難しかったため)、ベンチや椅子を置く場所がまったくなかった。
隣人への思いやりに満ちた正しい生活を送っていれば、ロシア正教会の聖人になる可能性がある。また、正教の普及に貢献し、神に忠実に仕え、奇跡を起こしたり、キリスト教の信仰のために殉教した場合も、ロシア正教会により列聖されることがある。
『ムロム修道院の聖人』、17世紀
アンドレイ・ルブリョフ記念美術館正教徒も、カトリック教徒と同じく、洗礼者ヨハネ、聖ニコラオス(ニコライ)を崇拝するが、ロシア正教会にも独自の聖人がいる。最も崇拝されているのは、ラドネジの聖セルギイ、「聖なる愚者」の聖ワシリイなどだ。
この記事では、最も崇敬されるロシアの7人の聖人を紹介する。
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