ロシア人の魂を描いた映画7作品

エリダル・リャザーノフ監督の映画「A Cruel Romance」。モスフィルム、1984年。シーンに写っているのは女優ラリーサ・グゼエワ。

エリダル・リャザーノフ監督の映画「A Cruel Romance」。モスフィルム、1984年。シーンに写っているのは女優ラリーサ・グゼエワ。

Global Look Press
 ロシア的精神を描いたもので、誰も無関心ではいられない作品をご紹介しよう。

1.鶴は飛んでいく (1957)

 第二次世界大戦で前線に赴いた恋人を失った女性ヴェロニカを主人公にした悲劇的なストーリー。彼女は夫の従兄弟と結婚することになるが、その後、恋人の帰還を待つことにしたヴェロニカは従兄弟の元を去る。戦争が終わった後も、彼は不合理な望みを抱いて大いに苦しんだ。映画の最後でヴェロニカはウェディングドレスを身につけ、帰還する兵士たちに挨拶しながら、まだ恋人を探しているのだった・・・。愛と罪と贖いの物語は1958年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した。エミール・クストリッツァ監督はこの作品を「人間の魂を突き刺す真の3D映画だと評した。

2.愛と鳩 (1984)

 このロマンティックコメディーは公開当時、ソ連の配給映画の中でもっとも人気の一作であった。主人公である田舎の男性が保養地にいく機会に恵まれ、そこで都会からやってきた女性と恋に落ちる。しかし男性の家族は彼と離れていることを寂しく感じ、戻ってきて欲しいと頼む(彼が飼っているハトとともに)。そこで彼はどうすべきか悩むが、故郷の景色は彼に多くの選択肢を与えてくれなかった。胸を打つ本当に素晴らしい人々が描かれた秀作。

 3.「Peace to Him Who Enters」(1961年)

 有名なソ連の映画監督、アレクサンドル・アロフとウラジミール・ナウモフの作品。第二次世界大戦末期が舞台で、ソ連軍の兵士がドイツ人妊婦を病院に連れて行く物語。ミッションの責任者であるソ連軍中尉はこの任務を遂行しながら、最後には彼自身が成熟していくのである。戦争神経症のため耳と口が不自由になった別のソ連軍兵士は、同僚を失う原因となった女性を助けるために最善を尽くす。映画は、新しい平和な世界で小さい命が誕生して終わる。

4.「A Cruel Romance」(1984年)

 アレクサンドル・オストロフスキーによって書かれた19世紀の古典的な戯曲「Without a Dowry」が原作であるこの映画は、若い貧しい女性の物語で、彼女は、同じように貧しいのであるが、金持ちの女性を選んだ男を愛してしまう。主人公は愛する男と一緒になれないと分かり絶望する。その後、地方の金持ち男が自分の愛人になるように彼女に言い寄り、彼女はそれを受け入れようとする。しかし、彼女は、以前、愛する人へ見せつけるために結婚を約束した嫉妬深く哀れな男に殺されてしまう。

 死の直前、彼女は選んでしまった侮蔑的な運命から自分を救い出そうとしてくれている殺人者に感謝するのである。

 この緊張感のある心理映画で主人公が愛する男を演じた俳優兼監督であるニキータ・ミハルコフは、主人公が愛した男は、計算高い女たらしではなく、「広い心」を持つ男だったと語っている。この映画には多くのジプシー音楽が挿入されており、監督によると「これによって我々の祖先が好んだ緊張感が生まれている」。この映画には多くの情熱と魂の追求を見ることが出来る。 

5.「狩場の悲劇」(1978年)

 うら若き不幸な女性のもう一つのストーリー。彼女は貧しく、近所に住む3人の男性との関係の中で、愛とお金の間で心が揺れ動く。3人のうちの1人と結婚した彼女は、他の1人ともロマンチックな関係になり、もう一人の男にも愛を告白する。この若い女性の複雑な心理状況は、彼女が新しい夫と踊りながら、愛人と泣いたり笑ったりして過ごした時間を思い起こすという最も有名なシーンに描かれている。終わりは予感通り、悲惨な形で訪れる。3人のうちの1人に殺されてしまうのだ。この映画はチェーホフの長編小説、「狩場の悲劇」を原作にしている。

 ダンス・シーンの耳に残るメロディーは、ソ連、モルドワの作曲家エヴゲーニー・ドガの作である。アメリカのレーガン元大統領がどうしてこの曲に出会ったのかははっきりしないが、この非常に有名なメロディーを気に入っていたと言われている。あるロシアのメディアは彼がこれを「好きな現代曲」(ロシア語のリンク)と言っていたとしている。 

6.「モスクワは涙を信じない」(1980年)

 驚くことに、レーガン元大統領はこの映画にも関係がある。彼はロシア人の考え方を知るために当時のソ連の指導者ゴルバチョフと会う前に何回かこの映画を見たと言われている。

 このアカデミー賞を獲得した映画は3人の女友達の物語である。その中の1人がこの映画の主人公、カテリーナはキャリアを積もうと決心し、大学に入る。もう1人は、モスクワでの生活は大きな宝くじのようなものだと考えており、最後の1人は、建設現場で塗装工として働き、職場結婚する。いろんな障害を乗り越えて、カテリーナは目を見張るキャリアを築き、そして真実の愛を見つける。この相手が映画「鶴は飛んでいく」でヴェロニカの恋人役を演じたアレクセイ・バターロフである。何回もこの映画を見たのはレーガン元大統領だけでなく、何百万人ものロシア人も同じである。主人公のカテリーナや他の登場人物に何か感じるのものがあったのだろう。

7.ロシアン・ブラザー(1997年)

 アレクセイ・バラバーノフ監督による犯罪映画でロシアでは絶対的な支持を集めた。後に続編である「ブラザー2」も制作され、こちらはさらにヒットした。「ブラザー」は軍隊から帰ってきてサンクトペテルブルクの兄のもとに帰ってきたダニーラという若者の物語である。この兄は殺し屋になっていて、主人公も誘い込む。後に、兄は主人公を裏切るのであるが、子供の頃を懐かしく思い出した主人公は兄を許すのであった。

 ダニーラは、正義感が強く、他人をも助ける人物として描かれている、しかし、同時に自分の信念の為には暴力にも訴え人殺しさえ問題としない、タフな男でもある。

 

もっと読む:

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる