『 去年の雪が降った』(1983)
Kinopoisk.ruこの粘土を使ったアニメは、いわば冬の休暇の定番だが、とても風変わりな作品だ。映画の出だしからすでに超現実的なのだ。数分間、2人のメインキャラクターの一人であるナレーターが、弾丸の速度で話題を変えながら、どの物語について話すべきか思案する。
彼は結局、あるおかしな男(貪欲で頭も冴えないが、なぜか魅力的)が、クリスマス用のモミの木を取りに森へ行く話に焦点を当てる。もしモミの木が手に入らなければ、厳しい妻は彼を家に入れてくれない。そう、ロシアではよくある話だ。
あとはご自分の目でご覧頂きたい。これだけ言っておこう。男は王様になったり、人間テレビに変身したり、魔法のモミの木を捕まえたりする。この間彼はずっとナレーターと言い争っている。彼が舌足らずに発音する“マラヴァータ・ブージェト!”(「足りない!」)といったフレーズは、ロシアの民間伝承の不可分な部分となり、またこのアニメ映画の馬鹿げたユーモアは、まさに象徴的でもある。とはいえこの映画を見れば、軽微で哲学的な冬の哀愁を感じることだろう。
アルメンフィルムはエレバン(現在のアルメニアの首都)にあり、ソビエトの映画産業に多くの狂気じみたアニメを供給した。アルメニアのアーティストらが、奇妙な世界と、地上には存在しない生物を描き出していた。すごい、しゃべる魚だ!はこのことを100%保証するものだ。
想像してほしい。貧しい老人がしゃべる魚を捕まえるが、彼はそのまま魚を逃がす(お決まりのパターンだ)。するとどこからともなく非常に奇妙な生物が現れ、“エ・エフ!”と自称して絶えず形を変える。この生物は先ほどの魚とは全く何の関わりもなく、老人を魔法の贈り物で誘惑する。しかしやがて、何事も代償が必要だということが明らかになる。
アルメニアの民族的な伝説に基づくこのアニメは、短く、見て楽しいものだ。しかし劇中には、登場人物があまりに速く話すためにおそらくスローモーションで見たほうが良い場面もある。ロシア人であっても難しいほどだ。
こんな疑問を抱くかもしれない。登場人物が3人しかいない4分のアニメに、馬鹿げたことをどのくらい詰め込めるだろうか? 翼、脚、尻尾から判断するに、答えは“たくさん”だ。3人の登場人物が、砂漠の真ん中をさまようトカゲとダチョウ、ハゲタカだと知れば、さほど不思議でもないだろう。動物たちが劇中ですることは基本的に、体のどの部分が最も重要かを議論することだけ。しかも彼らの競い方はとても奇妙だ。
このアニメはまた、昨年の雪が降ったを手掛けたアレクサンドル・タタルスキーが監督を務めた作品でもある。2つの作品はかなり異なっているが、これら2つをつなぐものがある。ソビエトの人々の心に残ったいくつかのフレーズだ。例えば、ハゲタカがダチョウに飛び方を教えている時に彼はこう言う。「できないなら教えよう! やりたくないならやらせよう!」このフレーズは、社会に対する共産党の態度としてソヴィエトの人々が理解していたものと完全に合致していたため、人々の間で急速に広まった。
この作品は奇妙というより他に全く表現のしようがない。コンタクトは、一人の芸術家がニーノ・ロータのメロディーとともに花咲く牧草地に現れる、完全に黄緑系の色の風景描写で始まる。
病的な笑みを浮かべ、死んだ蝶やカゴに閉じ込められた鳥の鮮明なイメージを持つこの芸術家は、宇宙人なしで十分気味悪く思える。しかし、そこに宇宙人(形が自由自在に変化する塊で、三角形の両目を持つ)が現れ、事態は一層サイケデリックになる。あとの展開は、文字通り、筆舌に尽くせない。
というのはもちろん冗談だ。コンタクトは確かにサイケデリックだが、これは“他者”に対する誤解や恐れ、そして究極的には芸術を通した団結力というテーマを扱った、とても心温まるアニメ映画でもある。間違いなく見る価値のあるものだし、少なくとも一度見たら忘れられないだろう。
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