アニメになったロシア文学作品9選

『降誕祭の前夜』

『降誕祭の前夜』

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 ロシア文学は、ひんぱんに映像化されてきた。例えば、レフ・トルストイの名作『アンナ・カレーニナ』は、長年にわたり、世界中の監督によって約20もの映画になっており、日本の名匠、黒澤明も、フョードル・ドストエフスキーの『白痴』を、日本を舞台に映画化している(1951年)。ロシアNOWは、古典的なロシアの小説や詩にインスパイアされた、隠れた名作アニメーションをご紹介する。

ホラーの古典、ニコライ・ゴーゴリの『ヴィイ』

ビデオ:YouTube / Soyuzmultfilm

 ニコライ・ゴーゴリの『ヴィイ』は、読むのも怖いし、一人で映画を見るのも怖い。ある若い神学生が、金持ちの死んだ娘のために3日間の祈祷をしなければならない…。これが発端だ。

 この物語は、何度か映像化されている。ソ連時代にも現代ロシアにも、映画になっているし、いくつかのアニメもある。

 神学生の祈祷は普通に行われていくのだが、なんと死んだ娘が、突然、魔女になって目を覚まし、仲間の悪魔や魔物を呼び集める…。ヴィイとは、魔物の頭領の名で、魔物のなかでも最も恐ろしく醜悪だ。

 

クリスマスの物語:ゴーゴリの『降誕祭の前夜』

ビデオ:YouTube / tabelta

 ゴーゴリの物語をもう一つ。これは別にホラーではなく、むしろ陽気な話だが、神秘的な要素はふんだんにある。主な登場人物の一人は悪魔で、クリスマスイヴに村にやって来て、月を盗んで空を真っ暗にし、情婦の魔女とあいびきをする。その魔女の息子は若い鍛冶屋で、彼が主人公だ。自分が惚れ込んだ美女にプロポーズを断られて、いったん家にすごすごと帰るのだが、悪魔をとっ捕まえて、サンクトペテルブルクに飛行させる。そして、美女が欲しがっていたような靴を、女帝からもらって、最後はめでたしめでたし。

 

美しいおとぎ話:アレクサンドル・プーシキンの『サルタン皇帝の物語

ビデオ:YouTube / Soyuzmultfilm

 アニメーションは、おとぎ話を映像化するには最高の方法だ。だから、もちろん大詩人プーシキンの作品も、いくつかのアニメがある。最高傑作の一つは、サルタン皇帝の物語 。原作の正式な題名はすごく長くて、「皇帝サルタンと有名な雄々しく勇ましい息子のグヴィドン・サルタノヴィチ、そして美しい白鳥の王女の物語」

 

白鳥はここで深いため息をつき、
こう言った。「なぜ、そんなに遠くへ?
ご存知かしら、あなたの運命の人はここにいるのよ、
なぜって、王女は私なのだから」
ここで白鳥は、さっと羽ばたきし、
波の上を一飛び、
空の高みから岸辺に下り、
茂みに降り立った、
そこで羽ばたきし、身体を振るや、
王女に変身した。
お下げ髪の後ろには月が煌々と、
額には星が輝き、
堂々たる麗しさ、
孔雀さながらに歩み出る

 

哲学的作品:ドストエフスキーの『おかしな男の夢』

ビデオ:YouTube / woodgeor v. 続きはこちらで。

 ドストエフスキーの暗鬱な小説は、多くの映画監督、演出家にも強く訴えかけ、その作品を映画化、舞台化するように促す。昨年はロンドンで、『罪と罰』のロックミュージカルさえ上演されている。とはいえ、こうしたドストエフスキー作品の解釈に、アニメがあるなどとは、ほとんど誰も考えまい。だが、アレクサンドル・ペトロフ監督は、ドストエフスキーのおかしな男の夢の、神経質で自意識過剰な性格を伝えようとしている。

 

短いが強烈:ボリス・パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』

ビデオ:YouTube / Vintage Books

 イギリスのキングストン大学の生徒たちが、アニメの賞をとるために、すばらしいことを考えついた。学生は、古典的なロシアの小説を短いトレーラー(予告編)に変えたのだ。優勝したのは、ボリス・パステルナークの名作『ドクトル・ジバゴ』から、40秒間のトレーラーを作った人。ワシーリー・グロスマンの『人生と運命』、ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』など多くの作品がアニメ化され、受賞した。

 

永遠の贈物「私の言葉を守れ」詩人オシップ・マンデリシュタームの物語のサウンドトラック

ビデオ:YouTube / Noise MC。こちらはサウンドトラック。映画全体はこちらで

 これは、古典的名作の映画化というわけではない。この50分間の映画は、粛正された詩人オシップ・マンデリシュタームの伝記のアニメーション・ドキュメンタリーだ。

 ラップの人気歌手Noise MCが、映画のタイトルにもなっている、マンデリシュタームの詩「私の言葉を永遠に守れ」を使って、映画のサウンドトラックを録音した。

 この映画の詩人は、やや金切り声でしゃべり(ロシアの俳優ヴィクトル・スコホルコフが演じる)、ぎこちない人形のようなグロテスクな表現がなされている。それによって、創造的な人々の陥っていた状況が表されるのだ。

 彼らは、スターリン体制の下で生き、時に検閲され、時に流刑に処せられ、出版を禁止され、殺されさえした。

 ロマン・リベロフ監督は、二人組の作家、イリフとペトロフ(彼らについてもアニメが制作されている)、詩人ヨシフ・ブロツキー、作家セルゲイ・ドヴラートフなどの、ロシア人作家の生涯と作品に関する映画をすでに製作している。

 

悲しい殺害:イワン・トゥルゲーネフの『ムムー』

ビデオ:YouTube / Soyuzmultfilm

 もし、あなたがこのアニメを見て泣かないとすれば、あなたは冷たいハートの持ち主かもしれない…。これは、ゲラシムという名の、聴覚障害の農夫の話で、彼は自分の犬を「ムムー」と呼んでいる。というのは、それが、彼が出せる唯一の音だからだ。しかし、彼の主人である女地主は、犬が大声で吠えるので夜中に目が覚めると難癖をつけ、犬を殺せと命令する。ゲラシムは、犬の首に煉瓦を結わえ付けて、川に沈める…。

 

報いられぬ愛:ニコライ・カラムジンの『哀れなリーザ』

ビデオ:YouTube / Soyuzmultfilm

 この小説は、ロシア文学最初の恋愛小説とされている。センチメンタリズムの恋愛小説がたいていそうであるように、ここでも、愛はそう簡単には幸福につながらない。この物語では、リーザという貧しい農民の娘が、金持ちの青年貴族と恋に落ちる。二人は、白樺林をぶらぶら歩きながらあいびきし、無邪気に抱き合い、唇を重ねる。ところが、男は軍に勤務するために出発しなければならなくなり、自分が実はすでに婚約している身であることをリーザに告白する。彼女はこれに耐えられず、シーモノフ修道院の池に身を投げる。

 

レトロスタイルのSF:ミハイル・ブルガーコフの『運命の卵』

ビデオ:YouTube / Mult tv 

 ブルガーコフは、豊かで奔放なイマジネーションで知られ、それは、1920年代のソ連を舞台とした、悪魔とその仲間の織り成す物語、『巨匠とマルガリータ』や、野良犬の脳を人間に移植して起きる出来事を描いた、『犬の心臓』などで、存分に発揮されている。

 さて、『運命の卵』でブルガーコフが思い描いたのは、ある教授の驚天動地の実験だ。教授は、“赤い光線”を昆虫に照射して、巨大化させる。結局、その巨大昆虫は街を攻撃し始め、人々はそれらと戦わなければならない...。このアニメのタイトルは『忘れ去られた昔』だ。

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