サヴョーロフスカヤ駅の装飾は、公共交通の歴史をテーマにしている。ホームのいずれの壁面にも、4つの暗青色のモザイクがあり、馬車、蒸気機関車、電気多重ユニット(EMU)型電車、および鉄道エンジンを示している。
反対側の壁のモザイクも同じだが、配色が異なる。
メンデレーエフスカヤ駅は、化学好きには大いに受けるだろう。ロシア人化学者たちが、この駅の設計に積極的に参加した。駅の装飾は、元素の周期律表を作成したことで有名なロシアの化学者ドミトリー・メンデレーエフをモチーフとする。
壁面には、分子の電子密度(原子上の電子数)を表した斬新なアートが見られる。ランプは結晶格子を模して設計されており、ホールの端には、メンデレーエフと周期律表のローレリーフ(浅浮き彫り)がある。
さらに、玄関ホールには、すべての野良犬に捧げられた記念碑「思いやり」がある。このモニュメントは、駅に住んでいた犬「マリチク(男の子)」に起きた不幸な事件がきっかけで建立された。2001年に、飼い犬を連れた乗客とマリチクが遭遇して吠え合ったときに、その飼い主がマリチクをナイフで刺し殺してしまったのである…。
これは、モスクワの最も古いサーカスの一つ、「ツヴェトノイ・ブリヴァールのサーカス」の最寄りの駅で、それにふさわしく設計されている。例えば、地下道には、ステンドグラス「サーカスのアーティスト」がある。巨大で色彩豊か、そしてライトアップされている。
ロシアの偉大な作家、アントン・チェーホフの作品を熱愛する人は、チェーホフスカヤ駅を大いに評価するだろう。駅の壁面には、彼の戯曲にもとづくモザイク画が飾られている。ランプは、金属の束が花やドレープ(布の襞)を表しており、それが特徴になっている。
ボロヴィツカヤの駅名は、クレムリンの塔の一つ、ボロヴィツカヤ塔に因んでいる。この塔が駅のすぐ近くにあるので、クレムリンが駅の内装の主なモチーフになった。
ホールの端には、「ソ連諸民族の樹」として知られるアートを見ることができる。これは、モスクワのクレムリンから発展した巨大な「樹」を表している。その枝葉のなかには、中央アジアからバルト沿岸に至る、すべてのソビエト共和国の人々の典型的な姿が描かれ、彼らはそれぞれの民族衣装をまとっている。
この駅のデザインの白い大理石は、15世紀までのクレムリンを象徴している。当時、クレムリンは白い石で造られていた。一方、赤レンガによる背景は、現在の国家を表す。いくつかのレンガの上に、例えば、次のような事物の、素朴で古風な様式によるミニチュアを見ることができる。すなわち、石造りの要塞、海に浮かぶイルカ、大砲、自動車、宇宙飛行士など。
ナガチンスカヤ駅は、壁面のほぼすべてが、モスクワの古代、中世の歴史をテーマとした巨大なアートで満たされている。描かれるのは、クレムリンの建築家、年代記作者、芸術家、戦士たち等々だ。
ナガチンスカヤ駅が、古代・中世のモスクワの建築家を描いていたとすれば、チェルタノフスカヤ駅は、ソ連時代の新しいモスクワの建築家に捧げられている。このテーマの巨大なモザイクを、南側玄関ホールで見ることができる。
この駅は、ロシア海軍の名将、パーヴェル・ナヒモフ提督に捧げられている。ナヒモフは、帆船による最後の大海戦「シノープの海戦」(1853)で、オスマン・トルコの艦隊を撃滅し、決定的な勝利を収めた。これは、クリミア戦争初期の戦いで、トルコの惨敗に危機感をいだいた英仏が参戦するきっかけとなった。
エスカレーターの入り口の上には、提督を描いた巨大なメダリオンがはめ込まれている。また、ホールの反対側には、船首像と錨を含んだ彫刻作品がある。
この駅の壁面は、大祖国戦争(独ソ戦)における、黒海艦隊の基地ヴァストポリの勇敢な歴史を描く。そこには、街の主な名所とソビエト黒海艦隊を表す色彩鮮やかなモザイクが多数ある。
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