一風変わった5つのコレクション

鉋のコレクション=

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 鉋のコレクションでトリップアドバイザーに掲載されることはできるだろうか。ソ連の代議員が使った計算機を保管している人はいるだろうか。ロシアで見ることができる風変わりなコレクションについて取材した。

 芸術研究家たちによれば、何かを蒐集するという流行をヨーロッパからロシアにもたらしたのはピョートル大帝で、17世紀から18世紀にかけてのことだったとされる。その後、大帝に近い貴族たちが影響を受けるようになり、その一風変わった娯楽が裕福な人々の間で人気を博するようになった。裕福な人々の間でというのは、当時は芸術品を蒐集したからだ。

 ソ連時代になると蒐集はエリート層だけの趣味ではなくなった。古銭蒐集家が現れ、若者たちのための「切手蒐集家」クラブなるものが開かれるようになった。しかし貴族たちもピオネールたちも、まさか将来、1500本もの鉋あるいは5000個もの鐘を蒐集する者が出てくるとは想像もしなかっただろう。もちろんロシアのコレクションは、あの有名なオーストラリア人のヘソの綿くずコレクションには敵わないかもしれないが、あれに較べれば、目で見て楽しいものであるのは間違いない。

 

1. 鐘

報道写真報道写真 ロシアには世界でもっとも大きな鐘――鐘の王様(18世紀)――があるというのは有名だ。196トンもの鐘は家に持ち帰ることはできないが、それはある意味よかったと言えるかもしれない。でなければこの巨大な鐘すらペテルブルグのコレクター、ヴィクトル・コロボフさんの家に置かれることになるところだからだ。そんなコロボフさんのコレクションには実に65カ国から集められた4753個の鐘が含まれている。コレクションの中身は船の鐘から機械仕掛けの鐘までさまざまだ。

 「わたしはお金を貯めるということができないんですよ」と打ち明けるコロボフさん、「次々なんでも集めてしまうんです」と話す。コロボフさんは鐘のコレクションのほかにも、数千枚というビニール盤レコードのコレクションを持っているほか、安い市場で集めた中国製の電子機器の蒐集を続けているところだという。

 コロボフさんは15年間で、ロシア最大の鐘コレクションを集めるのに成功した。このコレクションの意義に疑いを持つ暇はなかったという。コロボフさんは言う。「つまらない鐘もたくさんあるけれど、やはり捨てる気にはなりません。重要なのは数で、質ではないのです」

 

2. 計算機

報道写真報道写真 ペテルブルグのセルゲイ・フロロフさんのコレクションも電子機器だ。しかし中国製ではなく、ソ連製のものである。およそ200ものソ連の計算機を蒐集したフロロフさんは「わたしのコレクションは、ソ連で電化製品は生産されていなかったという神話を覆す論拠となるものです」 と話す。

 ソ連の計算機に興味を持ち始めたのは1980年代のこと。科学雑誌で、プログラミングされた計算機B3-34を使った宇宙旅行ゲームの遊び方が説明されていたころだ。フロロフさん自身は医療技術の開発者なのだが、ソ連製のコンピュータやデジタル時計を蒐集している。蒐集品は物置にしまってあるそうで、コレクションの正確な数は本人にも分からないのだとか。

 コレクションの中でお気に入りの品は電子メモ帳「エレクトロニカMK-87」。共産党大会に出席する代議員のために特別に製造されたものだ。フロロフさんは博物館を開設したいと考えているが、現在のところ開かれているのはバーチャルミュージアムだけだ。

 

3. フォーク

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 著名なロシアの料理歴史研究家のパフリョープキンは「19世紀になるまで民衆はフォークというものに猜疑心を持っていた」という文章を残している。フォークは1606年に、偽ドミトリー1世の妻となるポーランドの憎まれ者、マリーナ・ムニシェクによって持ち込まれた。マリーナは偽ドミトリーとの結婚の宴で、これみよがしにこの「異種の道具」を使って食事をした。これが民衆の怒りを買い、その1週間後、彼女の夫は群衆によって殺害されることとなった。(もちろん彼が殺害されたのは、彼が偽りの皇帝だったためであるが、しかしそれでもフォークによる影響について触れないわけにはいかない)

 現代になり、モスクワの東2240キロに位置するモスカレンキという田舎村の年金生活者による大規模なフォークのコレクションがロシアのギネスブックに登録された。コレクターは64歳のアナトーリー・チュプィシェフさんで、その数は731本。25ドル以上するフォークは買っていないというチュプィシェフさんだが、コレクションは妻にも触れさせずに大切に保管しているそうだ。

 

4. コニャック

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 モスクワに住むエヴゲーニー・イグナチエフさんのコレクションは芳しい香りが漂う。そのコレクションとはコニャック、カルヴァドス、そしてアルマニャック。イグナチエフさんが集めたブランデーは総量336.5リットル。結婚式10回分に十分足りる量である。ただし招待客が50ミリのグラスで飲んでくれた場合ではあるが。6730本のアルコール入りミニボトルのために、イグナチエフさんは家の一部屋をまるまる空けたという。

 ブランデーはイグナチエフさんの人生において大きな部分を占めている。というのも、イグナチエフさんはボトルのデザインを手がけていて、定期的にフランスのコニャック地方を訪れてもいる。そして何よりブランデーが好きなのだ。ただ、「量はそれほど飲みませんよ」とイグナチエフさんは但し書きを付け加えている。

 

5. 鉋(かんな)

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 前述の4つのコレクションは博物館にもなっていなければ、世界的に認められてもいない。しかしロシアにはギネスブックに記録されているコレクションが1つだけある。それはエニセイスク(クラスノヤルスク地方)に住む69歳のヴィタリー・イスレンチエフさんが集めた1500本の鉋のコレクションだ。イスレンチエフさんは2008年に蒐集を始め、2014年に「鉋博物館」をオープンした。

 博物館はトリップアドバイザーにも掲載されているが、極めて現代的な施設だ。インタラクティヴ技術はない代わりに、訪問客は気に入った鉋を作業台の上で使うことができる。博物館の修復にかかる費用をイスレンチエフさんはクラウドファンディングで集めている。エニセイスクというシベリアの小さな町を訪れることがあれば是非イスレンチエフさんを訪ねて、マーケティングの機微についてあれこれ尋ねてみるといいだろう。

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