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最も若いパンから始めよう。1930年代にレニングラードで作られたダルニツキー(あるいは単に「黒パン」と呼ばれる)を焼くには、ライ麦と小麦粉を混ぜる必要がある。酵母は使わず、ザクヴァスカ(パン種)を用いる。このユニークなレシピにより、美味しいだけでなく、最も低カロリーのパンの一つになっている。
奇妙なことだが、オリジナルのレシピによれば、ダルニツキーを作るのに使う小麦粉は、最高品質のものであってはならない。というのは、あまりにも柔らかくまた細かく密になりすぎるからだ。ロシアでは、しばしば単に「黒パン」と呼ばれるが、色は黒ではなく、はっきり灰色だと言ってよいだろう。
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ライ麦のパンはいつでも、小麦よりもずっと手頃な価格だった。厳しいロシアの気候では、ライ麦を栽培するほうが簡単だったから。このパンの起源は、ロシアの“心臓”すなわちモスクワで、そこから「ストリーチヌイ」(ロシア語の「首都」)という名前も来ている。形は丸くて、甘酸っぱく、皮は柔らかく、中身は細かい穴が開いていて、やはり柔らかい。
また、ふつうのストリーチヌイの一切れは、他の一般的な種類のパンのそれよりも、量がずっと多くなる。だから、もしあなたが何らかの理由で、パン一切れだけ食べることにした場合は、この特長を利用するといい。
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これは、もう一つのごく一般的なロシアパンだ(名前は、モスクワとサンクトペテルブルクでは違っていて、後者ではブールカと呼ばれる)。小麦粉で作られ、しばしば単に「白パン」と呼ばれる。
ナレズノイの見分け方は、背中に大きな刻み目が並んで入っていること。もう一つ目立つのは両端の部分で、その呼び名は「ゴルブーシュカ」と言う。
ナレズノイは、ロシアのサンドイッチ「ブテルブロード」を作るパンとしては、最も代表的なものだ。そもそも、名前のナレズノイは「ナレーザチ(スライスする)」から派生したものだから、サンドイッチに合っている。
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このパンは、今日にいたるまで儀礼上の意義を持ち続けており、結婚式や葬式に欠かせない。古くから伝わる「パンと塩」の儀礼に使われるのがこれだ(カラヴァイに塩を添えて客を迎える習慣が、ロシアでは古来よりある)。
残念ながら、この儀式では、パンからほんのひとつまみだけ取るので、最後まで食べきらずに終わることが多い。たいていのカラヴァイは、驚くほど美しく、花や木の枝など美麗な飾りを浮き上がらせて焼かれているから、それを考えると実に残念。そして、このパンが円形なのはもちろん、古の時代に遡る特徴だ。かつて、太陽をかたどった、数多くの儀礼的シンボルがあった。Vostock Photo
修道院はしばしば歴史の中で、最も大量に高品質のパンを製造することがあり、中世のザヴァルノイが修道院で生まれたことも、驚くには当たらない。そのユニークなレシピは、酵母もパン種も使わない点にある。特別な「ザヴァルカ」(醸造法)を用いる。このパンはまた、驚くほど長い間、新鮮さが失われず、カビも生えない。モルト(麦芽)を使うため、独特の甘酸っぱさと微妙な風味がある。
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これは、我々のパン・リストのなかで最も神秘的なパンであり、誰もその起源をはっきりとは知らない。一番人口に膾炙している説は、1812年にナポレオン率いるフランス軍とロシア軍が激突したボロジノの会戦にちなむというもの。
この大激戦で、当時34歳の若き勇将アレクサンドル・トゥチコフも戦死したが、死体は見つからなかった。未亡人マルガリータは、夫が亡くなったとおぼしき場所に修道院を建て、後に修道女になった。この修道院のパン製造所でボロジンスキーが生まれた――。
一つ確かなことは、ボロジンスキーがコリアンダーの種で覆われていて、独特の香りがあることだ。
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これは一般のパンではなく、甘いロールパンの一種だと言う人もいるが、それはやや不正確だ。カラーチは、現代のパンではなく、古代のカラヴァイと比較すべきだろう。というのも、カラーチは、豊かな歴史を持ち、その起源は何世紀も前に遡るからだ。だから、このパン・リストを締めくくるにふさわしい。非常に古いものなので、レシピにもいくつかの伝統的な点がある。
形を見ると分かるが、これは素手で簡単に持ち運びでき、お腹のようにポコッと膨らんだ部分がある唯一のパンだ!
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