2015年11月~12月、ロシア各地で低品質酒による中毒の波が起きた。中でも最悪の悲劇が起きたのは、シベリア中部のクラスノヤルスク市。メタノールを含む模造ウイスキーを飲んだ結果、14人が死亡した。
中毒事件後すぐに、地方行政の権利をアルコール含有品の販売管理領域で広げる現行法「販売について」の改正法案を作成するよう、政府が指示を出した。
ロシアの地方は数年前から、アルコールの販売時間および販売拠点を制限し、場合によっては全面禁止さえできるようになっている。
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ロシア全土では、23時から8時までアルコールを販売することが完全に禁止されているが、地方の行政府にはそれをさらに厳格化させる権利がある。例えば、モスクワでは連邦制限のみが有効であるが、サンクトペテルブルクではアルコールを22時から11時まで購入することができない。一部の地方自治体は、アルコールの販売を完全に禁止する「しらふの日」を追加的に設けている。
最も厳しい規則を設けているのは、住人のほとんどがイスラム教徒の、ロシア南部チェチェン共和国。ここではアルコールが午前8時から午前10時までしか販売されておらず、ラマダンの時期になると、アルコールの販売は全面的に禁止される。
チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長はアルコールや酩酊を何度も批判してきたが、完全な禁止にはいたらなかった。「チェチェン共和国でのアルコールの販売の全面禁止は、該当するロシア連邦法がない限り、行われないだろう」と、共和国青年課の専門家アリハン・イスライロフ氏はロシアNOWに話した。
グロズヌイ市の住人であるイサさんは、ロシアNOWの取材に対し、厳格な規則にもかかわらず、人々は飲酒の手段を見つけていると話した。「飲みたければ、車で100キロも走らない隣の共和国のいずれかに行って、アルコールの備蓄を買うことができる。飲む人にとって問題なのは、共和国でアルコールを買えないことではなく、飲む人に対する周囲の人間の受け止め方。だから飲みたい人は、慎ましく、用心深く飲む」
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しかしながら、アルコールの合法的販売の規制は、模造酒の販売増につながりかねない。この中毒者が出ているのである。専門家は、地方の権利を模造酒対策で拡大しようとしているのだと考える。ロシア連邦社会会議のメンバーで、社会組織「禁酒のロシア」のスルタン・ハムザエフ理事によると、禁止するから市場での低品質酒の占有率が拡大するというわけではないという。「模造酒は今、それでなくとも市場の60%を占めている。主な問題は責任。地方の住民の飲酒量を減らす責任を、役人に個人的に負わせる必要があると思う。そうすればもっと効果が出る」
連邦・地方酒市場研究センターのヴァジム・ドロビス・センター長は、現在の法案の主な目的とは、二重用途のアルコール含有液の販売を禁止することだと説明する。「現在それらは、合法的に何時でも販売されている。『香料品』、オーデコロン、薬用浸液などが該当する。これらはアルコールとは見なされていないが、飲まれていることを、誰もが知っている」
ハムザエフ理事は、法案によって、地方の行政が模造酒対策を講じる際に、より迅速に行動できるようになる、と考える。「だからといって改正案の導入の効果がすぐにあらわれると期待すべきではない。これはロシアの反アルコール依存の体系的な取り組みの一部である」とハムザエフ理事。
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