ウォッカはウィスキーに勝てるか

タス通信

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イギリスの市場調査会社「ユーロモニター」のデータによると、2018年までにウィスキーの世界市場での消費量は、ウォッカのそれを上回る見通しだ。ロシア国内でのウォッカ消費量も減っているとはいえ、ロシアの専門家らは、ウィスキーに太刀打ちできるのはやはりウォッカしかないと指摘する。

熾烈な競争 

 ユーロモニター社の調べによれば、世界でのウィスキーの売り上げは、2013年の水準に比べて17%も伸び、量にして、年間で34億8100万リットルに達した。一方、ウォッカの売り上げは0,8%減り、34億2800万 リットルに落ち込んだ。「Drinks International」社の番付によると、世界で一番売れているのは、中国の白酒(パイチュウ)。これは穀物を原料とする蒸留酒で、49億9500リットル。2位は今のところウォッカで、35億リットル、3位はウィスキーで、29億リットルという順番だ。 

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ロシア人の飲酒

 「最近300年間、強いアルコール飲料のなかで、世界で一番人気を誇ってきたのは、何と言ってもウィスキーだ。輸出品でこれに敵うものはなかった。かつてテキーラ酒を売り込もうとしたことがあったが、うまくいかなかった。ウォッカは世界進出を果たせた唯一の酒だ」。こうロシアNOWに語るのは、連邦・地域アルコール飲料市場研究センター所長のワジム・ドロビズ氏だ。

 同氏によれば、ウォッカの世界進出が始まったのは1981年のことで、スウェーデンにウォッカ「アブソルート Absolut」が誕生し、アメリカ市場に参入するや、プレミアムクラスの価格帯で、たちまち人気を博した。「現在米国では、毎年7億5000万リットルのウォッカを飲み干している。これはロシアに次いで世界2位のウォッカ市場であり、しかもこの数年で数倍増となっている。ウォッカは、カクテルでも、ストレートでも確固たる“キャリア”を築いたと言える」。こうドロビズ氏は言う。

 とはいえ同氏によると、ウォッカがウィスキーを猛追しているのは、主に西側のメーカーのおかげであり、ロシア産の貢献度は少ない。2013年に世界で最も売れたウォッカはイギリスのディアジオ(Diageo)社の「スミノフ Smirnoff」で、2億3400万リットル(1年間)、2位は、フランスの「ペルノ・リカール Pernod Ricard」社の「アブソルート」で、1億800万リットルだ(同社は2008年にスウェーデンのこのブランドを獲得した)。

 「ロシアのメーカーは、たかだか年間5000万~6000万リットルしか輸出していないし、それも主に安物だ。おまけに、旧ソ連圏など比較的近辺の国をのぞくとほぼゼロというのが現状。米国への輸出量は年間1500万リットル以下にとどまる」。ドロビズ氏はため息をつく。

 同氏によると、ロシア産ウォッカは、世界市場ではほとんど目立たず、唯一の例外は、ロシアの実業家ルスタム・タリコ率いるロシアン・スタンダード(ルースキー・スタンダート)だという。このブランドの売り上げは、3,6%伸び、年間2400万リットルに達している。

 「ロシアン・ウォッカという概念があやふやになっているのが問題で、今ようやくこれの保護に取り組み始めたところ。今のところ我々は海外勢に負けている」とドロビズ氏。

 

ロシア人の酒量が減った? 

 ロシア連邦国家統計局(ロススタート)のデータによると、ロシア国内のウォッカ消費量は減少傾向にある。とくに今年最初の5ヶ月間に、その傾向が著しく、売り上げは、昨年に比べて4,8%減の5億3900万リットルにとどまった。その一方で、露アルコール市場に占めるビールの割合は37,3%から39,9%に伸びている。

 全体として、ロシア人のアルコール消費量は減っており、今年最初の5ヶ月間の売り上げは、4億9200万リットル(純然たるアルコール飲料のみ)で、1年前より2,5%減少している。2013年度全体をみても、前年より2,4%減っている。

 だが、ドロビズ氏は、露アルコール市場では、合法的な製品は35~40%にすぎないことを考慮すべきだと指摘する。「旧ソ連圏はどこも、ロシアをはじめ、ウクライナもカザフスタンも、市場の半分以上が非合法製品に占められている」

 ロススタートの推算でも、2013年度のウォッカ生産は、12,3%も落ち込んで、8億5700万リットルとなった。

 これを尻目に、世界でのウィスキー消費はどんどん増えている。米国の「強アルコール飲料生産者委員会」のデータによれば、同国内でのウィスキー売り上げ高は、昨年10,1%も増し、6億4300万ドル。一方、バーボンとテネシーの輸出額は、昨年1年間で5%上昇、10億500万ドルと、大台を突破した。

 国別でいうと、米国産の酒類の売り上げが最も急激に増えているのは日本(2270万ドル→1億2080万ドル)、ドイツ(1960万ドル→1億4010万ドル)、フランス(1450万ドル→1億3050万ドル) だ。

 「ウィスキー急成長のカギの一つは、世界の酒造大手がマーケティングに巨額の支出をしていることと、各国の経済成長だ。生活の都市化と社会の分層化が急速に進んでいることが背景にある」。投資会社「フィナム・マネジメント」のアナリスト、マクシム・クリャギン氏はこう説明する。氏の意見では、世界のアルコール市場のトレンドを変えるには、ウォッカ業界が力を結集し、マーケティングに大金を投じねばならない。「世界のウォッカ消費の3分の1は、ロシアでのものだが、露メーカーの世界市場でのシェアは数パーセントにすぎない。しかも、その輸出のほとんどは、旧ソ連などだ。露メーカーがその立場を強化するには、海外市場進出と広告のための投資を著しく拡大することが必須」

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