2020年、ロシア教育科学省のコンテストの結果、世界水準の学術センター「先端デジタル技術」が創設された。その旗振り役となったのがサンクトペテルブルク工科大学だ。センターの主な目的は、世界水準の基礎・応用研究に基づく科学技術の革新を保障し、ハイテク技術の応用法と現代デジタル製品の効率性を新次元に高めるための環境を整えることである。
2020年2月、研究者らは初のロシア製機器「ディアテル」(Диатер)の試作品を公開した。これを使えば、超音波を使って乳腺の良性腫瘍を発見し、除去できる。
この際外科手術は一切必要ない。切開に代わって非侵襲的な手段が用いられる。超音波手術(HIFU:高密度焦点式超音波治療法)は人間にとって切開術よりも危険性が低いと考えられている。新たな癌細胞の出現を誘発せず、全身麻酔も必要としないからだ。
サンクトペテルブルク工科大学「医学超音波機器」研究室のアレクサンドル・ベルコヴィチ室長によれば、この機器は診断スキャナーを使って腫瘍を検出し、専用の変換器で超音波を発して腫瘍を除去するという。
この機器を乳腺や甲状腺、腎臓、肝臓の腫瘍の除去にも応用する計画だ。ベルコヴィチ氏によれば、この機器のユニークな点は、超音波を腫瘍の診断・内科治療・非侵襲的除去という3つの段階すべてに用いることだという。
「ディアテル」を開発したのはサンクトペテルブルク工科大学超音波研究室とシヴァベ(ロステフ)ホールディング・ノヴォシビルスク機器製造工場の専門家らだ。技術試験と臨床試験は2020年から2021年にかけて行われる予定で、その後機器はロシア保健監督庁の承認を経て市場に現れることになっている。
2020年、サンクトペテルブルク工科大学の若き技師らはいくつもの無人機を公開した。中でも特筆に値するのが、浅海域用の無人哨戒艇「サイバーボート330」(CyberBoat 330)だ。
サイバーボート330は万能で、監視や指定水域のパトロール、海底調査を行い、船体の破損を恐れることなく浅瀬を通行できる。代替電源を持つためエコで、メインのバッテリーが放電しても通信が途絶える可能性は低い。
この無人哨戒艇を操縦するのは任務を課してその遂行を見守るオペレーターだが、コンピュータービジョンや障害物回避・針路維持システムを搭載しているため、いかなる状況にも適応できる。他のプラットフォームと共同で作業に当たることもでき、例えば、特定の目標を集団で捜索する際にも活用できる。
サンクトペテルブルク工科大学物理ナノテクノロジー電気通信研究所の専門家らは、キューブサット、つまり極小人工衛星を開発している。この高さわずか15センチメートルのキューブサットは、宇宙研究や自然環境の現状に関するデータを集めるのに必要とされる。
こうしたナノ衛星の応用法の一つが、高性能自動船舶識別システムを宇宙空間に作ることだ。これは船舶の大きさや針路を同定するのに必要である。現在民間の船舶は無線通信装置を搭載しており、地上の基地からデータを得ている。海の真上を飛ぶナノ衛星は、この情報を受信し、地球に転送できる。ナノ衛星は2021年から2022年に地球の周回軌道に乗せられる予定だ。開発はイノベーション協力基金、ロスコスモス、サンクトペテルブルクの諸企業と共同で進められている。
この他、サンクトペテルブルク工科大学では、科学的・技術的・教育的実験を行うための小型衛星を効率的に組み立てるためのプラットフォームも開発されている。
アーク溶接による生産性の高いアルミニウム積層造形を実験する中で、研究者らはユニークな可塑性を持つ金属を得た。このアルミニウムは、標準的な合金と化学組成は同じだが、可塑性、とりわけ破断までの延長可能性が12パーセントから41パーセントと、3倍以上に伸びた。つまり、破損に必要なエネルギーが3倍以上になるということだ。当然耐用年数も長くなる。
「この発見はもの作りに対する見方を根本的に変えるかもしれない」とサンクトペテルブルク工科大学軽素材構成研究室のオレグ・パンチェンコ室長は語る。「金属の力学的な性質には常に伸び代がある。我々の場合、この伸び代が通常よりも何倍も大きいのだ」。
彼によれば、この素材を応用できる最も興味深い分野は民間宇宙産業だという。この分野では研究室にはS7 R&Dセンターというパートナーが存在する。
「この素材は宇宙での負荷に起因する変形に耐えることができ、寿命も長い」とパンチェンコ氏は言う。
サンクトペテルブルク工科大学は、中国の新能源材料技術研究院有限公司と共同で、リチウムイオン電池を基にした電気自動車向け製品を開発している。中国チームのリーダーである王慶生氏はサンクトペテルブルク工科大学の卒業生だ。
専門家らは、ユニークな温度維持システムを使ってトラクションバッテリー用の蓄電池を製作しており、その構造を吟味している。主な目標は、バッテリーの容量を増やし、電気自動車の航続距離を伸ばすことだ。
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