10月半ば、「エノート」(「アライグマ」)という名のロシアの新しいドローン監視システムが韓国へ輸出されることが明らかになった。取引の詳細は明かされていないが、韓露ビジネス協議会のパク・ジョンホ代表によると、「エノート」を選んだのは価格と品質の相関性が最適だからだという。「私たちは、大きな空港や石油基地、発電所の安全保障プロジェクトに取り組んでいる」と同氏は話す。まさにこうした施設が小さな無人機に対する防御手段を最も必要としていると専門家らは考えている。
「エノート」は、モスクワ郊外の企業「エルヴィス」(ELVIS)によって2017年末に開発された。このレーダーは、半径1.8キロメートル以内の小型無人機の動きを追跡できる。大型の移動目標(人間、動物、ボート)ならば、4.7キロメートル離れていても発見できる。システムはコンパクトだ。レーダー自体の重さは僅か14キログラムで、電源とコンピューター、ソフトから成る。レーダーは常に周囲を監視し、オペレーターに目標の座標と速度を示す。「エノート」の主要な開発者、オレグ・ジンチェンコ氏の話では、システムは5秒で目標を発見し、「それからリアルタイム監視が行われる」。さらにジンチェンコ氏は、「エノート」が「国防省で運用されている戦術システムに匹敵する特徴を有する」ものの、民間市場向けに発売されているという点に注意を促す。「エノート」1基の価格は約1000万ルーブル(15万6000ドル)だ。
レーダーの量産にかかる費用は1億5800万ルーブル(250万ドル)で、うち7500万ルーブル(120万ドル)は「産業発展基金」からの負債が占める。同基金のロマン・ペトルツァ理事長は、このプロジェクトを「非常に有望」で「ハイテク国産品の顕著な一例」と評している。すでに複数のロシア企業がドローンの監視のために10基の「エノート」を購入したことが明らかになっている。現在開発者は外国市場を狙っている。「エルヴィス」社のアンドレイ・ピメノフ副社長がロシア・ビヨンドに語ったように、用途は交通、スポーツ、燃料・発電インフラの警護だ。同様の無人機監視システムの大半は軍事用であり、購入や導入に難があると同氏は話す。
「エノート」が望ましくないドローンを発見すると、その後の行動についての判断は保安課に任される。レーダーには、信号妨害や強制着陸など、無人機の操作を制圧するシステムを追加で接続できる。
民間ドローンの無線信号妨害システムは、ロシア市場にはかなりたくさんある。例えば、「ソズヴェズジエ」コンツェルンは、自動ではたらく電子戦用コンプレックス「ソリャリスN」を販売しており、「ロスエレクトロニカ」社には、最大1キロメートル先のドローンを「無害化」し、所有者にSMSで通知した上でドローンを離陸地点に送り返すコンプレックス「アタカDBS」がある。
専門家は、個人の所有する小型無人機は、軍用無人機と同じくらい危険だと考えている。ドローンは空撮をしたり、小型の物体を運んだりできる。これがどのような目的で実行されるのか、分かったものではない。事件・事故の件数は増えている。2019年9月にはオムスク当局の建物に、2018年4月にはウラン・ウデの住宅の壁に、2016年12月にはエカテリンブルクの送電塔にドローンが衝突している。
「普及した手に入りやすい小型のものも含め、無人機による新たな危険の存在は、それらを発見して対抗するシステムの開発を促した」と無人機に関する専門ポータルサイト「UAV.ru」のデニス・フェドゥチノフ編集長は考えている。「近年の航空・防衛関連の展示会を見ると、我が国を含め、無人航空機との戦いに関する提案の量的・質的な成長を指摘できる。」
その上、無人機の問題は法制上のレベルでも解決が試みられている。ロシアでは、重さ250グラム以上のドローンの所有者は、自身のドローンを連邦航空輸送局に登録しなければならない。また、もしドローンが誤って何かに衝突した場合に備えて賠償責任保険が必須で、街の上空を飛ばす場合には当局の飛行許可が要る。
空撮許可を得るためには、煩雑な手続きを経る必要がある。所有者は連邦保安庁、参謀本部、市の当局、さらにはロシア連邦統一航空輸送管理システムで許可を得なければならない。もし空撮対象が自分のダーチャであったとしてもだ。一度の空撮の合意を得るには約2週間かかる。
人が密集する場所(例えば競技場)や空港周辺、建物付近でのドローンの飛行は公式に禁止されている。ロシアでの無許可飛行の罰金は、個人の場合2千~5千ルーブル、法人の場合は最大30万ルーブルだ。重大事故を起こした場合は刑事責任を問われることもあり得る(最大で懲役5年)。
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