エボラ·ワクチンを1年半で開発

ロイター通信
 ロシア当局は1月、エボラ出血熱ウイルスのワクチンを発表した。この病気によって、西アフリカでは1万人以上が死亡している。世界に類のないこの特別な新薬の働き、短期間で開発できた理由、などの詳細は発表されていない。ロシアNOWが取材した関係筋によると、対生物兵器も念頭に置かれたようだ。

 N.F.ガマレヤ疫学・微生物学研究所の地味な建物は、モスクワ市中心部から離れた場所にひっそりと立っている。ウラジーミル・プーチン大統領が1月に自信を持って発表したワクチンは、ここで開発された。

 ロシアではエボラ出血熱は発生していない。国内市場で需要のないワクチンが必要だったのは、どうしてだろうか。製薬業界としては異例の1年半という短期間で有効なワクチンが開発できたのは、どうしてだろうか。臨床試験は実施済みなのだろうか。

 これらの疑問に対する完全な答えはまだない。開発を知るウイルス学者は、軍事研究やソ連時代の研究が短期化に寄与したと、ロシアNOWに話した。

 

対テロリストの武器?

 ソ連時代、エボラや他のエキゾチックな病気のウイルスは、生物学者の軍事都市「ザゴルスク6」とシベリアの市民センター「ベクトル」で研究されていた。1980年代終わり、研究をもとに、生物兵器が開発された。これらの軍事研究が、今回のワクチン開発に活かされたのである。

 生物学博士で極東連邦大学の教授であるミハイル・シチェルカノフ氏は、2014年夏に最初にギニアに派遣されたウイルス問題の専門家グループのメンバーである。ワクチンの主な「発注」理由は地政学的だという。

 「流行の中心地に近いところに、人口密度の高いナイジェリアがある。ナイジェリアでは、テロ組織『ボコ・ハラム』、つまり『イスラム国(IS)』西アフリカ支部とも言える組織が、活動している。エボラ・ウイルスをもとにした生物兵器が狂信者の手に入ったら、全世界への影響は非常に深刻なものになる」と、シチェルカノフ氏は話した。

 

ワクチンの働きは?

 今回のワクチンの開発者の一人、デニス・ログノフ氏はこう話す。「このワクチンは、ロシアで確立されたウイルス・ベクター技術にもとづいてつくられた。エボラや他の危険なウイルスに対する免疫をつくるため、ウイルス抗原が安全なウイルスに埋められ、このウイルスが人にも投与される」

 研究者はさらに、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染者用にこのワクチンのバリエーションをつくった。

 臨床試験はすでに実施されたと、N.F.ガマレヤ疫学・微生物学研究所は伝えた。「代わりの人を含めて92人が希望した」と、ウイルス学者のヤナ・シマコワ氏は話した。実験室条件において、ワクチンは「100%の効能」を示したという。さらに、諸外国の他の同様の薬よりも、副作用が少なかったと、シマコワ氏は説明した。この情報を確認するデータについて、N.F.ガマレヤ疫学・微生物学研究所は、近い将来の科学出版物で明らかになると伝えている。

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