ナノチューブは人類に既知の材料の70%の性能を改良、つまり、その強度を2~3倍増大させる。これで金属、ゴム、建材その他材料の使用量を削減できる。こうして、それらを使用したり、製造したりすることによる環境への危険な影響が低減される。
スコルコヴォ科学技術研究所のアルベルト・ナシブリン教授は語る。「ナノチューブは電子機器や工業においてCO2排出量削減につながる肯定的な効果を間接的に上げるばかりではない。CO2が直接的にカーボンナノチューブに置き換えられることもあり得る」
カーボンナノチューブは本質上、ロール状のグラフェン(炭素原子シート)である。学者たちに言わせれば、これは私たちの生活を変える材料のひとつだ。
現在ナノチューブは航空機の外被、マイクロチップ、薄型ディスプレーに使われている。「次世代ソーラーパネルやエネルギー貯蔵機器での利用の可能性も活発に議論されている。この素材を少し加えるだけで、金属や高分子ポリマーの強度や耐久性を格段に上げることができる」とナシブリン氏。
米国のジョージワシントン大の研究者らが今年、CO2からナノチューブを得る新しい方法を提唱した。高温電気化学反応によってCO2をカーボンナノチューブと酸素に分解する、という技術である。
ナノチューブの合成およびその性質の研究は世界中で進められている。ロシアにおけるこの分野のリーダーとしては、ロシア科学アカデミーシベリア支部の触媒反応研究所、クルチャトフ研究所、ケメロヴォ国立大、建築資材研究所「プロメテイ」、タンボフの「ナノテフツェントル」社、サンクトペテルブルク工科大、スコルコヴォ科学技術研究所その他多くの機関が挙げられる。
製造現場で使われている多層カーボンナノチューブは現在、多くの多国籍企業が製造している。たとえば米国のCNano社、フランスのArkema社、日本の昭和電工などだ。
電子機器に必要な単層カーボンナノチューブはより高品質なものとされ、市場ではより高い値をつけられる。その製造は最近まで研究所規模でしか行われていなかった。その価格は時に1㎏あたり15万ドルにも上った。
シベリアの科学アカデミー会員でOCSiAI社の共同設立者、ミハイル・プレドチェチェンスキー氏は、世界に先駆けて、単層ナノチューブの大量工業生産の費用を50~100倍低減し、1㎏あたりの価格を3ドルにまで引き下げる技術を提唱した。
2013年11月、世界最大の工業用単層ナノチューブ合成装置「グラフェトロン1.0」が稼働した。
「ナノチューブの大規模利用は、潜在的に、文明の相貌を一変させ得る。より効果的で、かつ環境にやさしい、未来の材料を創ることも可能になってくる」。ロシアNOWの取材に対し、OCSiAI社のマーケティング部長、クセニア・クリガエワ氏はそう語っている。
日本、韓国、米国、ドイツ、イスラエルなど、30か国あまりのメーカーが、ノヴォシビルスク製のナノチューブを購入している。
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