S-400の技術を採用した韓国

釜山広域市、韓国=

釜山広域市、韓国=

AFP/East News撮影
 北朝鮮からのミサイルの脅威を無力化することを目的とする韓国の潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM)と防空システムの中核となるのは、最先端のロシアの技術だ。

 ロシアのS-400「トリウームフ」ミサイル防衛システムに搭載された高度なミサイル技術は、韓国の弾道・防空ミサイル計画にも採用されている。

 部分的には北朝鮮の核ミサイルや潜水艦の配備に対する反応として、韓国はロシアの技術を大規模に採用することで、自国の兵器産業を強化してきた。中でも最重要なプロジェクトは、潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM) とM-SAM チョルメ2型中・長距離地対空ミサイルである。

 韓国は、ロシア製S-300ミサイル技術をSLBMに導入している北朝鮮よりも一枚上手の地位を期待している。韓国科学技術院 (KAIST) の上級研究員であるリー・チョンギュン氏によると、韓国は、S-300の次世代となるS-400が提供する「より安定した技術を採用している」

 S-400は、コールド発射技術 (火薬を用いないガス圧発射方式) が搭載されたきわめて高度なミサイルだ。コー​​ルド発射ミサイルは、韓国が保有する最新型の排水量3000トンを誇るチャン・ポゴ (張保皐) III型潜水艦にとって極めて重要な存在だ。コールド発射では、ミサイルが一定の高度に達するまではロケットエンジンが点火しない。この仕組みにより、弾道ミサイルを水中から発射することができるため、その最中潜水艦は潜水したままでいられるわけだ。軍の高官は、韓国中央日報に対し、新たなSLBMの開発が2020年までに完了する見込みであることを明らかにした。

 中央日報は、韓国海軍保有の兵器には現在、潜水艦発射巡航ミサイル (SLCM) が含まれていると報道している。しかし、SLBM技術を開発する北朝鮮の取り組みは達成されつつあるため、韓国軍が応対能力を保有する必要性が急務となっているのだ。

 「SLBMは、誘導システムを搭載したSLCMの精度を持ち合わせていないが、その速度と破壊能力は著しく上回る」と説明するのは元海軍少将で韓国の潜水艦艦隊の最初の司令官を務めたキム・ヒョクスー氏だ。「高速で検知困難なSLBMの配備により、韓国海軍は状況が緊急事態のレベルまでエスカレートする前に北朝鮮の一手先を行くことができるようになる」

 

韓国の防空体制

 一方で、M-SAMはサムスン・グループと、フランスの電機企業で軍需企業のタレス・グループにより共同開発されている。ハドソン研究所の政治・軍事分析センター所長のリチャード・ワイツは、次のように論じている。「M-SAMには、S-400の多機能Xバンドレーダーから得られた専有機密情報を含め、アルマズ・アンテイ合弁株式社団から供与されたS-400のミサイル技術が採用されている。LGグループのミサイルの誘導システムでは、ロシアで設計された要素も採用される見込みだ」

 M-SAMチョルメ2は、弾道ミサイルと航空機の両方に対抗するように設計されている。韓国がロシアのS-400に近い性能を実現できた場合、北朝鮮が保有する弾道ミサイルに対抗しうる恐ろしい兵器を持つことになる。

 シンクタンクのエア・パワー・オーストラリアによると、「S-300P / S-400ファミリーの対空ミサイルシステムは、疑いもなく、アジア太平洋地域で幅広く配備されている最も高性能なSAMシス​​テム」である。同氏は続けて次のように論じた。「S-300P / S-400シリーズは「ロシア版パトリオット」と呼ばれることがよくあるが、ロシアのシステムは多くの点において米国のパトリオットシリーズよりも高性能であり、後の改良バージョンは高い可搬性能力を提供しているため、パトリオットよりも生存可能性が優っている」

 

変化するロシア・韓国間の防衛パートナーシップ

 米国の主要な同盟国であると共に、米国製兵器の顧客である韓国がロシア製兵器の買い手となるのは予想外だ。実際に、韓国のロシアとの国防取引は予期しない形で進展した。冷戦終結後の1991年に、韓国は独立国として韓国を承認してもらった報酬として、10億ドルの現金借款と4億7,000万ドルの商品借款をモスクワに対して行った。しかしソ連は同年中に崩壊してしまった。

 現金による借款の返済ができなかったロシアは、当時多量に保有していたT-90型戦車、歩兵戦闘車やヘリコプターといった軍需品を代わりに供給し始めた。「ヒグマ」として知られる、兵器で債務を返済するという契約は、当初1995年と2003年に締結された。

 しかし、韓国軍が高度な軍需品の支給を歓迎したとしても、ソウルとしては、既製の兵器プラットフォームを輸入し続けることを望まなかった。これには2つの理由があった。第一に、ソウルは米国の軍需品エコシステムを大規模に導入していたので、それにロシア製の兵器を簡単に統合できなかったという点だ。 

 第二に、韓国人がより野心的になっていったという経緯がある。韓国は、数々の商業セクターにおいて成し遂げた支配的地位に相応する、世界に通用する軍需産業を構築したいと考えていた。政府の2020年に向けた国防改革イニシアチブは、国防分野における研究開発を通じて国内の軍需生産能力を発展させることを目標として掲げている。最先端のS-400技術の移転はこの計画の一環なのだ。

 スンホ・ジューとテファン・クァク氏は、著書『21世紀の韓国』で次のように述べている。「ロシアとの軍事協力により、韓国が経済的利益をものにできる可能性がある。ソウルとモスクワが共同で高度な技術とハイテク兵器を開発すれば、世界市場でそれらを販売できるからだ。2国間の関係は、相互に利益をもたらすのだ。ロシアには基礎科学と先端技術という2つの強みがある一方で、韓国はマーケティングに長け、資本力を有している」

 

技術移転の不都合な側面

 確かに、このような最新鋭の兵器を移転する上で、ロシアが何らかの支障に直面する可能性はある。韓国は米国と緊密な同盟関係にあるため、ロシアの機密技術がアメリカの手に流出してしまう可能性があるからだ。ロシアが米国のF-22やF-25といったステルス戦闘機についてそれほど懸念を抱いていない理由の一つは、これらの戦闘機はロシアの防空システムをくぐり抜けることができないと考えられているからだ。S-400は、第5世代の戦闘機からの脅威を無効にすることに成功した驚異のロシア製兵器の一つである。

 しかし、韓国がS-400の機密を米国に譲渡した場合、それはロシアの (さらに中国の) 防空システムをある程度の危険にさらすことになろう。例えば、1976年に極秘にミグ25戦闘機に乗ったソ連のパイロットが亡命した件では、ロシアはそのためにかなりのコストを費やして同戦闘機用の新規レーダーおよびミサイルシステムを開発することを余儀なくされた。

 第二に、韓国がS-400ベースのM-SAMを米国のミサイル防衛システムに統合すると、ロシアは、将来米国と交戦するような事態が生じた場合に、潜在的に自国製のミサイルと対決しなければならないというシナリオが考えられる。

 しかし、次世代のS-500ミサイルが配備されれば、ロシアは機密の潜在的な漏洩についてあまり心配しなくても済むようになるだろう。とにかく、一度商品を輸出してしまうと、競合相手がいずれそれを入手することは時間の問題なのである。