アブハジアとの境界を「外す」

アレクセイ・マイシェフ/ロシア通信撮影

アレクセイ・マイシェフ/ロシア通信撮影

ロシアのウラジスラフ・スルコフ大統領補佐官は16日、訪問先のアブハジアで記者団に対し、ロシアとアブハジアの間の境界を外す必要性について述べた。この時、最近発効したばかりのロシアとアブハジアの「同盟と戦略的パートナーシップに関する条約」に言及。グルジアは当時、この条約をロシアによるアブハジア「併合の第一歩」と呼んでいた。ロシアの専門家はこれについて、併合の話でも、またアブハジア(2008年にロシアはその独立を承認)の主権を脅かす話でもなく、ロシアとアブハジアが境界規制を簡易化しようと努めているにすぎないと考えている。

 スルコフ大統領補佐官はアブハジアのラウリ・ハジムバ大統領と会談した後、記者団に「最終的にはこの境界を外す必要がある」と述べた。ハジムバ大統領は表現により慎重で、これは境界の往来を簡易化する話であり、共同作業を要し、近い将来解決されるだろうと述べた。

 

「外す」と「抹消する」

 昨年8月、当時まだ大統領選の立候補者だったハジムバ氏は、「ロシアとの境界を開放する」必要性に触れていた。それによってアブハジアを訪れるロシア人旅行者の数が倍増し、また税関手続きの簡素化によってアブハジアの農業が活性化すると説明していた。

 その際、ロシアの高官も、アブハジアの高官も、境界規制の変更を、最近双方が批准した「同盟と戦略的パートナーシップに関する条約」に関連するものとしていた。条約には、ロシアとアブハジアが「安全保障上の理由で定められる制限を考慮に入れながら、ロシアとアブハジアの国境の往来を完全に自由化する」ことが義務だと記されている。

 国境そのものを抹消するような話ではないことは明らかである。ロシア科学アカデミー東洋学研究所中央アジア・カフカス・ウラル・ボルガ川流域研究センターの専門家、アレクサンドル・スカコフ氏は、スルコフ大統領補佐官自身も国境の撤廃を意味していない、と考える。「『外す』と『抹消する』は同じではない。境界は残り続け、形式が撤廃される。有刺鉄線が撤去され、境界検問所の大部分が取り外される」。アブハジアに入るロシア人は、ただパスポートを提示するだけで済むようになるという。これは「(ロシア人を装って)他の国の市民がアブハジアに入らないように行われる」と、スカコフ氏。

 

グルジアとの境界と難民

 将来的なロシアとアブハジアの境界の問題は、グルジアとアブハジアの境界警備をロシアと協力して行うという新たな条約に関連している。しかしながら、一部専門家は、この点でいくつかの問題を見いだしている。

 CIS諸国研究所カフカス部のウラジーミル・エフセエフ部長によると、条約はグルジアとアブハジアの境界警備を協力して行うことを示しているものの、「アブハジアに境界警備隊はいない」という。そのため、誰が境界の警備を行うのか不明である。アブハジアとグルジアの海域の境界画定も必要だが、いつ、どのようにそれが行われるのかも不明である。

 グルジアとの外側境界がいかに警備されるのかわからない状況の中、ロシアとアブハジアの境界線の撤廃について話すのは困難だと、エフセエフ部長は考える。ただ、「スルコフ大統領補佐官の言った境界外しとは、移動が自由になるという理由でアブハジア人がそれを望んでいるということかもしれない」とも補足している。

 アブハジア人がロシアとの境界を完全に撤廃しようと努めていない理由は、1990年代初めのグルジアとの戦いの後、アブハジアから避難したグルジア人難民が、大量に戻ることを懸念しているからだ、とエフセエフ部長。グルジアによると、1992~1993年の紛争の結果、アブハジアから20万人以上が避難したという。

 アブハジアと条約を結んだロシアは、同じくグルジアから離脱した南オセチアとも同様の文書を結ぼうとしている。これを背景としてモスクワで18日、ロシアと南オセチアの境界に関する条約に署名が行われた。

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