ウクライナ情勢7/18報道

ロイター通信撮影

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ロシアの報道の中心は、ウクライナ・ドネツィク州で発生した、マレーシア航空ボーイング777型機墜落事故関連である。

 「コメルサント」紙は、未承認のドネツィク人民共和国の指令部が、ボーイング777型機が墜落した時に、義勇軍によってウクライナ軍の輸送機「An-26」が撃墜されたと発表したことを伝えている。

 ウクライナ側は、義勇軍が輸送機と間違えて、旅客機を撃墜したと考えている。

 高高度航空機に到達可能な対空ミサイル・システム「ブーク」は、双方の軍が所有している。旅客機が落下したのは、人民共和国政府が管理する領域内であるため、義勇軍が遺体やフライト・レコーダーの捜索を行った。

 ウクライナ側は、ボーイング社を含む国際的な専門家を呼んだこと、また独自の調査を行うことを表明。また、高度1万メートルを飛行していたボーイングを撃墜可能な「ブーク」が、ドネツィクにあると指摘した。

 ウクライナの軍事専門家イーゴリ・レフチェンコ氏は、コメルサント紙の取材に対し、ウクライナ軍も紛争地域に複数の「ブーク」を保有しているが、反テロリスト作戦本部にあるため、旅客機のような標的に対して使用はしないだろうと述べた。

 今回の事故は、瞬く間に大きな政治問題となった。ウクライナ政府は義勇軍が旅客機を撃墜したと発表し、ペトロ・ポロシェンコ大統領は、これをテロと呼んだ。欧米の反応は慎重である。

 

 「独立新聞」は、アメリカのホワイトハウスがボーイング777型機墜落の調査を要求する一方で、ウクライナ南東部の紛争を連続的にあおり、分離主義者を支援し、兵器を供給し、教え込んだとして、ロシア政府を批判していると伝えている。

 アメリカは、ミサイルを発射したのが義勇軍か、ロシア軍だと考えている。ウクライナ政府に対する非難はない。ウクライナ側は高度1万メートルの航空機を撃墜できるようなミサイルを、紛争が起こってから一度も発射していないと主張している。

 

 「ガゼータ・ル」は、ウクライナ東部での旅客機墜落の原因が、ソ連の遺産としてウクライナが保有し、最近義勇軍も保有し始めた、最強対空ミサイル・システム「ブーク」から発射されたミサイルである可能性が高いと伝えている。

 「ブーク」はロシアの国営代理店「ロスオボロンエクスポルト」のもっとも人気の高い製品の一つ。

 CIS諸国もソ連時代の“遺産”の「ブーク」を輸出しており、シリアやアフガニスタンなど、世界中で使われている。

 仕様書によると、高度25キロメートルの標的を撃破できるという。またとても機動性があり、5分以内に広げたり、たたんだりできる。標的に向けるには、資格を持った専門家が必要。専門家にかかれば、40キロメートル離れた標的でも撃破可能。

 ドネツィク人民共和国が、高高度を飛行する航空機を撃墜できる兵器を保有していないと説明する一方で、ルハンシク人民共和国の関係者は、事故の他の原因を指摘。ボーイング777型機は、ウクライナ軍のSU-27戦闘機によって撃墜され、その後義勇軍がSU-27戦闘機を撃墜したという。しかしながら、戦闘機の上昇限度は5キロメートルであるため、この説の可能性は低い。

 

 「ヴズグリャド」紙は、マレーシア航空の旅客機の墜落場所が、現在ドネツィク義勇軍とウクライナ軍の間で激しい戦闘が行われている場所だと書いている。

 ウクライナ政府は今回の悲劇が、義勇軍の防空設備によるものだと主張している。しかしながら、ウクライナ軍の非を示す論拠に、より説得力がある。

 ウクライナの報道は、ウクライナ東部の義勇軍が最近、ウクライナ空軍の軍用輸送機を2機撃墜できていたと説明しながら、今回の事故が義勇軍によるものだと非難している。

 対空ミサイル・システム「ブーク」は半自動システムで、人間の操縦は最低限。そのため、義勇軍が習得できた可能性はある。また、義勇軍の中には、ソ連軍、その後ウクライナ軍に従軍していた時に、「ブーク」を扱った人がいた可能性が高い。2008年の南オセチア紛争では、グルジア側で戦ったウクライナの「ブーク」隊によって、ロシアの超音速爆撃機「TU-22」が撃墜されている。これが再び繰り返されたとしても不思議ではない。

 そうなると、ウクライナ軍の航空隊に対空ミサイル・システムで対抗する義勇軍よりも、ウクライナ東部の”秩序”のためにとウクライナ政府を奨励していた欧米の国々への疑問が生じてくる。

 ウクライナ軍による可能性も低くはない。少なくともマレーシアの旅客機ボーイングは、ウクライナのポルタヴァ地域のレーダーでとらえられたはずだ。

 軍事専門家で、「国防」誌の編集長を務めるイーゴリ・コロトチェンコ氏は、「ウクライナ東部への追加的な軍およびウクライナ対空防衛設備の投入、またそれらの高められた臨戦態勢を考えると、ウクライナの対空ミサイル・システム『ブーク』の戦闘モード・チェックの結果、人員と戦闘部隊の資格の低さにより、偶発的、またはオペレーターによる非意図的な誤った発射が起こってしまい、マレーシアのボーイングを撃墜した」可能性も指摘する。

 以前、義勇軍が複数の「ブーク」を取り上げたという情報があったが、ウクライナ政府は公式に、その「ブーク」が故障しているため、ウクライナ軍の軍備から意図的に外されたと表明していた。