プーチン発言の真意とは

ロシア通信撮影

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ウクライナ問題について半月以上沈黙を守っていたウラジーミル・プーチン大統領が7日、驚きの声明を発表した。ウクライナ南東部のことをあきらめたという評価もあるが、実際にはウクライナにおけるロシアの利益実現へのさらなる一歩前進である。その目的とは、損害を最小限にとどめること。

プーチンの目的

 プーチン大統領は7日、欧州安保協力機構(OSCE)議長国スイスのディディエ・ブルカルテル大統領と、モスクワで会談。その後の共同会見で、ウクライナに関する意外とも思える発言を行った。特に注目すべき点は、ウクライナ南東部の住民に対して住民投票を延期するよう呼びかけ、25日に予定されているウクライナ大統領選の実施を支持し、ウクライナ国境近くのロシア軍を撤退させると述べたこと。ロシアに対して否定的な人の一部は、ウクライナ南東部をあきらめた証拠、または経済制裁に震えたプーチン大統領とロシア政府全体の弱さと評価した。しかしプーチン大統領はこれらの発言を行いながら、2つの課題に従っている。

 まずはロシア政府がジュネーブで引き受けた、ウクライナ情勢を段階的に落ち着かせる義務を、履行する用意があると世界に対して示すこと。これによって対ロシア経済制裁のリスクを大きく抑えられる。少なくともプーチン大統領がこのような発言を行ったからには、アメリカが制裁発動の必要性をヨーロッパに理解させるのがより困難になる。市場はこの発言に極めて好意的な反応を示し、1ユーロは49ルーブル弱、1ドルは35ルーブル弱まで下落し、株価指数は5%上昇した。

 これ以外にプーチン大統領は事実上、ウクライナ暫定政府をより積極的な行動へと向かわせる。暫定政府の戦略は、情勢の段階的拡大、ロシアとの対立、アメリカとEUへの報告と、いまだに極めて単純である。プーチン大統領はこのような暫定政府に、困難な課題をつきつけた。それはロシアの提案に答えを出さなければいけないということである。プーチン計画が成功すると、暫定政府の対応は暫定政府自体の終焉か、情勢の段階的縮小とウクライナの連邦化へと発展する。どちらに転んでもロシアは満足だ。

 

詳細なシナリオ

 プーチン大統領の発言のポイントを見て行こう。

 まず、東部で予定されている11日の住民投票に反対した。これをドンバス人民軍(親露派)の保護を放棄したととらえるべきではない。

 第一に、プーチン大統領は住民投票の実施をやめさせて、(親露派に対する)反テロ作戦を停止させようとしている。「対話を始めるための絶対条件は、あらゆる暴力の無条件停止。現代の世界で絶対に許容不可能な軍の利用、不法武装集団の利用のどちらもそうだ」と述べている。

 そしてウクライナ暫定政権に極めて不快な課題を課した。ウクライナ最高会議は6日、地方分権に関する国民投票の実施を中止し、対話の実施に反対票を投じた。だが今や最高会議には、この決定を変えてロシア恐怖症を克服するか、プーチン大統領が提案した情勢の平和的解決を公に拒否するかの、2つの道しかなくなった。プーチン大統領の要求は事実上、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長やブルカルテル・スイス大統領などの、国際的な影響力の強い人物を支持していることになる。この時、いかなる最高会議の動きも、ロシアにとって有利なものとなるのだ。

 第二に、プーチン大統領の声明を受けて何らかの行動を取らなければいけない義務は、暫定政権にしか課されていない。ウクライナ連邦化支持派はプーチン大統領の言うことを聞かなくても良いのだ。ドネツィクが住民投票の実施を決めた場合、この件でプーチン大統領は非難されにくくなる。連邦化支持派の代表は大統領の発言を正しく受け止め、すでに住民投票中止を可能にする条件をウクライナ暫定政権に突き付けた。オレグ・ツァリョフ最高会議議員はこう述べた。「それは反テロ作戦を速やかに停止すること、すべてのウクライナ軍とウクライナ内務省の部隊を駐屯地に引き上げること、不法武装集団すべての武装解除と解体、でっちあげの刑事事件で逮捕された者を含むすべての政治犯の解放である」

 

ウクライナ大統領選に関する声明の意味 

 プーチン大統領のウクライナ大統領選に関する声明も、同様に評価できる。「大統領選自体は正しい方向の動き」と発言しながら、欧米とウクライナ暫定政権に対して、ロシア政府は大統領選を阻止するつもりなどないし、選挙の結果を認める用意もあると示した。そしてこうつけ加えた。「ウクライナ国民全員が、大統領選実施後に自分たちの権利がいかに保障されるかわからない状態では、(大統領選は)何の解決にもならない。ウクライナ暫定政権と南東部代表の直接対話は、正常化の鍵である」。一部の政治学者は、この発言が新憲法を選挙前に制定するよう要求するものであると考えている。ウクライナでの選挙実施を延期することについて、ロシア政府がすでに西側と話し合いをつけている可能性も排除できない。

 最後に、ロシアはウクライナ国境付近にこれ以上軍を集中させない、とプーチン大統領は発言している。ロシア政府は軍をウクライナに投入しようという目標を立てていなかったし、今もそれはない。戦争の意思が無くとも、これはもっとも厳しい経済制裁と政治的結果を招いてしまうからだ。軍の投入は恐らく、現実的な目的、すなわち連邦化支持派の管理下で南東部を維持するための、最終手段と考えられていた。そして現在、この目的を達するための他の手段が機能し始めたようで、ドンバス人民軍から、武器を持ったロシアの「ボランティア」グループが到着しているとの情報が届いている。そのため、ウクライナ国境付近に軍を置くことは、政治的にも経済的にも無駄になりつつあるのだ。

 ウクライナ暫定政府はプーチン大統領のかけひきをさとっているため、あらゆる方法で無効化させようとしている。ウクライナ暫定政府のアルセニー・ヤツェニュク首相は、プーチン大統領にこう呼びかけた。「”空売り”なんて大国の大統領には似合わない。ロシアが11日の何かの住民投票を延期するよう求めているのだから、ロシアの大統領には、11日にウクライナではいかなる投票も計画されていなかったと報告しなければならない」。だがプーチン大統領の声明が本当にヨーロッパの合意を得たものであるなら、暫定政府の意見に関心を向ける人は多くないだろう。

 

元記事(露語)