プッシー・ライオットとグリーンピースも恩赦

女性パンクロックグループのプッシー・ライオットのメンバー、ナジェージダ・トロコンニコワさん=ロイター通信撮影

女性パンクロックグループのプッシー・ライオットのメンバー、ナジェージダ・トロコンニコワさん=ロイター通信撮影

ロシアの国家会議(連邦議会下院)は、憲法制定20周年に因んだ恩赦に関する決定を採択した。今週末に発効するこの決定に基づき、女性パンクロックグループのプッシー・ライオットのメンバーやグリーンピースの活動家を含む1万人から2万5千人に恩赦が施される。

恩赦の対象者 

 恩赦の対象となるのは、社会的弱者の範疇に属する受刑者、容疑者および被告人、ならびに、ロシアに対して一定の功績がある人で、法案の案文に添えられた説明書きには、こう記されている。

 「この範疇には、未成年の犯罪者、未成年の子供がいる女性、妊娠中の女性、55歳を超える女性、60歳を超える男性、グループⅠおよびⅡの身体障害者、ならびに、チェルノブィリ原発事故の処理にたずさわった人、軍人、内務省など治安機関の職員、戦闘行動もしくは祖国防衛に参加したその他の人が含まれる」

 すべてこれらの人は、罪が初犯であり刑期が5年以下である場合にのみ、釈放される。憲法によれば、恩赦の発令は国家会議(連邦議会下院)の専権事項であり、恩赦に関する決定については、連邦会議(連邦議会上院)が承認することも、大統領が署名することもない。

 こうして、プッシー・ライオットのメンバーや「ボロートナヤ広場事件」の当事者(野党勢力の抗議集会で拘束)やグリーンピースの活動家らにも恩赦が適用される。フーリガン行為の罪に問われたアークティック・サンライズ号の30人の乗組員は、審理開始前に恩赦を受ける可能性があり、同じ罪に問われたプッシー・ライオットのナジェージダ・トロコンニコワさんとマリヤ・アリョーヒナさんは、刑期満了のわずか二、三ヶ月前に釈放されることになる。

 

対象外は 

 国家会議は、ロシア連邦刑法282条(憎悪あるいは敵意の扇情、および、人間的尊厳の損傷)による受刑者の恩赦は認めなかった。

 国会議員らには、また、暴力もしくは特別の手段の使用を伴う職権乱用および重大な結果を招いた職権乱用の事件の当事者は恩赦の対象者のリストから外すよう勧告がなされた。担当の委員会は、このほか、テロリスト、児童虐待者、麻薬中毒者には恩赦を適用しないよう勧告した。国会議員らは、法案の審議の過程で、同委員会の意見に賛成した。

 ちなみに、国家会議では10の恩赦の案が検討され、プーチン大統領が提示した案がもっとも多い442票を集め、88人から157人の議員がその他の案に賛成票を投じた。

 職務怠慢の罪に問われているアナトリー・セルジュコフ前国防相は、刑事罰を免れるもようで、国防省直轄企業「オボロンセルヴィス」の汚職事件の他の当事者には、反政府活動家のアレクセイ・ナヴァリヌイ氏と同様、釈放の望みはない。

 

恩赦を拡大すべきか 

 ウラジーミル・ルキン人権全権代表によれば、およそ2千人が収監場所から釈放され、2万人以上の受刑者および取り調べ中の人に恩赦が施される。同人権オンブズマンは、「国家機関の代表でありながら自身の“拷問的行動”によって国家を辱めた人々を恩赦の対象に含めない」とする決定は正しいとし、大衆暴動の参加者への恩赦の適用には好感を覚える、と語った。

 ルキン氏は、「より広範な恩赦は犯罪状況に否定的影響を及ぼしかねないとの国家の懸念は理解できる」と述べ、そうした懸念には十分な根拠があるとみなしているが、タス通信は、「恩赦をさらに広げる余地は、それでもやはり存在する」という氏の言葉を伝えている。

 社会団体「ソプロチヴレーニエ(抵抗)」の理事長でロシア連邦社会院のメンバーであるオリガ・コースチナ氏は、恩赦を拡大すると社会復帰の意思のない犯罪者を釈放することになりかねないため、今回の妥協的な恩赦の案を歓迎し、こう述べる。「人権擁護活動らは、大統領を批判していますが、大統領はすべての市民に権利を保証しなくてはならないということを忘れています。ロシアには、元の囚人の問題にたずさわる人がおらず、そうした法律やプログラムがありません。人権擁護活動家らは、この問題については沈黙しています。人権評議会は、自分たちが政治囚とみなす人々を釈放するという崇高な使命のために、児童虐待者や強姦者、テロリストやフーリガンたちをも釈放するというリスクを冒しています。ロシアでは、世界では重罪とみなされている罪を犯した者が、中程度の罪にしか問われていません」。

 コースチナ氏は、恩赦の準備の過程で明らかになった状況がロシアにおける刑事司法政策の改革に弾みをつけるものと確信しており、「多くの旧ソ連邦構成共和国にはすでに別の刑法典があり、ロシアも自国の刑法典を改める必要があります」と語った。

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