国際原子力機関 (IAEA)の天野之弥事務局長 =ディーン・カルマ / IAEA撮影
-福島原発事故後、複数の国で原子力エネルギーに対する反対が起こるなどした、”恐怖の期間”は過ぎたとお考えですか。
この事故は確かに、原発の安全問題について考える大きなきっかけになりました。原発の安全レベルを高めるために、常に新しい措置を講じる必要がありま す。この事故が過去の物になったとは言えません。ですが、同時に将来についても考える必要があります。そのためにも、丁度いい会議日程が選ばれました。福島原発事故後、IAEAなどの国際機関の果たす役割がとても大きくなりました。個々の国で起こる事象に対して、世界的な解決策を模索して行く必要があります。
-IAEAは30年間で原子炉の数が今の2倍になると予測していますね。
当機関の最新予測では、原発の発電量が控えめなシナリオで23%増加、楽観的なシナリオで100%増加となっています。ただここには多くの要因がからんできます。例えば、環境変化の問題にどれだけ厳密に取り組むかなどです。
-シェール・ガスは原子力エネルギーの現実的なライバルになるとお考えですか。
シェール・ガスの採掘量、その競争力など、この資源の利用に関するすべての詳細が分かっているわけではありませんが、このガスも温室効果ガスの原因になります。また、一 つのエネルギー資源に依存したいと考える人はいませんから、各国はエネルギー資源の程よいバランスを維持することに関心を持っています。原子力エネルギー は温室効果ガスを排出しませんし、とても競争力があって、一部の国では代替案がありません。原子炉をもっと建設するのか、シェール・ガスを利用するのかということについて話すには、まだ多くのことが不明です。ただ、原子力エネルギーは今後、間違いなく増加します。
-イランの大統領選挙は、核開発計画に関する同国とIAEAの協議にどのような影響を及ぼすでしょうか。
我々は関心を持って選挙を見ていました。選挙後どうなるかについては何とも申し上げられませんが、IAEAの立場としては、具体的な結果を得るための対話をする構えがあります。
-イランの核計画における軍事的側面の可能性を明らかにする、体系的な取り組みについての書類の内容がほぼ承認されたと、以前ご発表になりました。まだ意見が食い違っている点はありますか。
意見の食い違いはこれまでと同様存在しており、議論は堂々巡りに陥っています。イラン側にどのような問題があるのかはわかりませんが、IAEAが効果的 な監視を実現できるような可能性を必要としていることは確かです。つまり、IAEAが自分たちの仕事をできるようにしなければならないのです。その仕事とは、イランの核活動が平和的利用のためだけに行われていると保証することです。我々の活動が強く制限されすぎれば、仕事をすることができません。このような状態は、イランも、IAEAも、協議参加国ものぞんでいません。
-北朝鮮を対話の場に引き戻すことは可能だとお考えですか。実現させるためには何が必要ですか。
北朝鮮は簡単な国ではないので、この問題に答えるのは難しいです。専門家やIAEAの関係者を北朝鮮に送る用意はありますが、ただ調査に行けばいいとい うわけではありません。IAEA加盟国には、北朝鮮と協議している国もあります。中国、ロシア、韓国、日本、アメリカは、現状を打開しようと動いていま す。北朝鮮とは基本的な政治合意が必要だからです。今日このような合意はありません。この問題の今後を楽観的に見ているわけではありませんが、進展はある と確信しています。そうなった時には、非核化を監視するために、自分たちにできることをやる用意があります。
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