安倍首相が訪露

=ロイター通信撮影

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今回の訪問によって平和条約締結が近づくか否かを、複数の専門家に聞いた。

 安倍首相がロシアを公式訪問した。日本の総理大臣が訪れるのは10年ぶり。安倍首相は訪問前に、日露関係に新たな弾みをつけ、「両国間の領土問題を解決し、平和条約を結ぶために」、領土の帰属問題についての協議を進めたいと話していた。

 

ワシリー・モロジャコフ氏、ロシア科学アカデミー東洋学研究所上級研究員、拓殖大学教授

 日本側、すなわち日本政府と、自由民主党の政権復活のために投票した有権者は、「宣言」のレベルでもいいので、何らかの進展や変化がこの訪問によって起こ ればと期待している。安倍首相は平和条約締結、また「領土問題」の解決に向けて前進したところを示さなければならない。

 日本政府はロシアが領土問題で姿勢を軟化させることを期待しているが、現実的にそれが起こるという根拠の有無については、私は確信を持てない。

 ロシアとの「領土問題」が安倍首相自身にとって重要であることは明白だし、また他の人にとっても同様だ。

 日本の大臣、政治家、政治学者、マスコミは、くり返し同じ主張を続け、自ら行き詰ってしまった。そしてそれに気づいたものの、困難な状況から脱する術を 見いだせないでいる。安倍首相は1年以上このポストを維持するために、何らかの「承認」するような声明をロシア側から得ることが必要だ。仮にロシアが何らかの“良い提案”をした場合、安倍首相は代わりにどのような提案をするのだろうか。これは協議で明らかになる。またロシア側にそれが必要かという別の問題もあ る。

 

東郷和彦、元外交官、政治学者

 領土問題で新たな合意がなされるとは思っていないが、この訪問は両国の相互理解ならびに相互信頼の基礎を築くため、極めて重要だ。このような礎が あってこそ、もっとも困難な問題が解決可能となる。今回の会談は、安倍首相およびプーチン大統領の再選後に行われる。平和条約締結に向けた解決策の模索を含め、全体的に両国関係を強化できるような個人的な信頼関係が、ここで構築されることを願う。

 

ワレリー・キスタノフ、ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センター所長

 安倍首相は領土を帰国の手土産にすることはないだろう。両国の姿勢は根本的に違っているため、いかなる打開策も歩み寄りも期待できない。安倍首相とプー チン大統領はさまざまなサミットの舞台でこれまで会っているため、良くても個人的関係を再構築することを期待できる程度だ。

 メドベージェフ大統領(当時)が2010年に国後島を訪問し、両国関係は大きく冷え込んだ。日本にとって現在重要な課題となっているのは、交渉の雰囲気を再びつくり、プーチン大統領との個人的な関係を構築することだ。

 安倍首相が領土問題を進展させたということを日本国民に示すため、首相にとってロシア訪問は大きな意義を有している。プーチン大統領は領土問題の協議を行うことに合意したが、メドベージェフ首相は断固反対しており、「ロシアの土地は1メートルも譲らない」と言った。

 プーチン大統領は選挙前のある記者会見の席で、双方が納得できるような「引き分け」を目指す必要があると述べた。これは柔道の専門用語だ。この言葉は日本を大きく期待させた。

 安倍首相は外交政策で問題を抱えているため、ロシアとの関係はわずかな進展でも重要になってくる。日本は中国や韓国と領土問題でもめており、関係は非常に悪化している。中国も韓国も高官レベルで領土問題について対話することを、完全に拒んでいる状況だ。

 

記事全文(露語)

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