新法は幼稚園から大学院やインターンシップまでの、あらゆるレベルの教育について記している。=ウラディミル・ペスニャ撮影/ロシア通信
網羅的な新法だが
現在の教育法「教育について」は1992年に採択され、1996年には連邦法「高等・高等以後の教育について」も採択。これらの法律は、ここ20年のロシアの教育システムすべてを網羅しているものの、時間の経過とともに、新しい規則や変更が記載された付属文書が増え、煩雑になったため、網羅的な新法が必要となった。
新法は2010年に公表されたが、第一版については専門家などから数々の反対意見があり、第七版でようやく落ち着いた。
残る問題点
とはいえ、未だ問題点を指摘する声は多くある。
「新法案には誰に、どこに、いくつ、といった具体性がない。多くの重要事項が、地方政府、自治体に依託されており、中央政府と連邦教育・科学省の裁量次第となっている。150ヶ所以上の参照規則があり、事実上、役人の間で権限が分配されるようになっている」と、下院(国家会議)教育委員会のオレグ・スモリン副議長は考える。
もっとも、専門家のなかには、新法には何よりも教育が発展するような好条件がそろっていて、あとは教育現場次第だ、と考える者もいる。
宗教教育も未解決
この法律のいくつかの重要な問題は、結局解決されなかった。例えば、憲法で定められている、学校と教会の切り離しの問題だ。新法では、学校の宗教教育の代わりに、「宗教文化と社会道徳の基礎」コースが導入され、そのプログラムや教材の準備に、代表的な各宗教が参加することができる。
新法は幼稚園から大学院やインターンシップまでの、あらゆるレベルの教育について記している。「教育法の連続性が定められているため、小学校入学前の教育が全般的な教育プロセスにつながった。この点でロシアは世界から取り残されていた」と話すのは、大統領の諮問機関である社会会議のメンバーでモスクワ第548学校教育センター「ツァリツィノ」の所長を務める、エフィム・ラチェフスキー氏だ。
小学校へ上がる前の児童向けには、教育の義務基準が設けられ、教育と管理ケアという2部で構成される。管理ケア・サービスは、一部は、保護者会議の予算でもまかなわれ、教育プログラムは完全に国家財政でまかなわれる。
ネットでフィードバック
初等・中等教育で、家庭教育、通信教育、インターネットを通じた教育機関とのやり取りが法的に認められたことも、重要な変化だ。
「インターネットを通じた教育機関とのやり取りは、僻地の学校にとっても、市街地の学校にとってもとても重要だ。これで優れた実績や応用的なメソッドを伝えることができるようになる。さらに、これに対して個別に財源が割り当てられることも重要なところだ」と、国立研究大学高等経済学院教育発展研究所のイリーナ・アバンキナ所長は説明する。
体の不自由な児童が一般の学校で学習できる、統合教育も法的に定められた。学習や教育の質への責任も問われるようになる。これはロシアでは初めて。
正規のプログラム以外は有料に
また、学校内で有料の教育活動が許可される。学校の教育基準で定められるプログラム以外に、生徒が学習したいと希望する授業について、学校は請求権を持つことができる。とはいえ、必修プログラムは依然としてとても豊富であるため、無料の教育が減るというわけではない、というのだが。
経済モデルも根本的に変わる。「学校は連邦予算か地方予算でまかなわれ、さまざまな方式を見込んでいる。その多様な各ケースについては、新法案にかなり詳細な説明がある。例えば、村の学校や小規模な学校には、個別の規定に従った支援が行われるが、最少額が設定されているため、確実に教育基準を実現できるようになっている」とアバンキナ所長は請合う。
村の学校は存続?
数年前、各学校の生徒数に比例して予算が支出されるとの原則(つまり、生徒数が多いほど、予算も大きくなる)が導入されたことで、田舎の小さな学校が閉鎖を余儀なくされたため、この改革はとても重要だ。最小額が保証されていることもさることながら、地元で承認されなければ、田舎の学校を閉鎖できないようになっている。
中級の職業教育はより受けやすくなり、専門学校には入学試験なしで希望者が誰でも入れるようになる。
高等教育機関はこれまでと変わらないが、学士4年、専門家(学部で5年間履修)、修士2年という教育制度が法的に認められる。
大学卒業後に勉強を続ける計画を立てている人向けには、助手・研修職、研修医、科学・教育要員の育成のプログラムなどで構成される、「高い技能資格のある要員の育成」という個別の教育システムができる。
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