知っておくべきロシアの俳優ベスト10

John Moore/Dune Entertainment, Media Magik Entertainment, Twentieth Century Fox Film Corporation, 2013
 美しくて、天賦の才があり、成功を収めている彼らはまったく無視できない存在である。以下に紹介するロシアの俳優たちは強烈な存在感を持って、映画に登場しそこで光り輝いている。

10. イリーナ・スタルシェンバウム

 イリーナは自然派女優。彼女は本能、直感や感情的知性を基に演じている。専門的に演技を学んだことはないが、実験を恐れることはない。撮影現場で様々なことを試しながら演技を磨いている。

 彼女の本領は、コメディー、時代劇やフョードル・ボンダルチュク監督のSF超大作「アトラクション 制圧」(2017年)など幅広いジャンルの映画でさまざまな役柄を演じるのができることだ。

 彼女は伝説のロックミュージシャン、ヴィクトル・ツォイを描いたキリル・セレブレニコフ監督作品「LETO-レト」でブレイクした。この映画はモノクロ作品で、数多くの音楽が挿入されている。1980年代初頭のレニングラード、ひと夏のヴィクトル、マイクと彼の妻ナターシャ(イリーナ・スタルシェンバウムが演じた)の楽しい3人組の恋愛について描いている。「LETO-レト」はソ連におけるアングラ・ロック・シーンの黎明期を友情と自由をテーマに描いている。笑顔がチャーミングなイリーナは注目すべき女優である。イリーナがカンヌ映画祭のレッドカーペットを歩く姿はひときわ目立っていた。最新作は1984年のソ連を舞台としたローマン・ヴァシャノフ監督作品「ホステル」(2021年)。

9. アレクサンドラ・ボルティチ

 ブロンドの髪、青い眼、美しさの三拍子を兼ね備えた女優。映画の世界に入る前、彼女はバーでウェイトレスをしながら、いくつものTV番組のオーディションを受けていた。彼女はスクリーン上でよりリアルに見せることができるように全力投球している。

 スポーツ・コメディー「I Am Losing Weight」(2018年)で主役を演じたときには実に20キロも体重を増やした。しかし彼女には良い模範がいた。それは、「ブリジット・ジョーンズの日記」(2001年)で15キロも体重を増やしたレネー・ゼルウィガーである。かわいい天使のようなボルティチが出るとすべての映画が素晴らしくなる。チャーミングでカリスマ性のある彼女は、アレクセイ・ゲルマンJr監督作品「House Arrest」では見事な脇役を演じた。メラーブ・ニニッゼを相手に演じたこの女優は、濃密な社会派ドラマの暗黒な世界に差す一条の光となった。

8. アレクサンドル・ペトロフ

 2012年から2020年にかけて、この疲れ知らずな俳優は、戦争映画「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」(2018年)から、ペトロフが伝説的なロシア作家を演じた時代もの「魔界探偵ゴーゴリ」(2017年)に至るあらゆる映画、TVドラマにも出演してきた。また音楽コメディー、冒険SF、メロドラマにも出演している。

 しかし、ゾラ・クリジョフニコフ監督のグロテスクなTVドラマ「Call DiCaprio!」(2018年)ではペトロフの生まれ持つ才能と映画に対する情熱が遺憾なく発揮された。ペトロフは作家ドミトリー・グルホフスキーのベストセラー犯罪小説を基にした映画「Text」において感情のこもったすばらしい演技を見せている。ちなみに、ペトロフは舞台演劇出身の俳優である。

7. オクサナ・アキンシナ

 10代のころからスタートして活躍したアキンシナは、2001年のセルゲイ・ボドロフJr.監督の「Sisters」で映画デビューし注目された。そのとき、彼女はわずか13歳であった。続いて出演したのが、ルーカス・ムーディソン監督のスウェーデン/デンマーク映画「リリア 4-ever」だ。この映画で彼女は、母親に捨てられ、ひとりで精一杯生きる女学生役を演じた。

 表面上はおとなしく見えるオクサナは、ワレリー・トドロフスキー監督作品「Hipsters」(2007年)のポリー役であろうと、ダニーラ・コズロフスキー監督「チェルノブイリ:アビーズ」(2021年)のオリガ役であろうと、作品にドラマティズムと繊細さもたらしている。

 最近アキンシナはテレビのヒットドラマ「Container」(2021年)で主役のプロの代理母を演じた。その中で、アキンシナ演じる主人公は新しい顧客の豪華な屋敷に移り住んで、子供を出産する。そしてそれによってその後の彼女の人生は波乱万丈となる。

6. ダニーラ・コズロフスキー

 ダニーラは俳優であり、映画監督であり、脚本家であり、歌手であり、プロデューサーでもあるが、一体いかにしてこれらすべてのことをやる時間を見出しているのだろうか。このハンサムなアーティストは、将来どのような映画を作るか、常に多くのアイデアをもっている。また、コズロフスキーは、レフ・ドージン率いる有名なマールィドラマ劇場の一員でもあり、シェークスピアの「ハムレット」やチェーホフの「桜の園」で素晴らしい演技を見せている。 

 代表的な出演作品として知られているのは、ヴィクトル・ペレーヴィンのカルト小説を基にした映画「ソウルレス」(2012年)と伝記スポーツ映画「レジェンドNo.17」。後者の作品は実話をもとにしており、1972年のソ連―カナダサミットシリーズを、尊敬を集める栄光のソ連ホッケー選手ワレリー・ハルラモフを中心に描かれている。

 コズロフスキーはヒストリーチャンネルが製作した人気TVシリーズ「ヴァイキング〜海の覇者たち〜」(2013〜2020年)のシーズン6で演じた預言者オレグ王子役で世界的に知られるようになった。

 多作で知られるコズロフスキーは最近、監督として2作目の映画を完成させた。「チェルノブイリ:アビーズ」は1986年4月26日に発生した世界最悪の原子力事故において最初に消火活動をすることになった、怖れ知らずの消防隊員のひとり(ダニーラ・コズロフスキー演じる)の物語である。

5. スヴェトラーナ・ホドチェンコワ

 ブロンドのセックスシンボルは、20歳のとき、スタニスラフ・ゴヴォルヒン監督の「Bless the Woman」でデビュー。赤軍司令官の妻役を演じた。以来、スヴェトラーナは、「キロメートル・ゼロ」(2007)、「ファイブ・ブライド」(2011)、「職場恋愛、現代版」(2011)など数々の恋愛映画やコメディに出演している。またホドチェンコワは、ジョン・ル・カレの小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を下敷きにした「裏切りのサーカス」(2011)でハリウッドデビューを果たしている。

 ホドチェンコワは、ジェームズ・マンゴールド監督の「ウルヴァリン」でヒュー・ジャックマンと共演し、話題を呼んだ。さらに今後は、レフ・トルストイ原作の「アンナ・カレーニナ」(2022)、ネットフリックス初のロシア制作ドラマシリーズで、主要な役どころで新たな顔を見せてくれることになっている。

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4. ユリヤ・ペレシルド

 見かけで人を判断してはいけない。繊細で華奢なペレシルドは最近、宇宙飛行を敢行し、世界のメディアを騒がせた。2021年10月、ペレシルドは映画監督のクリム・シペンコの「挑戦」(2022)の撮影に参加したが、その一部が国際宇宙ステーションで行われたのである。この映画は宇宙飛行士を救うため、自ら宇宙へ飛び立つ医師を手間にした物語である。

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 これまでに、ペレシルドは、アレクセイ・ウチーチェリ監督の「爆走機関車シベリア・デッドヒート」(2010)から「The Three」まで、50を超える作品に出演している。

 必見のコメディー映画「Sheena 667」(2019)では、インターネットで情報を収集しようとするうち碧い瞳のアメリカ人女性に恋してしまう素朴な男性の妻役を演じている。

3. アンナ・チポフスカヤ

 「彼女はそんな目をしている。世界の何が茶色の瞳の少女を碧い瞳に変えたのか・・・」。ロクセットなら、チポフスカヤについてこんな歌をうたったかもしれない。チポフスカヤはきらめくサファイアのように美しい女優である。女優として活躍する傍ら、彼女は歌手としても活動している(チポフスカヤの父親は有名なジャズミュージシャンで、母親は舞台女優である)。アンナも舞台で数多くの役をこなしてきた。これまでに、アントン・チェーホフの有名な「三人姉妹」のマーシャ役やアガタ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」ではヴェラ・クレイソン役を演じた。

 映画への出演では、1960年代のソ連を舞台にしたワレリー・トドロフスキー監督の2013年のテレビドラマ「The Thaw(雪融け)」のマリアナ・ピチュギナ役で注目された。

 最近では、愛と喪失をテーマにした「Anyone Seen My Girl」(2020)やティーンエイジャーの目を通して見たソ連崩壊後の厳しい現実をテーマにした「マーシャ」(2020)で好演している。

2. ユーリー・ボリソフ

 28歳という若さで、ふた回り以上年上の有名俳優たちと共演している。新進気鋭の映画スターであるボリソフは、非常に高い演技力を持ち、ドラマ、コメディ、歴史ものなど、どんな映画もこなす。変幻自在の俳優で、カラシニコフ銃の開発者であるミハイル・カラシニコフから若い犯罪グループのリーダーまで、どんな役柄もリアルに演じる。最近では、ディストピア映画「Captain Volkonogov Escaped」(2021)で、1938年のNKVD(内務人民委員部)の士官役で、素晴らしい演技を見せている。

 また「第6号コンパートメント」では、説得力と動きのある役どころを見せた。1990年代初頭のソ連を舞台にした、フィンランドのユホ・クオスマネン監督のドラマは、カンヌ国際映画祭のグランプリに輝いた。孤独と絶望と愛を描いた必見の1作である。

 1. ユリヤ・スニギル

 愛嬌たっぷりの可愛さが魅力の女優。しかし、スニギルは見た目が魅力的なだけではなく、頭がよく、意思が強く、自信に満ち溢れている。またチェスの修士でもある。そして銀幕のセイレーン、スニギルは素晴らしい役の選び方も熟知している。

 2008年にフョードル・ボンダルチュク監督の「プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星」で衝撃のデビューを果たし、その後もその演技力を磨き、プロとしての幅を広げた。映画ファンたちは、2015年のミニドラマでエカテリーナ女帝を演じたスニギルに魅了された。スニギルはリアリティーがあり、感情に溢れている。

 また2013年、スニギルはハリウッドにも挑戦。いくつかの作品で大スターたちと共演を果たした。「ダイハード」(2013年)に大抜擢され、ブルース・ウィリスの相手役を務めた。さらに、ジュード・ロウ主演、パオロ・ソレンティーノ監督の「ヤング・ポープ 若き異端児」(2019〜2020年)でも人気をさらった。

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