東京五輪で期待がかかる10人のロシア人選手

Sergei Bobylev/TASS
 タイトル保持者であるロシアの陸上選手や競泳選手から、最強のボクサーやTik Tokユーザーとしても知られる体操選手まで、東京オリンピック2020(新型コロナウイルスの感染拡大により、開催は2021年に延期)で金メダルが期待されるロシア人選手を紹介しよう。

1. アンドレイ・ザムコヴォイ、34歳、ボクシング

 東京五輪のボクシングのロシア代表チームには、11人のメンバーが入った 。その中には4人の世界チャンピオンが含まれているが、オリンピックに出場した経験を持つのはアムール州出身のアンドレイ・ザムコヴォイただ1人である。ザムコヴォイ選手は2012年にロンドン大会で銅メダルに輝いた。2016年のリオデジャネイロ五輪にも出場したが、ケニアのレイトン・オクウィリ選手にベスト16で惜しくも敗れた。

 3年後の2019年、アンドレイは69キロ以下級で世界チャンピオンの座に輝いた。今回も、同じ階級でオリンピックに出場することになっているが、同時にボクシングチームのキャプテンを務める。ザムコヴォイ選手は勝利に向け強い意思を持っている。

 ロシア通信からのインタビューに応じたザムコヴォイ選手は、「これというライバルは特にいません。どの選手に対しても、最後の戦いだと思って挑みます。どの選手もそのためにオリンピックに出場するのだということを理解しています」と語っている。 

 

2. マクシム・ミハイロフ、33歳、バレーボール                                   

 オリンピック代表団の旗手の一人。今回の大会は、ミハイロフ選手にとって4回目の出場となる。これまでに、2008年の北京大会、2012年のロンドン大会、2016年のリオデジャネイロ大会に出場している。初出場となった北京大会で、ミハイロフ選手は銅メダルを獲得したロシアチーム内のベストスパイカーとなった。またロンドン大会では金メダル獲得に貢献した。さらにメンバーとして、欧州選手権、ナショナルリーグなど、数々の大会で勝利をあげている。 

 ミハイロフ選手は完璧主義者であり、また努力家と言われる。ロシアスーパーリーグのバレーボール選手たちのアンケートでは、チームの中で共にプレーするもっとも良いパートナーに選ばれている。この持ち味が東京五輪でも発揮されることを期待したい。

 

3. ソフィヤ・ヴェリカヤ、36歳、フェンシング

 ロシア選手団2番目の旗手であるソフィヤ・ヴェリカヤ選手は、アルマアタ出身(カザフスタン)。世界選手権で初めて金メダルを獲得したのは2006年。これまで8回、世界チャンピオンに輝き、団体と個人で14回、ヨーロッパチャンピオンの座に就いている。ヴェリカヤ選手は3回オリンピックに出場しているが、2016年のリオデジャネイロ大会では、その3年前に出産したにも関わらず、団体で金メダルを獲得した。

 オリンピックの後、ソフィヤは第二子となる女児を産み、出産休暇に入ったが、2年後、また復帰した。2018年から2019年にかけて、欧州選手権で4つのメダルを手にしている。 

 

4. ニキータ・ナゴルヌィ、24歳、体操      

 ロシアでもっとも多くのタイトルを手にしている体操選手。2019年に世界チャンピオンになったが、その3年前の2016年にはリオデジャネイロ大会で銀メダルを獲得した。

 ナゴルヌィ選手はブログやYouTube、インスタグラムやTik Tokを通じて、スポーツ選手としてのあらゆる情報を発信している。Tik Tokで公開されているトレーニングの様子を収めた動画の再生回数は数百万に達している。またナゴルヌィ選手は子どもや若者が体操や柔軟を行う「チャンピオンアカデミー」というクラブを立ち上げた。東京五輪でも、メダル獲得の様子を捉えた動画を撮影し、投稿してくれることを期待したい。

 

5. スヴェトラーナ・ロマシナ、31歳、アーティスティック・スイミング

 素晴らしい夫と3歳の娘を持つロマシナ選手は、シンクロナイズドスイミングで5回オリンピックチャンピオンに、そして21回世界チャンピオンに輝いているという世界でもっとも多くのタイトルを誇る選手。

 アーティスティック・スイミングの選手の中の真のターミネーターで、これまで大会で敗北を喫したのは実に3回だけ。本人曰く、ほぼすべての勝利は大きなドラマもなく得られたとのこと。唯一、リオでの大会では、緑色の水(phバランスの悪化による)のプールで泳がなければならなかった。

 東京大会では、7回目のオリンピックチャンピオンになり 、引退し、トレーニングのない新しい生活に移行する計画である。これまでのキャリアから判断し、この計画が実現するチャンスは十分にある。

 

6. アンナ・ヴャヒレワ、26歳、ハンドボール  

 リオ五輪で勝利を収めた後、エレガントなヴャヒレワ選手に、ジャーナリストらは「ハンドボール界のメッシ」のニックネームを与えた。スピーディなスロー、パス、左手を使ったひねりがその理由である。これがチームを勝利に導き、自身の新たなタイトルにも繋がった。2019年には世界チャンピオンの座に就いている。

 2020年11月、腰を痛め、欧州選手権には出場できなかったが、オリンピックの開催に合わせて回復し、あとは開幕を待つばかりである。

 

7. アブドゥルラシド・サドゥラエフ、25歳、フリースタイルレスリング

 「ロシアの戦車」の異名を持つダゲスタン共和国出身のレスリング選手。2016年のオリンピックで優勝している。これまで負けを喫したのは2017年の世界選手権での1度だけ。この後、アブドゥルラシドは1年間、1日に9時間トレーニングをし、翌年の選手権でその相手に勝利した。

 ハビブ・ヌルマゴメドフは、サドゥラエフ選手の勝利を何度も祝い、忍耐強さで彼に匹敵する者はいないと評価している。オリンピック出場2度目となる東京大会でも、サドゥラエフ選手は、97キロ以下級で、この忍耐強さを発揮することになるだろう。

 

8. ナタリア・ヴォロビヨワ、30歳、フリースタイルレスリング

 2012年のロンドン五輪で、ロシアで初めて、女子レスリング72キロ以下でオリンピックチャンピオンに輝き、ロシアのスポーツ史に名を刻んだ。2016年のリオ五輪では銀メダルを獲得した。

 2018年、ヴォロビヨワ選手は息子を出産したが、3ヶ月後にはトレーニングに復帰し、ロシアチームの勝利に貢献し続けた。2020年の世界選手権で金メダル、2021年の欧州選手権で銀メダルを獲得した。

 東京大会でも金メダルを狙っているが、その後の計画としては2人目を出産し、引退するとしている。

 

9. アンジェリカ・シドロワ、30歳、陸上、棒高跳び

 これまでの経験から判断して、シドロワには他のロシア人選手に比べ、金メダルを獲得できる大きなチャンスがある。2019年にシドロワ選手は世界選手権で4.95メートルの記録で優勝した。

 2020年のシーズンではロシア選手権で4.92メートルの記録を出し、2021年にはモナコで開かれたダイアモンドリーグで、4.80メートルの記録で2位に入賞した 

 しかし、東京大会では、4.95メートルの記録を持つアメリカのケーティ・ナジオット選手と争うことになっており、熾烈な戦いが期待される。

 

10. ディーナ・アヴェリナ、アリーナ・アヴェリナ、22歳、新体操

 東京五輪で金メダルを狙っているのが、今大会では個人で出場する双子の姉妹、ディーナとアリーナ。2人のどちらが優れているのかを判断するのは難しい。世界チャンピオンに輝いた回数だけをみれば、ディーナは13回、アリーナは4回となっているが、2021年の欧州選手権では、アリーナが優勝を果たした。 

 ちなみに、これまで2人は、理想的な形で互いを補い合っていると繰り返し話している。2人にとって初めてのオリンピックとなる東京大会では、2人がすべての種目で入賞し、メダルの色でもめることがないよう祈りたい。

 

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