わたしが記憶している限り、両親はもちろん、祖父母、それに田舎の親戚の家でも、窓枠には必ず鉢植えの植物が置かれていた。
アパート内の事情さえ許せば、サイドテーブルいっぱいに鉢が並んでいたり、あるいは植物の枝がよく伸びるよう考えられた鉢をかける複雑な構造物が設置されている家もあった。花はオフィスにも飾られているし、病院、学校、大学の階段ホールや通路にも並べられている。
人々は休日になると、キッチンに新聞紙を敷いて、鉢の植え替えや水やりをしたものだが、ほとんどの植物は難しい手入れは必要なく、簡単に育てることができた。ジョウロや水やりのための水を入れたボトルはアパートに欠かせないインテリアの一つである。
ソ連時代、もっとも人気のある「家庭の」植物であった。ただし、当時は外国名の「アロエ」ではなく、ロシア語で「百年草」と名付けられていた。100年生き続ける、または100年に1度だけ花が咲くと考えられていたのである。しかしアロエはほとんどの場合、美しいからという理由ではなく、薬として使う目的で育てられていた。アロエの葉を縦に切り、湿疹、膿瘍、火傷などの患部に当てたのである。またのちには、アロエで髪や顔のパックができることが分かった。
スミレは純粋に装飾としての機能を果たした。スミレを育てる人たちは、どんな品種があるか、またどれくらい花が咲き続けたかなど互いに自慢しあった。それぞれの家に植え替えや水やりのコツがあり、また葉が黄色くなるのを防ぐ独自の方法があった。
ロシア人はイチジクのあらゆる品種が大好きである。イチジクは、手入れも難しくなく、定期的に水をやり、葉の埃を取ってやればよい。ちなみにイチジクの葉を一枚ずつきれいにする作業は瞑想のようなものなのだそうだ。
気をつけて手入れする必要がある花。室温を一定に保ち、太陽の光をいっぱい浴びさせ、枯れた葉は取り除く。休暇で1週間ほど家を空ける場合にゼラニウムをそのまま家に置いて出ていくことはできない。ロシア人にとって、自分が家にいないときに、誰に植物の水やりを頼むかというのは重大な悩みである。しかしゼラニウムが花をつければ、これほど誇らしいことはない。
昔からもっとも愛されている植物の一つ。サボテンは暑さにも寒さにも強く、またロシアのセントラルヒーティングによる冬の暑さにも耐えられる。しかも水は1週間に1回以上あげる必要はない。そこでサボテンや多肉植物の人気はさらに高まっている。最近は多くのデザイナーが美しくてスタイリッシュな鉢を作っているのでなおさらである。
寒いロシアで自分だけのヤシの木を家に置きたくないなんて人がいるだろうか。ヤシの木は南部、そしてエキゾチックな海のリゾート地を思い起こさせる(それゆえロシア人は皆、ソチのヤシの木に感動する)。室内のヤシの木であるドラセナは手もかからず、異国情緒満点であることから、ロシアの住宅で見かけることが多い。
この花の学名を知っているロシア人はほとんどいない。というのも、ロシアでこの花は「デカブリスト(十二月党員の意味)」と呼ばれているからである。この花はもともと南米のものなのだが、12月に花を咲かせ、冬中、ロシアの人々の目を楽しませてくれることから、こう名付けられた。ちなみに、「デカブリスト」はよく生育するので、友人に分けてあげることもできる。また他の花と寄せ植えしても非常に美しい。
スパティフィラムには「美しい」という名がつけられているが、その名の通りである。この魅力的な花は温かい場所と湿気を好むため、育てる際には必ずスプレーを用意して、欠かさず水を与えなければならない。あるいはこの花のために加湿器を買うという人もいるくらいである。
最近は、切り花はもったいないという人が増え、3月8日の国際婦人デーにも、鉢植えをプレゼントする人が増えている。鉢植えの花は生き生きとしていて、長い間、部屋を美しく飾ってくれる。中でも、花をつけたランほど美しいものがあるだろうか。ただし、ランを育てるには手間がかかる。しかも、ランは他の植物を嫌うので、部屋の中でも、ランだけの特別な場所を作ってやる必要がある。
ロシア中部、北部の野生では、果実をつける木というものがほとんどない。そこで、レモンやミカンを部屋の窓辺で育てるというのは、真の喜びをもたらしてくれるものである。とりわけ、子どもがいる家庭に好まれる。こんなかわいい木のためなら、水やりも植え替えも霧吹きも惜しくない。
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