ソ連の児童が食べていた野生植物

モスクワ、1991年

モスクワ、1991年

Igor Zotin/TASS
 ソ連の菓子の種類は豊富ではなかったし、保護者も甘いものを毎日子どもに与えて”甘やかす”ようなことはしなかった。そのため、公園、森、草原で植物が育ち、ベリーが熟す春や夏になると、児童はいろいろ探して、おいしいと思うものすべてを食べていた。ベリー以外にも、さまざまな花を食べていた。

1.     ヒメムラサキ

ヒメムラサキは、とても甘く、十分にジャムや飴の代わりになった。=Chromorange/Global Look Pressヒメムラサキは、とても甘く、十分にジャムや飴の代わりになった。=Chromorange/Global Look Press

 ヒメムラサキ(Pulmonaria Obscura)は、その味から、子どもたちの間で人気が高かった。森やおばあちゃんの庭で見つけることができていた。とても甘く、十分にジャムや飴の代わりになった。

食べかた:ヒメムラサキの青い花を取って、丸ごと食べるか、雌しべを引き抜いて、甘い汁を吸う。

2.     オオムレスズメ

オオムレスズメは、「バナンチク(バナナちゃん)」とも呼ばれていた。=A. Jagel/Global Look Pressオオムレスズメは、「バナンチク(バナナちゃん)」とも呼ばれていた。=A. Jagel/Global Look Press

 オオムレスズメ(Caragana Arborescens)は、育てるのが簡単な植物のため、どこの中庭にもあった。児童はこれをごちそうと考えていた。おいしいのは束の間。花がまだ咲いておらず、小さなバナナのようになっている時。ここから、「バナンチク(バナナちゃん)」とも呼ばれていた。種の入ったさやが熟したら、それを開いて「蜜」を食べていた。ジャムのような粘性がある。

食べかた:5月中旬から末にかけて、オオムレスズメを探し、つぼみを取って、食べる。7月に近づいたら、熟したさやを取って、開けて、蜜を押し出す。

3.     スイバ(茎)

スイバの葉は、スープの主な材料にもなった。=A. Jagel/Global Look Pressスイバの葉は、スープの主な材料にもなった。=A. Jagel/Global Look Press

 スイバ(Rumex)から、ソ連の母親やおばあちゃんはスープをつくっていた。簡単、素早くできるスープで、材料はあまりいらない。スープの主な材料はスイバの葉。スイバの茎は硬くてうまく煮えなかった。そのため、茎は調理中に子どもが喜んで食べていた。スイバはすっぱくて、茎は数分噛むことができる。

食べかた:スイバのスープを誰かがつくり始めたら、茎を集めて、ガムのように噛む。

4.     ゼニアオイ

ゼニアオイ(Malva)は、クリミア半島やクラスノダル地方では特に愛されていた。=Global Look Press/ヴィクトル・ポゴンツェフ撮影ゼニアオイ(Malva)は、クリミア半島やクラスノダル地方では特に愛されていた。=Global Look Press/ヴィクトル・ポゴンツェフ撮影

 ゼニアオイ(Malva)は、主に南部の街で装飾用の植物として育てられていた。クリミア半島やクラスノダル地方では特に愛されていた。大人は1本にたくさん育つ鮮やかで大きな花を好み、子どもは飴の代わりにヒメムラサキのように喜んで食べていた。

食べかた:ゼニアオイの一番大きな花を選んで、雌しべを食べる。

5.     菩提樹

医者は風邪を引いたら菩提樹の花と葉の茶を飲むように勧める。=A. Held/Global Look Press医者は風邪を引いたら菩提樹の花と葉の茶を飲むように勧める。=A. Held/Global Look Press

 ロシアのどの都市でも、菩提樹(Tilia)の遊歩道の続く公園がある。菩提樹は手間のかからない、素早く育つ木で、花が咲く季節には良い香りがするためである。医者は風邪を引いたら菩提樹の花と葉の茶を飲むように勧める。これは免疫力を高め、咳を治す。子どもは菩提樹から取れるものすべてを普通に食べていた。というのも、どの部分でも蜜の味がするためである。

食べかた:菩提樹から若い芽、葉、または花を取り、しっかりと噛んで味を楽しみ、その後飲み込む。

6.     たんぽぽ(葉)

A. Laule/Global Look PressA. Laule/Global Look Press

 たんぽぽ(Taraxacum)の葉を、ソ連の主婦の一部はサラダに加えていた。現在では、その代わりにルッコラを使っている。

食べかた:たんぽぽの若い葉を取って、汚れを掌で拭って食べる。

7.     シャジクソウ(花)

シャジクソウの味は、甘みがあって水分が多い。=J. Fieber/Global Look Pressシャジクソウの味は、甘みがあって水分が多い。=J. Fieber/Global Look Press

 シャジクソウ(Trifolium)は、道端、森、また街中でも育っている。散歩してお腹が減ったものの、家にすぐに帰りたくない時は、シャジクソウを食べることができた。味はヒメムラサキやオオムレスズメほどではないが、甘みがあって水分が多い。

食べかた:ピンクまたは白の花序から花弁を取って、しっかりと噛んで飲み込む。

8.     ライラック(花)

Galina Barbieri/Global Look PressGalina Barbieri/Global Look Press

 ライラック(Syringa)も愛される植物である。ライラックの花は他の木よりも早い5月に咲く。子ども社会では、5枚の花弁のライラックの花に魔法の力があると考えられていたため、懸命に探してたくさん食べていた。

食べかた:5枚の花弁のライラックの花を見つけて、願いごとをして、食べる。あとは願いごとがかなうのを待つだけ。

9.     クマニラ

ロシアや中東では、塩漬けキュウリの代わりに、クマニラの茎をマリネにして食べる。= W. Pattyn/Global Look Pressロシアや中東では、塩漬けキュウリの代わりに、クマニラの茎をマリネにして食べる。= W. Pattyn/Global Look Press

 クマニラ(Allium Ursinum)は野生のニンニク。ロシアや中東では、塩漬けキュウリの代わりに、クマニラの茎をマリネにして食べる。植物の知識が豊富な子どもは、ニンニクの代わりに若いクマニラの芽を食べていた。クマニラは雨裂や緑豊かな丘の斜面にあり、危険を顧みずに取っていた。

食べかた:4月中旬に森で若いクマニラの葉を探し、いくつかまとめて食べる。こうするとニンニクの味を感じることができる。

10.  野生ゼニアオイ

子どもたちは野生ゼニアオイの花ではなく、十分に熟していない、丸くて汁気たっぷりのすっぱくて甘い果実を食べていた。=Imagebroker/Global Look Press子どもたちは野生ゼニアオイの花ではなく、十分に熟していない、丸くて汁気たっぷりのすっぱくて甘い果実を食べていた。=Imagebroker/Global Look Press

 野生ゼニアオイ(Lavatera thuringiaca)は、ロシア中部および南部に生息している。子どもたちは花ではなく、十分に熟していない、丸くて汁気たっぷりのすっぱくて甘い果実を食べていた。この果実は形から「アルブジク(スイカちゃん)」や「カラチク(円弧の白パンちゃん)」と呼ばれていた。

食べかた:野生ゼニアオイの丸い果実を取って、葉を除去して、食べる。

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