ロシアで運よく観光都市以外のところを旅する機会に恵まれた誰もが思うのは、この世界最大の国のところどころがなぜこれほど・・・グレーなのかということだ。
ソ連の典型的な住宅街を見たことがある人なら、これが何を意味するのか分かってもらえるだろう。
これらの写真はまるでフォトショップを使ってわざと暗くしたように思えるかもしれないが―そうではない。
色彩豊かな風景を見慣れている外国人観光客が戸惑ってしまうのは当然だ。どうして、ロシアはこんなにグレーなのかと。そしてネットで回答を見つけようとする。そしてもっとも説得力があると思われるものいくつかここで紹介しよう。
モスクワの集合住宅街
Anton Denisov/Sputnik「近代、ロシアでは歴史的に実用本位の建築を行ってきた。(つまり、効率だけを考えたグレーの住宅区画を数多く建設した)。そのため、たとえ道路がきれいで建物がちゃんと整備されていたとしても、とても安っぽく見える」。レディットのユーザーの1人はロシアがどうしてグレーなのかをこう説明しようとしている。
ある意味、これは当たっているかもしれない。ロシアがグレーに見える大部分のところは実用本位のソ連建築が理由であろう。
戦後、ソ連は都市部における人口増加と住宅難という問題に直面した。工業や他の産業における職を求めて、郊外から都市へ移動する人増えたからだ。
1950年代の初め、ソ連当局は、当時の指導者、ニキータ・フルシチョフの名をとってフルシチョフカと呼ばれる、とても安価で同じ形のコンクリートパネルを使ったプレハブ住宅を供給することによって、住宅問題を解決するという決定を下した。
ニキータ・フルシチョフ
ドイツ連邦公文書館 (CC BY-SA 3.0 DE)簡単に建設出来るフルシチョフカは、悪化の一途をたどる住宅難という問題を効果的に解決することが出来たが、一方、今になっても解決できないいくつかの新しい問題を発生させた。
カザン市にあるフルシチョフカ
Public Domain「人口の大部分が住む巨大な多層階の建物はただ住むだけのためのもので、他には何もなかった。住人たちは家から出ると、その場所から出来るだけ早く離れようとした。仕事のため市街地へ、あるいはもっとも手近のところへショッピングや遊びに。そして、移動先と交通渋滞の間を行ったり来たりする悪名高い振り子のようになるのである」。ロシア国立研究大学経済高等学院、都市学の准教授、ヴィタリ―・スタドニコフは2016年に出版された記事の中でこう指摘している。
フルシチョフカは、出来るだけ短期間に出来るだけ多くの人のための住居を提供すると言う目的は達成した。しかし、他の無数の問題を産み出した。そしてそれらによって、ロシアはグレーに見えてしまうのだ。
「住宅地の多層階ビルは街に多大な損害をもたらした。暗く、陰鬱な住環境だ」と専門家は続けている。
ロシアのある場所が他の場所よりももっとグレーに見えることは多くの人が気付いている。おそらく、その理由は、そこには工場があるからだ。それによってその周辺地区はさらにひどく見える。
ロシアにはある特定の産業の工場だけがある都市がある。たとえば、閉鎖都市として有名なノリリスクは、この理由のためロシアでもっとも気分が落ち込む場所として知られている。この都市は1930年代に人工的に建設された。ソ連政府がこの地方の豊富な鉱物資源を採掘して利用することにしたためである。そしてそれ以降、この街はロシア鉱業の中心地となった。
ノリリスクの住宅街
Elena Chernyshovaこの都市の印象が悪いのは、主に汚染のためなのであるが、空も往々にしてグレーであるし、極夜すら印象をよくすることはできない。
これらすべてにソ連の実用本位な醜悪建築の要素を加えると、なぜロシアのところどころがとてもグレーなのかがはっきりする。
とても美しい街であっても、ときにグレーになることがある。たとえば、モスクワやサンクトペテルブルク―ロシアで最も観光客の多い2都市である。冬になると、これらの都市も嫌になるほど暗くなる。というのも、ほとんどの時間、太陽は雲の向こう側に隠れているからだ。
2018年12月、モスクワで1か月の間に太陽が見えたのはわずか6分であった。
残りの時間、街は雲に覆われていたのである。12月のモスクワの平均日照時間はがっかりすることに18時間しかない。
サンクトペテルブルクに住む人々の2つの暗黙の了解事項が、いつでもグレーの服を着ること、そしてどこに行くのも傘を忘れないことである。
ロシアには、1か月の間中太陽が昇らない町もある。
今度なぜロシアにはグレーに見える場所があるのだろうと思ったなら、以上のことを思い出してほしい。
当然、グレーに見えることがほとんどない場所もロシアにはある。ロシアのもっとも明るい町の1つを見るなら、こちらからどうぞ。
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