ロシア人は母国に対する愛情を詠んだ詩や小説の多くに親しんでいる。ロシアでは、大人たちは投票を通じて自らの愛国心を共有するが、学校に通う子どもたちは(少なくとも)ソ連の時代から母国愛をテーマにしたエッセイを毎年書く。全ロシア世論調査センター(VCIOM)によると、2018年にはロシア人の92%が自分は愛国的であると考えており 、そして多くの人々が、自国の欠陥に気づいていない訳ではないが、ただありのままの祖国を愛していることを認めている。何人かのロシア人に母国のどこを愛しているのかを訊いてみた。
「母国を愛しているのは、その風景、美しい自然があるからです。シベリアの大地―ここには特別な何かがあるでしょう?」と、モスクワ出身のマリヤは言う。この意見に反対する人はいないだろう。世界中には美しい場所はたくさんある。しかし、アルタイ地方の果てしなく続く森林、バルト沿岸の寒いながらもロマンチックな砂丘、ヤクーツクの溶けることのない氷河や凍りつくことのない湖、カフカス地方の印象的な雄大な山々やウラル地方の氷穴など、他のどこで見ることが出来るだろうか?これらの魔法のような場所すべてがこのひとつの国の中にある。だから我々がこの国を愛するのだ。とても分かりやすい理由ではないだろうか。(ロシアでもっとも美しい究極の場所100選を見るならこちらからどうぞ)
「ここでは動物たちでさえもここに自然に根付いて生きています。キツネ、クマたちは、異国のライオンなどではないのです」とマリヤは言う。ロシアにはライオンがいないのは明白だが、ここは最北端のトラ(アムールトラ)の生息地であるし、氷点下になる気候も平気なアムールヒョウ、アルタイ山脈に生息する怖い容貌のジャコウジカ(実際はとても人懐っこい)や他にもたくさんの珍しい動物たちがいる。
「わたしがロシアを愛しているのはモスクワがあるから」。ニジニ・ノヴゴロドからモスクワに移り住んだユリヤは言う。彼女は生まれた町と首都の両方とも母国の中心だと考えるようになった。一方、モスクワ中心部で育ったミハイルは、自分の故郷はアルバート通り、そしてザモスコレチエ通りなどの古い通りであると言う。モスクワを愛する理由は数限りない!数々の様式と異なる時代の建築物、モザイクや大理石で飾られた世界一素晴らしい地下鉄、あらゆる国の料理が食べられる数え切れないほどのレストラン、そしてもちろん24時間エネルギッシュな住民たち。
モスクワは本当に眠ることがない。そしてモスクワ以外にも、多くの美しい町がロシアにはある。サンクトペテルブルク、カザン、エカチェリンブルク、ウラジオストク―どの町も一度行くと忘れることができない。
「母国を愛する理由は、その人々」。サンクトペテルブルク出身のワレンチーナは言う。「親しい人たちだけでなく、人生で出会った多くの人も含めて―ただただ素晴らしい。たくさんの素敵な心豊かな人々がいて、けして飽きることはないのです」。
ロシア人にとって、心が豊かということはとても大切である―多くの作家、芸術家、政治家さえも「奇妙なロシア人の魂」について語っている。はじめてロシア人と会ったとき、彼らは冷たく、とげとげしいとさえ映る。しかし、少し親しくなると、それが大きく変わることに気づくだろう。ロシア人は友情、忠誠心、家族を大切にし、客人はいつも歓迎する(ロシア式おもてなしについてはこちらをどうぞ)。「ここにいられてとても幸せ」、「誰かを楽しませようとする雰囲気が大好き」と、モスクワ出身のソフィヤは言う。
ロシアを旅する外国人は、地元の人々が言葉が分からなくても、なんとか助けてくれようとしてくれると指摘している。なんというもてなしだろう!
ロシア人が母国を愛する主な理由は、そこがほんとうに家と呼べる場所であるからだ。「わたしはここで生れ育ちました。家族と愛すべき場所や同じ考え方と価値観を持つ人々がここにはあるのです」とモスクワ出身のダリヤは言う。
「母国を愛するのは、頭では分からないからだ」。モスクワ州出身のタマーラはフョードル・チュッチェフの詩(「ロシアは頭では分からない・・・ただ信じるのみだ」)を引用して言う。しかし、多くの人がロシアを愛するのは、家にいるように感じるからである。そしてこの感覚は他と比べようがない。「自分の町、故郷の家に戻る。子供の頃と同じようにトネリコの木に花が咲き、樺の木の葉がさらさらして、菩提樹が薫る。よっぱらいさえ、いつもの場所にいるのです。そう、なにごとも昔のまま変わりはしないのです」。
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