なぜロシア人はパンと塩でもてなすのか?:ロナウドもロシア伝統の儀式で歓迎される

ウラジーミル・スミルノフ/TASS
 クリスティアーノ・ロナウドは、2018 FIFAワールドカップの開催地モスクワに到着すると、奇妙な歓迎を受けた。彼は「なに、これ?」とおかしく思ったかもしれないが、この伝統の背後には、実は長い歴史がある。

 ポルトガル代表のサッカーチームは、W杯出場のために、6月9日にロシアに到着し、奇妙な歓迎を受けた。パンと塩の贈り物だ。

 民族衣装をまとった女性たちが、ポルトガルの選手や監督に巨大な丸パンと塩を差し出すと、彼らは作法に則って正しく食べた。クリスティアーノ・ロナウドはこれを面白がった。なるほど、滑稽に見えるかもしれないが、この儀式は、大切なお客様を迎えるロシア古来の伝統だ。この儀式の背景を見てみよう。

 

パンはロシア人にとってすべてだった

ドイツのジグマール・ガブリエル前外相(右側)とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相

 ロシアでは、客はいつも暖かい歓迎を受ける。この国の人々は、客に不自由がなく満ち足りているようにと努め、何も惜しまない。これはロシア人気質だ。古のロシアでは、パンと塩が富と健康を象徴していたので、ホストは最高の服を着て大盤振る舞いをし、巨大な丸パン一つか二つを、この調味料とともに客に供した。

 スラヴ文化ではパンは聖なるものと考えられていた。家にパンがないということは、何も食べるものがないということ。パンは、ふつうの食事の範疇には入らない。「パンは命の糧」は、たぶん最も有名なロシアの諺だろう。


1プード(約16キログラム)の塩をいっしょに食べる

 今日の世界では塩は不足していない。しかし、古代と中世のロシアでは、それはかなり高価で、誰もが買えたわけではない。17世紀半ばに塩の値上がりがモスクワで暴動を引き起こしたくらいだ。塩税が完全に廃止されたのは19世紀末のことにすぎない。その後ようやく、塩は手頃な値段に下がった。

 というわけでロシア人は、客を迎えるような特別な機会のために、塩をとっておいたのである。

 誰かがホストを怒らせたいと思ったら、床に塩を撒き散らすだけでよい。こう考えられていた。それは軽蔑を示す行為だったからだ。今では塩はそれほどの価値があるわけではないが、それでも、塩を撒き散らして誰かを侮辱することは、依然として行われている。誓ってもいいが、そんなことをすると喧嘩になりかねない。

 一方でロシア人は、本当の友だちについて次のように言っている。「彼らはいっしょに1プード(約16キログラム)の塩を食べた」。これはつまり、1プードもの塩を使うほどの期間、多くの困難をともに乗り切ってきたということだ。


友情の始まり

ベネズエラの故ウゴ・チャベス大統領

 ロシアの伝統によれば、民族衣装を着た女性たちが、塩入れの載った大きな丸パンを、タオルの上に載せて、お客を迎える。客はていねいにパンの片をとって塩をつけて食べなければならない。この行為は、両者の間で友情が築かれたことを示している。不倶戴天の敵同士も、こうやってパンと塩を分かち合えば、和解することを意味する。

 この儀式の意味については、もう一つ説がある。塩は魂の清浄さを象徴している(それは無限の命をもつ)。だから、パンと塩を捧げることによって、ロシア人は客が富み、繁栄することを願っているだけでなく、その人物が果たして本当に人間なのか、さもなくば悪霊かを確かめるのである。

 もし客がこの贈り物を受けなかった場合、その客は家に入ることはできなかった。彼の「邪視」と悪しき考えを避けるためだ(邪視とは、悪意を込めて人を睨みつけることで、呪いをかけること)。古来、ロシアの客あしらいのよいホストは、「khlebosolnye」な主人と呼ばれてきた(この言葉は、ロシア語のkhleb〈パン〉とsol〈塩〉から派生した)。

 今日のロシアでも、この伝統はまだ広く行われている。公式のレセプションや外国人観光客の訪れたレストランなどで目にすることができる。

 しかし、いちばんよく見かけるのは、伝統的なロシアの結婚式だ。新郎新婦の両親は式の後で、子供たち(新郎新婦)をパンと塩で歓迎し祝福する。また新郎新婦は、それぞれパン切れをとり塩をつけて、互いに与えなければならない。これは、人生における困難を分かち合い、いつもお互いを支え合うことを約束する印だ。

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