ユニークな場所や現象には伝説が付き物だが、このコラ掘削坑(深さ12262メートル、直径23センチメートル)にも「地獄の井戸」と呼ばれる恐ろしい伝説がある。それによれば、地下12キロメートルに達した時、研究者らは温度が摂氏1000度以上にもなる空洞内を調べることにした。それで耐熱マイクを下ろしてみると、もがき苦しむ人々の悲鳴が録音されたというのである。ドリルが「地獄」のある空洞に到達したというわけだ。
コラ超深度掘削坑
セミョン・マイステルマン/TASS筋が通っていないことは明らかだ。摂氏1000度の熱に耐えられるマイクなどない。ドリルは実際に地下12262メートルで止まったが、そこの温度は約200度だった。とはいえ、ここで1995年に奇妙な出来事があった、とボーリング調査施設のダヴィド・グベルマン所長は認めている。
コラ超深度掘削坑
セミョン・マイステルマン/TASS
ドリル作業
セミョン・マイステルマン/TASSコラ超深度掘削坑は、ロシア連邦ムルマンスク州のコラ半島にある。この穴はソ連の超深度掘削プロジェクトの一環で掘られた。この他、ウラル超深度掘削坑(6キロメートル)やイェン・ヤヒン超深度掘削坑(8.25キロメートル)を含め、12本の超深度掘削坑が掘られた。プロジェクトの目的は、地球の超深部の層を調査することだった。石油やガスの埋蔵量を調べるために掘られた他の掘削坑とは違い、コラ掘削坑は地殻の内部組成を調べるという純粋な科学目的で作られたのである。
12000メートルを達成した後で
セミョン・マイステルマン/TASS掘削は何度かの中断を挟んで1978年から1992年まで続いた。掘削地点は注意深く選ばれた。コラ半島は、およそ3兆年前に地下から噴出した花崗岩や鉱物でできた巨大な岩盤であるバルト盾状地の上部に当たる。これは地球で最も古い岩盤の一つであることから、ここを調査することは非常に重要(かつある意味で革命的)であった。
1984年1月1日、ドリル作業中
セミョン・マイステルマン/TASS最初の4年間はすべてが順調に進み、ドリルは地下7キロメートルに達した。そこで別の、より強力な掘削機が投入された。掘削機の重量は200トンにもなった。硬い岩盤を避けるためにしばしばドリルの向きを変える必要があり、掘削坑は次第に曲がっていった。1983年までに深さは12キロメートルに達したが、1984年に惨事が起きた。メインのドリル軸が壊れ、深さ7000メートルのところから掘削作業をやり直さなければならなくなったのだ。
穴開け機のダッシュボード
セミョン・マイステルマン/TASS1990年までに深さは12262メートルに達したが、またドリルが壊れた。そしてこれが最後だった。こうして掘削は終わったが、コラ掘削孔は世界一深い穴であり続けた。掘削中止から5年を経た1995年、坑内で原因不明の爆発が起きた。ダヴィド・グベルマン氏でさえ、何が起きたのか分からなかったと話す。とにもかくにも、掘削坑はこの時点ではすでに謎に包まれた場所となっていた。
コアサンプルの区分
アレクセイ・ヴァルフォロメエフ/Sputnik一方で、コラ掘削孔の調査は地球の地殻組成についての従来の説を根底から覆した。地殻とマントルの境界であるモホ不連続面の研究にも大きく貢献した。しかし、コラの調査は従来の疑問に対する答えには直結せず、むしろ疑問が増えただけだった。最も顕著な成果は、地中の温度が地下4キロメートルで急激に上がり始め、地下12キロメートルで摂氏220度以上に達すると分かったことである。
現在、コラ掘削坑のある現場は荒廃している。施設は放棄され、地元住民によって解体されている。直径23センチメートルの掘削坑は、12個のボルトで留められた金属の蓋で塞がれている。コラ掘削坑の調査施設は2008年に公式に解体された。
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