発音を間違えやすいロシア語の言葉:よく使うのに言い難い単語TOP10

Aleksandr Seryi/Mosfilm, 1971
 ロシア語はそれ自体簡単ではないが、これらの言葉は、よく使われるにもかかわらず、ネイティブでない人にとっては、発音が最も難しい部類に入るかもしれない。

1. Здравствуйте(ズドラーストヴイチェ〈こんにちは〉)

 会話しようとすると、まず「こんにちは」を言わなければならないわけだが、ここで早速このモンスターに出くわす。最初に子音を3つ、それから母音を一つ挟んで、子音を4つ、続けざまに発音しなければならない。文字通り舌がもつれることは必定だ。

 ポイントは、最初の「В」を発音してはならないということ。そして、必ず最初の音節にストレス(強勢)を置くことだ。 

 zdrAst-vui-tyе

 

2. Бабушка(バーブシュカ〈おばあさん〉)

 ストレスを置く音節を間違えるのは、最も一般的なミスの一つだろう。それというのも、ストレスの位置については、はっきりした規則、法則がないからだ。おまけに、単語の格や、単数、複数に応じて、ストレスの位置が変わることがある。

 この単語を外国人は “ba-bUshka”と発音しがちだが、正しくは“bAbushka”だ。

 bA-bushka

 

3. Борщ(ボルシ〈スープのボルシチ〉)

 ラテン文字のアルファベットに対応するものがないキリル文字に出会うと、いよいよ厄介なことになる。「Щ」という文字もその一例で、さまざまに「文字変換」される。だから、 「borsch」、「borscht’」、「borsh」など、いろんなパターンが出てくるわけだ。

 ちなみに、ソ連の指導者の一人、Хрущев(フルシチョフ)は、Khrushchevと表記され、くだんの文字は 「shch」と表記されている。

 ところで、キャベツで作る、別の人気のスープ「щи」は 「shchi」(シチー)と表記。 

 bOrsh-ch

 

4. Быть(ブイチ〈~である、存在する〉)

 これは、ラテン文字で表記すると「byt’」だが、これを外国人はしばしば、「byt」(быт=生活)、「bit’」(бить=打つ、殴る)、「bit」(бит=情報量のビット、音楽のビート)などと混同する。どうですか?混乱してきませんか?

 この単語の発音で主に難しいのは、奇怪な文字「Ы」だ。これは通常は「Y」と表記され、外国人は誤って「ee」と発音する。

 しかし、下あごを少し前にずらして発音してみてほしい。そして、非常に重いダンベルを持ち上げているつもりになろう。それで出てくる音が、ロシア語の「Ы」によく似ている。

 さて、最後の文字「Ь」は、軟音符と呼ばれ、その前の子音を「軟らかく」発音せよ、という指示だ。この単語の場合は、「T」の音の最後を「軟らかく」しなければならない。だから、厄介な「Ы」をどうにか発音したら、今度はすぐさま「T」を軟らかくしよう。

 ラテン文字で表記するときはたいていの場合、軟音符は「’」で示される。だから「byt’」となるわけだ。

 bYt’

 

5. Пять(ピャーチ〈5〉)

 この単語には、誰もが混乱しかねない別の文字が含まれている。「Я」だ。これは実はロシア語アルファベットの最後の文字である。だから、英語話者なら「from A to Z」というところを、ロシア人なら「от А до Я」と言う。

 この文字は通常、「ya」と表記され、母音の後にある場合は、明確な「y」の音で発音する。これはロシア人女性の姓によくある。例えば、作家レフ・トルストイの妻ソフィア・トルスタヤは「Tolstaya」(Толстая)。

 しかし、「Я」が子音の前にあるときは、やはり「ya」と表記されるものの、この「y」はほとんど発音されない。

 だから、「5」は「p’yat’」のように発音される。つまり、軟らかい「p」の後に「ah」が続く。「pi-yat」のようにはならない。

 あと、最後に「T」を軟音にすることを忘れないでほしい。

 pyAt’

 

6. Жизнь(ジイズニ〈生活、生命〉)

 「Ж」はふつう「zh」と表記され、英語の「Jacqueline」の「J」のような音になる。「jacket」の「J」ではない。

 この語のポイントは、「И」の発音だ。ふつうは、英語の「meet」の「ee」のような音になるのだが、「Ж」の後に来る場合は、「Ы」のように発音される。

 だから、上の4で述べことを覚えておいてほしい。あと、「H」の後に軟音符があるから、この音を軟音にすることを忘れないように。

 zhYzn’

 

7. Царь(ツァーリ)

 ロシアの君主の「ツァーリ」だ。ラテン文字表記はふつう二通りある。一つは「czar」で、語源の「caesar」(カエサル)を示している。

 もう一つは「tsar」で、「Ц」を「ts」とする一般的表記にしたがっている。

 ロシア語のネイティブでない人は、「t」と「s」または「c」と「z」をはっきり分割して発音してしまうが、「Ц」は1文字で1つの音だ。「infancy」(幼年時代)の「c」のようにしっかり発音しよう。

 さらに追い打ちをかけるようだが、ロシア語の「R」も簡単ではない。トラが喉を鳴らすように「ルルル…」と発音し、さらに、それを軟らかくする必要がある。面倒くさくて、ごめんなさい!…

 tsAr’

 

8. Девочка(ジェーヴァチカ〈少女〉)

 ロシア語の「Е」は、母音の後にある場合は、英語の「ye」のように発音される(例えば、「yellow」のように)。ただし、「Е」の前に子音があるときは、「y」は発音しない。

 だから、「девочка」の場合は、「ə」と「ye」の音のバランスをとる必要がある。でも、これはそんなに難しくない。「D」を軟らかくして「D’ə 」のように発音すればいい。

 また、この語では、「Е」にストレスがあり、「O」にはない。だから後者は、「Oh」とはっきり発音せず、弱くあいまいに、「ah」のように発音する。

 さらにその後は、2つの子音、「Ч」と「К」が連続する。ポーズや他の音を挟まずに、「chk」と発音してほしい。 

 dyE-vahch-ka

 

9. Жёлтый(ジョールトィ〈黄色の〉)

 ラテン文字には存在しない文字が4つも含まれている。それを考えると、この単語の発音は本当のチャレンジだ。「Ж」については既に説明した(項目6を参照)。

 「Ж」の後、すぐに「Ё」という文字にぶつかる。「Ё」は通常、分音記号「¨」なしで、「Е」と書かれる。

 「Ё」の発音は「Yo」だ。「yogurt」(ヨーグルト)のそれのように発音する。

 しかし、「Ж」の後の「Ё」を「Yo」と発音することはできないから、単なる「O」になる。

 実際のところ、この法則は、5項目の「pyat」や8項目の「devochka」の場合と同じだ。つまり、母音の後は「Y」を発音するが、子音の後は発音しない。

 「Ы」については既に述べた。通常は「Y」と表記されるが…おっと、ここには「Й」もある。これも「Y」と表記されるのだ。

 ふつう、「ий」と「ый」で終わるロシアの姓は、英語では、この部分を「y」とのみ記し(「Достоевский」→「Dostoyevsky ドストエフスキー」のように)、「meet」の「ee」のような音で発音される。

 しかし、ロシア語の発音では、2つの音を区別しなければならないから、「Dostoyevskiy」となるわけだ。

 だから、この語でも、2つの音を区別して「yi」と書き、単語全体は「Zholtyi」と書くことをすすめたい(なお、ストレスは第1音節にある)。

 zhOl-tyi

 

10. Саша/Маша/Даша(女性の名前:サーシャ/マーシャ/ダーシャ)

 ロシア語の名前も、発音が難しい(最も発音を間違えやすいものについては、既に記事にしたことがある )。

 ただしここでは、「Ш」と「Щ」の文字、およびそれらのラテン文字表記の「SH」と「SHCH」について話したい。

 たいてい、ロシア語のネイティブ以外の人は、2つの音を同じか、よく似た音で発音する。だが、両者は異なる音だ。「SHCH」は有声子音で、「SH」は無声子音である。

 だから、サーシャやマーシャは、「borshchボルシチ」のようにではなく、「champagneシャンパン」のように、「SH」の音で発音すべきだ。

 sA-sha

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